電気代削減や環境対策の一環として、自社の事業所・駐車場・空きスペースなどを利用して、太陽光発電システムを導入する企業が増えています。
政府が環境に優しいエネルギーの普及に積極的に取り組んでいることもあり、太陽光発電システムを導入する法人向けに、さまざまな税制優遇制度が設けられています。
本記事では、法人向け太陽光発電を対象とした税制優遇制度や、その他の節税方法を解説していきますので、これから導入を検討している法人の方はぜひご覧ください。
目次

節税対策を考える際に知っておきたい太陽光発電の種類
法人向け太陽光発電には、自家消費型・余剰売電型・全量売電型の3種類があります。
これらの設置方法によって、対象となる節税対策の種類が異なるため、具体的な節税対策の紹介に入る前に解説します。
自家消費型
太陽光発電システムによって発電した電気を、すべて自社の生産設備や空調・照明などに使用して消費するタイプです。
以前は、FIT(固定価格買取制度)を利用して、売電収益を得る方法が一般的でした。
しかし、FITによる電気の買取価格の低下や、電気代の高騰が続いたことなどにより、自家消費によって電気代を削減する方法が主流になっています。
余剰売電型
太陽光発電システムによって発電した電気の一部を自家消費しつつ、余った電気を電力会社に売電して収益を得る方法です。
電気使用量がそれほど大きくない企業は、余剰売電型のほうが太陽光発電による経済的メリットが高くなるケースがあります。
全量売電型
FITを利用して、太陽光発電システムで発電した電気をすべて電力会社に売電する方法です。
2019年度までは10kW以上のすべての太陽光発電システムにおいて全量売電が可能でした。しかし、2020年度以降は、制度の改訂により50kW以上の太陽光発電システムにおいて全量売電が認められるように変更されています。
また、売電収入を得るための事業としてみなされるため、自家消費型と比べて節税効果は限定されます。
太陽光発電システムにかかる税金
法人の太陽光発電システムにかかる税金は、主に以下のものがあります。
法人税(売電型の場合)
法人が太陽光発電による売電で得た利益は、事業所得となるため、法人税の支払いが発生します。
固定資産税(太陽光用に土地を購入する場合)
法人が、事業所の所在地とは別の場所に土地を購入し、そこに太陽光発電システムを設置する場合は、土地にかかる固定資産税の支払いが発生します。
太陽光発電システムが設置されている土地の地目は雑種地となります。
償却資産税
法人が設置する太陽光発電システムは、固定資産税の償却資産とみなされます。法人の場合は、自家消費・余剰売電・全量売電のいずれも、償却資産税がかかります。
法人向け太陽光発電の導入で使える節税方法
太陽光発電システムを導入した法人が利用できる節税方法を紹介します。
節税対策1. 税制優遇制度を活用する
法人の太陽光発電は、導入する規模によって異なりますが、数百万円〜数千万円の初期投資が必要になり、投資回収は8年から12年程度になるケースが多いです。
しかし、太陽光発電を導入する際に今回ご紹介する税制優遇をうまく活用することで、初期投資の回収期間を早められるケースがあります。
中小企業経営強化税制
中小企業経営強化税制は、特定の設備を導入した際に「税額控除」または「即時償却」の税制支援が受けられる制度であり、太陽光発電システムも対象となっています。
中小企業強化税制の期限は延長が繰り返されており、現行制度の適用期日は2025年度(令和7年)3月31日までとなっています。
また、この適用期日は「申請の期限」ではなく「認定の期限」を指しているため、申請書類の作成や認定までの期間など時間を考慮したうえで準備する必要があります。
対象事業者 | 法人等および個人事業主 |
---|---|
主な税制の内容 |
・即時償却 ・税額控除 |
期限 | 2025年3月31日まで |
対象となる太陽光発電の種類 |
・自家消費型太陽光発電 ・自家消費率50%以上の余剰売電型太陽光発電 |
(参照元:中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き(PDF)|中小企業庁)
- 優遇措置1.「税額控除」
-
設備費用に対して課税される毎年の税金が控除される税制優遇です。また、企業の資本金・出資金によって以下のように控除率が異なります。
- 資本金3,000万円未満の企業
設備費用の10%を税額控除 - 資本金3,000万円超〜1億円未満の企業
設備費用の7%を税額控除
税額控除はどちらも適用年度の法人税額または所得税額の20%が上限になります。
- 資本金3,000万円未満の企業
- 優遇措置2.「即時償却」
-
即時償却とは、設備費用の全額を初年度に経費として計上できる税制優遇です。即時償却を行うことで、その年の法人税を大きく節税できます。
