電気代の高騰と脱炭素への取り組みを背景に、自家消費型太陽光発電の導入を検討する企業が増えています。
企業が自家消費型太陽光発電を導入することで、電気代の削減やCO2排出量の削減が期待できます。
しかし、導入に際してはデメリットや注意点もあり、これらを十分理解しないと想定外の損害が生じる可能性もあります。
この記事では、企業向けに自家消費型太陽光発電のメリット・デメリット・注意点について詳しく説明します。
目次
自家消費型太陽光発電とは? まずは仕組みを解説

企業の事業所や個人の住宅の「屋根」「駐車場」「空いた土地」などの敷地にソーラーパネルを設置し、そこで発電した電気(再生可能エネルギー)を自社や自宅で利用する仕組みを「自家消費型太陽光発電」といいます。
自家消費型太陽光発電は、ソーラーパネル、パワーコンディショナ、分電盤、ケーブルなどの機器で構成されています。ソーラーパネルで太陽光から発電した電気を、パワーコンディショナによって交流電力に変換し、分電盤を通じて事業所や家庭の電気設備に供給します。
企業や家庭が自ら作った電気を自身で利用するこの仕組みは「自家消費」と呼ばれ、それを太陽光発電によって行うことから「自家消費型太陽光発電」と呼ばれるようになりました。
企業が自社の工場や店舗など事業所に自家消費型太陽光発電を導入することで、電気代削減・CO2削減・災害対策・節税対策など、様々なメリットが期待できます。
自家消費型太陽光発電のメリット
企業が自家消費型太陽光発電を導入すると、経済的利益だけでなく、災害対策の強化や環境問題への取り組みを通じて社会的信用も高まります。
ここでは、自家消費型太陽光発電のメリットについて、それぞれ詳しく解説します
メリット1. 電気料金の削減(コスト削減)
2019年以降、コロナ禍やウクライナ侵攻、円安などの影響により、電気料金は急騰しています。
自家消費型太陽光発電の最大のメリットは、発電した電気を無料で使用できることです。
自家消費型太陽光発電で発電した電気は、電力会社から購入する電気の代わりに使用できるため、電気料金を削減することができます。

メリット2. 発電した電気を売却できる(収益拡大)

自家消費型太陽光発電の電気は、自社で利用するだけでなく、発電した電気を電力会社に売ることも可能です。
固定価格買取制度(FIT)の認定を受けることで、太陽光発電の電気を20年(家庭用は10年)の間、国の保証のもと電力会社が買い取ってくれます。
FIT認定を受けることで、電気を使う平日は、太陽光発電で電気代を節約し、電気の使用が少ない休日などは発電して余った電気を電力会社に売ることができます。これにより、効率的に利益を増加させることができます。
メリット3. CO2排出量の削減(企業価値の向上)

企業が自家消費型太陽光発電を導入し、事業活動を通じて再生可能エネルギーを利用することでCO2排出量の削減につながり、企業価値の向上が期待できます。
国際的な脱炭素への機運の高まりから、ステークホルダー(従業員、顧客、投資家など)が企業を評価する際、単なる売上や利益だけでなく、その企業がもたらす社会的影響についても十分に考慮する動きが広まってきています。
とくに、企業の持続可能性や社会的責任を強調するESG(環境、社会、ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)といったフレームワークは世界中で広く認知されており、多くの企業がこれらの取り組みを積極的に進めています。
企業が脱炭素に取り組む必要性は、このような現代のビジネス環境においてもますます重要となってきています。
環境省や一部の金融機関では、脱炭素に取り組む企業や投資に対して、積極的な金融支援が行われています。
(関連コラム:なぜ多くの中小企業がCO2削減に取り組み始めているのか?)
メリット4. 非常用電源として活用できる(BCP対策)