通常、設備を導入し、減価償却によって経費を計上する場合、設備費用を耐用年数に応じて「1年目」「2年目」「3年目」…と、費用を分割して計上します。
一方、即時償却では、設備費用の全額を1年目にまとめて一括で計上できます。
設備を取得した初年度に、設備費用の全額をまとめて経費として計上することで、その年の利益を圧縮して法人税の額を削減することが可能です。
そのため、即時償却は「投資回収を早めたい」「すぐに別の設備投資も行いたい」といった場合に選択されることが多いです。
税額控除と即時償却のメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
税額控除 | 最終的な納税額が減る | 利益が出ていない場合は節税効果が少ない |
即時償却 | 早期にキャッシュを回収できる | 最終的な納税額は減らない |
最終的な節税額は「税額控除」のほうが大きくなります。しかし、設備の取得金額や資金繰りの状況などを踏まえ、初年度の大幅な節税に繋がる「即時償却」を選ぶケースが多いようです。
中小企業投資促進税制
こちらは、機械装置など設備の取得や製作をしたとき、取得費用の30%に相当する特別償却、あるいは7%の税制控除を利用できる制度です。
また、中小企業投資促進税制は、自家消費率が問われません。そのため、余剰売電をおこなう場合は「自家消費率50%未満」の太陽光発電も対象設備に含まれます。
中小企業投資促進税制は、中小企業経営強化税制と同様、2023年3月31日で終了する予定でしたが、適用期限が2年間延長され2025年3月31日まで延長されます。

対象事業者 | 法人等および個人事業主 |
---|---|
主な税制の内容 |
資本金3,000万円以下の法人等および個人事業主 ・資本金3,000万円超1億円以下の法人 |
期限 | 2025年3月31日まで |
対象となる太陽光発電の種類 |
・自家消費型太陽光発電 ・余剰売電型太陽光発電(自家消費率の制限なし) |
(参照元:中小企業投資促進税制|中小企業庁)
固定資産税の特例
正式には「生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置」といいます。コロナ禍や物価高のなかでも賃上げや設備投資に積極的な法人を支援することを目的としています。
本制度は、まず「先端設備導入計画(中小企業が設備投資をして生産性向上を図るための計画)」を作成し、市区町村から認定される必要があります。
その後、計画に基づいて一定の設備を新規取得した場合、その設備にかかる固定資産税の課税標準が3年間、2分の1に軽減されます。
また、従業員に対する賃上げ方針の表明を計画内に記載した場合は、以下のように税率と期間が変わります。
- 計画にもとづいた新規設備を取得
設備の固定資産税が3年間、2分の1に軽減 - 計画内に従業員の賃上げを記載のうえ、2024年3月末までに設備を取得
設備の固定資産税が5年間、3分の1に軽減 - 計画内に従業員の賃上げを記載のうえ、2025年3月末までに設備を取得
設備の固定資産税が4年間、3分の1に軽減
(参照元:【中小企業等経営強化法】先端設備等導入計画について|中小企業庁)
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」は、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「2050年カーボンニュートラル」達成に向けて創設された税制優遇です。
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の具体的な税制措置の内容は、下記の通りです。
項目 | 生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備 | |
---|---|---|
対象設備 | 機械装置・器具備品・建物附属設備・構築物 | |
適用要件 | 3年以内に炭素生産性を10%以上向上 | 3年以内に炭素生産性を7%以上向上 |
措置内容 | 特別償却50%または、税額控除10% | 特別償却50%または、税額控除5% |
(参照元:エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画(カーボンニュートラルに向けた投資促進税制)の申請方法・審査のポイント|経済産業省)
上記のような税制を活用することで、太陽光発電を導入する際の費用対効果をより高められます。導入の際は、税制にも詳しい太陽光業者に相談してみることをおすすめします。
節税対策2. 設備取得額と維持管理費を経費として計上する
太陽光発電システムは償却資産とみなされるため、導入にかかった費用のほか、メンテナンスや修理などの維持管理費も、経費計上が可能な場合があります。