自家消費型太陽光発電を企業が導入することで、災害時や停電時における電力供給の安定化を図ることでBCP対策の強化に繋がります。
BCP対策(Business Continuity Planning)とは、災害や事故、パンデミックなどの緊急時においても、企業の主要な業務が継続もしくは速やかに再開できるように計画を立てることです。
例えば、地震や台風、洪水などの自然災害が発生した際に、電力網がダウンして停電が起きた場合でも、企業が自ら太陽光発電から電力を調達することで、業務の継続や早期復旧を図ることができます。
下表は、実際に日本で起きた自然災害による停電被害の例となります。
場所 | 停電から完全復旧までの時間 | 災害の種類 | 災害の発生時期 | 備考 |
---|---|---|---|---|
北海道 | 約50時間 | 地震(北海道胆振東部地震) | 2018年9月 | 震度7を記録 |
関東地方 | 約19日間 | 台風(台風15号) | 2019年9月 | 強風による停電 |
大阪府 | 約16日間 | 台風(台風21号) | 2018年9月 | 強風による停電 |
福岡県 | 約3日間 | 集中豪雨(九州北部豪雨) | 2017年7月 | 浸水による停電 |
さらに、企業のBCP対策が具体的で信頼性のあるものであると認識されることで、ステークホルダーからの信頼も高まります。とくに投資家や顧客は、持続可能でレジリエンス(緊急時への耐久力・回復力)のある企業を評価するため、企業価値を高める要因にもなります。
また、自家消費型太陽光発電によるBCP対策では、蓄電池との連携が推奨されています。太陽光発電と蓄電池の同時導入による具体的なメリットについては下記のコラムで紹介しています。
(関連コラム:自家消費型太陽光発電と蓄電池を併用するメリットとデメリットを易しく解説)
メリット5. 節税効果
企業が自家消費型太陽光発電を導入する際、以下の税制優遇を利用することが可能です。
中小企業経営強化税制 | 即時償却(設備取得価格の全額を初年度に損金計上)または、設備取得価格の最大10%の税額控除が可能。 |
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中小企業投資促進税制 | 設備取得価格の最大30%の特別償却、または最大7%の税額控除が可能。 |
固定資産税の軽減措置 | 最大3年間、建物を含む対象設備の固定資産税が免税または、最大2分の1減免される。 |
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制 | 最大3年間、対象設備の設備取得価格の5%〜10%の税額控除もしくは50%の特別償却が可能。 |
注意点として、中小企業経営強化税制などの税制支援は自治体によってその条件や税率が異なる場合があります。
所在地の自治体がどのような支援を行っているのか、中小企業庁「認定支援機関検索システム」で確認できます。

メリット6. 遮熱効果

屋根に太陽光パネルを設置することで、屋根に一定の遮熱効果が期待できます。
とくに、夏場の工場や倉庫では、空調がフル稼働していても屋内温度が40度を超えることは珍しくありません。このような環境下では、作業者の健康リスクが発生するほか、生産性を保つことが困難となります。
屋根に設置された太陽光パネルが、屋根に直接日光が当たるのを防ぐ役割を果たし、建物の屋内温度の上昇を抑制します。その結果、空調設備の負荷が軽減され寿命が延びるとともに、エネルギー効率の改善にも繋がります。
自家消費型太陽光発電のデメリット
自家消費型太陽光発電には、電気代削減以外にも企業価値の向上やBCP対策など様々なメリットがあります。
一方で、デメリットや注意点も存在します。
次に、自家消費型太陽光発電のデメリットを詳しく解説していきます。
デメリット1. 設置スペースが必要になる
自家消費型太陽光発電の導入には、敷地内に太陽光パネルを設置するためのスペースが必要です。
一般的な設置エリアとしては、「建物の屋根上」や「駐車場」が挙げられますが、敷地内の土地や隣接した土地でも設置は可能です。
太陽光発電の発電量は、ソーラーパネルの枚数に比例するため、大規模な消費電力を要する施設では、それに比例して広範囲な設置スペースが必要になります。
例えば、50kWの発電システムを建物の折半屋根に設置すると仮定した場合、安全性のために空けるスペースも考慮すると、500平方メートルの面積(およそテニスコート2面分)が必要となります。
太陽光パネルの設置に要する面積を詳細に計算する方法やその他の考慮点については、下記の記事で詳しく解説しています。
デメリット2. 発電量が天候に左右される
自家消費型太陽光発電の発電量は、天候の変動により大きく影響を受けます。
例えば、曇りの日は発電量が晴天時に比べて70%〜90%減少し、雨天時はほとんど発電できません。
あらかじめシミュレーションソフトを利用して、どれくらいの発電量が得られるかを事前に計算することは可能です。しかし、天候は完全にはコントロールできないため、実際の発電量が予測を下回る可能性があります。
デメリット3. 初期費用が必要になる
自家消費型太陽光発電の導入には、初期費用として数百万円から数千万円の投資が必要です。
導入費用は設備規模や販売価格、工事内容などによって異なるため、業者に直接問い合わせて見積もりを取ることをおすすめします。
太陽光発電は、発電した電気を無料で使用できるため、長期的な視点でみれば削減した電気代で初期費用を回収し、黒字化することが可能です。
回収期間を短くするためには、導入費用や削減効率、ランニングコスト、補助金の有無などを慎重に検討する必要があります。
また、PPAという初期費用0円で太陽光発電を導入できる仕組みもあります。PPAについては、下記のコラムで詳しく紹介しています。
補助金を活用すれば初期費用を抑えられる
日本政府は、自家消費型太陽光発電の導入を推進しており、環境省や経済産業省による補助金制度が設けられています。
環境省の需要家主導による太陽光発電導入促進補助金では、設備導入コストの最大3分の1が補助される場合があります。また、地域によっては自治体独自の補助金制度もあります。
補助金制度を活用することで、導入コストを大きく減らすことができます。
2024年度(令和6年度)の自家消費型太陽光発電に関する最新の補助金情報や公募状況については、以下に示した記事にて詳しく紹介しています。
デメリット4. 定期的にメンテナンスを行う必要がある
自家消費型太陽光発電のメンテナンスを怠ると、発電量の低下や故障、重大な事故につながる可能性があります。
そのため、専門業者に依頼して定期的な点検やメンテナンスを行うことが必要です。
また、メンテナンス費用は、システムの規模や保守内容によって異なります。
低圧・高圧設備(定格出力10kW〜200kW)の年間メンテナンス費用は、10万円〜15万円が目安です。
特別高圧規模(2GW以上)の年間メンテナンス費用は、100万円〜200万円が目安です。
正確な費用はメンテナンスyおきを検討する際には、業者に確認しておきましょう。
自家消費型太陽光発電のリスクと注意点