また、太陽光発電システムの償却期間は17年であるため、購入から17年は減価償却費として計上することで、中長期的な節税が可能です。
減価償却費の計算方法には「定額法」と「定率法」の2種類があります。それぞれの計算方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:自家消費用太陽光発電の耐用年数は用途で異なる|減価償却の計算法を解説
節税対策3. 消費税還付制度を活用する(全量売電のみ)
全量売電型の太陽光発電では、消費税還付制度を利用できます。
これにより、設備の導入費用にかかる消費税から、売電収入の消費税を差し引いた額を還付してもらえます。
たとえば、太陽光発電システムを2,000万円で導入した場合、消費税は200万円かかります。この年間の売電収入が200万円であれば、売電収入にかかる消費税は20万円です。
本来であれば、設備取得時に発生した200万円から売電収入にかかる消費税20万円を差し引いた180万円を消費税として納付する計算になります。
しかし、消費税還付を利用することで、この180万円をすべて還付してもらえます。
ただし、太陽光発電で消費税還付を受けられるのは、初期費用で多くの負担が生じる事業初年度だけです。次年度以降は、売電収入に含まれる消費税を納付する必要があります。
(参照元:課税仕入れと仕入税額控除(本則)|再生可能エネルギー普及促進協会)
2年で初期投資回収 税制優遇を利用した太陽光発電の導入事例
当社において税制優遇を活用した太陽光発電システム導入事例をご紹介します。

- 導入の目的
-
- 設備投資による節税対策と継続的なランニングコスト削減
- 導入の成果
-
- 経営力向上計画に係る固定資産税の特例措置の活用により、新設倉庫の固定資産税負担が3年間免除
- 年間約40万円の電気料金を削減
飲料品等配達販売などを行う「株式会社ナカヱ」様の事例では、固定資産税の特例制度に認定されたため、太陽光発電システムの固定資産税が3年間ゼロ(※)となりました。
これにより、 太陽光発電にかかった初期費用に関して、約2年という短期間での回収が見込まれています。
初期費用回収後も太陽光発電によるコスト削減やCO2削減効果は継続するため、費用対効果を高められたケースとなりました。
- 当時の制度内容による
太陽光発電は、節税以外のメリットもある
本記事では、法人が太陽光発電を導入することで適用可能な税制優遇を紹介してきました。ここからは、太陽光発電には、節税以外にも多くのメリットがあることについて解説します。
電気代削減
法人が事業所の屋根・駐車場・空きスペースなどに太陽光発電設備を導入し、発電した電気を自ら使用すれば、電力会社から買う電力量が減るため、電気代削減に繋がります。設置条件次第では、従来の電気代と比べて30%から50%程度の電気料金を削減できます。
また、2022年春以降は化石燃料価格の高騰などが影響し、電気代が急上昇しました。太陽光発電によって電力会社への依存度を下げていれば、このような社会情勢の影響を受けて電気代が上がるリスクを低減できます。
関連記事:太陽光発電で企業・法人の電気代削減
CO2排出削減
工場や冷凍倉庫など、業種によってはCO2排出量が多くなりがちです。昨今の脱炭素の風潮からすれば、近いうちにCO2排出量に対して課税されたり、規制の対象になったりということが予測されます。
太陽光発電は火力発電と異なり、発電の過程で排出するCO2の量がほぼありません。そのため、導入した企業の脱炭素経営に大きく貢献します。
近年は、大手企業だけでなく、大手企業と関わりのある中小企業にも脱炭素に関わる取り組みが求められており、その一環として、太陽光発電を行う企業が増えています。
非常用電源の確保
「自立運転機能」が付いたパワーコンディショナ(※)を採用すれば、停電が発生した時でも太陽光発電の電気を利用できます(※日中で晴れの場合)。
また、蓄電池を導入して電気を貯めておけば、夜間や悪天候の日にも一部の電気を使用できます。
ただし、製造機械のように多くの電力を使用する設備をまかなうほどの蓄電池は高額です。そのため、家庭用規模の蓄電池を設置し共用部のみの電気をバックアップする使い方が2021年時点では現実的です。
- 太陽光パネルで作った電気を、電気・照明・空調など、建物内で使える電気に変換する機器
今回のまとめ
自社で太陽光発電を導入する際は、税制優遇の活用も視野にいれておくことで、太陽光発電の回収期間を大幅に短縮できます。
株式会社ハウスプロデュースでは、法人向けに太陽光発電に関するご相談を承っております。導入を検討中のお客さまには、電気使用量などお伝えいただければ無料で導入効果をシミュレーションいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
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