自家消費型太陽光発電の導入は、設計段階でのミスが甚大なリスクにつながる可能性があります。
具体的には、設計ミスによる停電の発生や、発電不良による費用対効果の低下などが考えられます。
これらのリスクを避けるためには、自家消費型太陽光発電のリスクを十分に把握し、対策を講じる必要があります。
逆潮流への対策が必要になる場合がある
自家消費型太陽光発電の設置は、高度な電気工事を伴い、技術的ノウハウが必要です。
とくに、売電を一切行わない「完全自家消費」の場合は、逆潮流への対策が不可欠です。
逆潮流とは、太陽光発電の電気が送電網に流れ込む現象です。
逆潮流が起きると、電力供給の事故や停電を引き起こす可能性があります。
逆潮流対策には、以下の設計が重要です。
- 電力需給バランスの確保
- 消費電力に見合わない過度な太陽光パネルの設置は、逆潮流の原因となります。太陽光発電の発電量と実際の消費電力量のバランスが取れた設計が必要です。
- 逆潮流防止機器の導入
- 逆潮流防止機器は、電力の需給バランスを自動的に調整する機械です。完全自家消費の太陽光発電には、必須の設備です。RPR(リバースパワーリレー)など、逆潮流を検知し制御する機器が含まれているか確認しましょう。
発電量だけではなく、自家消費率を確認する
自家消費型太陽光発電の導入を検討する際は、発電量よりも自家消費率を重視しましょう。
全量売電型では、発電量が収益に直結しますが、自家消費型では、発電量ではなく自家消費率が収益に直結します。
自家消費率は、太陽光発電が発電した電気のうち、実際に使用できる電力量の割合です。
例えば、土日休業日の事業所に自家消費型太陽光発電を導入した場合、年間休日となる120日間は発電した電気を自家消費することができません。
一部の業者は、投資効率を良く見せようと、発電量ベースで収支を計算することがあります。しかし、実際に削減できる電力は、総発電量のうち、自家消費できる分に限られます。
そのため、業者の収支計算が、発電量に基づくのか、自家消費率に基づくのかを確認することが重要です。
設置できないケースがある
自家消費型太陽光発電は、屋根の面積以外にも建物の特性によっては設置できない場合があります。
具体的には、以下の場所では設置が難しいと考えられます。
- 旧耐震基準の建物の屋根上
- 1981年6月より前に建設された建物は、新耐震基準が作られる前に建てられたため、太陽光パネルの重さに耐えきれず、建物全体の耐震強度に影響を及ぼす可能性があります。
- 高層ビルや高層マンション
- 太陽光発電の設置は、建築基準法上、建物の高さが考慮されるため、地域によっては、建造物の高さ制限に引っかかる場合があります。
- 影ができやすい場所
- 太陽光パネルに影がかかることで発電量が低下するため、日中でも影がかかりやすい場所への設置は避けたほうがよいでしょう。
自家消費型太陽光発電の導入事例
ここまで自家消費型太陽光発電のメリットデメリットや注意点について説明しました。
では、導入した企業が実際にどのくらいのメリットを感じているのでしょうか?ここでは当社(株式会社ハウスプロデュース)の施工事例を紹介します。
工場への導入事例

導入先 | 株式会社特殊金属エクセル 様 |
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都道府県 | 埼玉県 |
年間発電量 | 636,132 kwh |
- 製造コスト削減に加えて、早期の再エネ導入による脱炭素促進で業界リードを目指したい
- 当該施設の電気使用量を約10%削減し、年間で約1,000万円の電気代を節約
- 当該施設におけるCO2排出量を約10%削減し、年間で約300t-CO2の排出を減少
金属材料製工場(埼玉事業所・R&Dセンター)の屋根上・遊休地・駐車場の3エリアに全量自家消費型の太陽光発電を導入した事例です。
太陽光のクリーンエネルギー活用により、年間1,000万円の電気代削減に加えてCO2排出量300トンの削減が見込まれています。
店舗への導入事例

導入先 | 株式会社R.RConys 様 |
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都道府県 | 宮崎県 |
年間発電量 | 17,035 kwh |
- SDGsに繋がる活動を通じて、カフェで働く従業員やお客様にも安心して来店していただきたい
- 初期費用0円で店舗に太陽光発電システムを導入
- 災害時は近隣住民の一時避難所として活用
- 購入電力単価2.4円の削減(導入時点)
カフェ店舗の屋根に「オンサイトPPA」により、初期費用0円で自家消費型太陽光発電を導入した事例です。
今回の取り組みは、宮崎県南部信用組合・PPA事業者・EPC事業者(弊社)の3者協力体制のもと、地元企業の「再生可能エネルギーの導入促進」と「災害による停電時の非常電源の確保」を目的として導入しました。
物流倉庫への導入事例

導入先 | グリーン物流株式会社 様 |
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都道府県 | 大阪府 |
年間発電量 | 302,356 kwh |
- 太陽光発電を導入して積極的に脱炭素化を取り組んでいきたい
- 当該施設の電気使用量を約21%削減し、年間で約500万円の電気代を節約
- 年間約165tのCO2削減効果
グリーン物流様の導入事例では、本社物流センターの消費電力とCO2排出量の大幅な削減が見込まれています。
物流業界は、製造業と並び効果的なCO2排出削減が求められますので、屋根上の広いスペースを活用して自家消費型太陽光発電を運営することを前向きに検討していただきたい業種の1つです。
自家消費型太陽光発電の導入方法
自家消費型太陽光発電は、屋根、駐車場、遊休地など、事業所のスペースを活用して設置することができます。
ここでは、自家消費型太陽光発電の導入方法について紹介します。
屋根設置型

建物の屋根や屋上にソーラーパネルを設置し、そこで発電した電気を自家消費します。一般住宅だけでなく、屋根の面積が広い工場や倉庫、学校、介護施設などでも導入されています。
駐車場設置型(ソーラーカーポート)

敷地内の駐車場に「ソーラーカーポート」を設置し、そこで発電した電気を自家消費します。住宅用の駐車場や、駐車台数が多い工場や倉庫、商業施設、公共施設などでも導入されています。
ソーラーカーポートに関する詳しい解説は、下記のコラムで紹介しております。
遊休地設置型

敷地内の空き地や遠隔の土地にソーラーパネルを設置し、そこで発電した電気を自家消費します。また、遠隔の土地に大規模な太陽光発電所を建設して、敷地外から事業所に電気を供給する「自己託送」で導入するケースもあります。
自家消費型太陽光発電の導入までの流れ
お問い合わせから概算見積までの流れ
- 自社で設置が可能か確認するため、業者にお問い合わせください。
- シミュレーションに必要な資料として、過去12ヶ月分の電気料金明細書と電力のデマンドデータをご準備ください。(これらの資料は、電力会社から請求が可能です。)
- 業者が設置可否を判断し、概算見積とシミュレーションをご提示いたします。
現地調査から本見積までの流れ
- 概算見積とシミュレーションの結果から、設備導入の意思が固まりましたら、現地調査を実施いたします。
- 現地調査に必要な資料として、建物図面と単線結線図をご準備ください。(これらの資料は、設計会社または電気技術者から請求が可能です。)
- 現地調査で工事方法や設置位置、運搬方法などを確認いたします。
- 現地調査の結果をもとに、部材選定や設備の仕様などの設計を行います。
契約から引き渡し
- 業者から改めて提示された見積書とシミュレーションに問題がなく、導入の意思が固まりましたら、工事請負等の契約を締結します。
- 契約後、設備の導入工事を実施し、最終確認を行い設備や工事に問題がなければ、お引き渡しとなります。
企業向け自家消費型太陽光発電の導入は当社にご相談ください

自家消費型太陽光発電のメリットデメリットや注意点について解説してきました。
自社で設備導入を検討している企業の参考になれば幸いです。
株式会社ハウスプロデュースでは、企業の太陽光発電導入をトータルサポートいたします。
ご提案から施工、メンテナンス、アフターフォロー、補助金申請まで、すべて当社にお任せください。
累計6,500件以上の導入実績から培ったノウハウを活かして、お客様のご要望に合わせて導入計画を策定いたします。