太陽光発電の自己託送とは?|仕組み・メリット・デメリットを解説
企業が再生可能エネルギーを調達する方法として以下の2つがあります。
- 電力会社から再エネ電力を購入する
- 太陽光発電や風力発電などを自社保有して、発電した電気を自家消費する
①の方法は、電力会社または、電力プランを切り替えるだけです。そのため簡易に再生可能エネルギーを調達できますが、電気料金が割高になるなどデメリットがあります。
一方、②の方法は、太陽光発電や風力発電など設備投資を必要としますが、自社で作った再エネ電力をそのまま活用できるため、電気料金の削減といったメリットがあります。
近年、社会的に脱炭素の機運が高まっており、多くの企業ができるだけ安価に再生可能エネルギーを調達するために、電力コスト削減が図れる自家消費に注目しています。
目次
太陽光発電の導入条件|自己託送との関係
まずは、自己託送の説明に入る前に太陽光発電の導入条件について解説します。
太陽光発電による自家消費では、事業所の屋根や遊休地など敷地内のスペースを活用してソーラーパネルを設置し、系統(一般電気事業者が保有する送配電ネットワーク)を介さず事業所に電力を供給する方法が一般的です。
そのため、自家消費型太陽光発電を導入する場合、以下の2つの導入条件をクリアしなければなりません。
- 敷地内にソーラーパネルを設置するスペースがある(500㎡以上の敷地面積が理想)
- 1981年6月より以降に建築された建物である(建築基準法の新耐震基準を満たしている)
製品によりますが、ソーラーパネル1枚あたりの大きさは1.35㎡程あり、重さ15〜20kgあります。そのため、建物の屋根に導入する際は、一定以上の耐久度と広さが必要になります。
また、太陽光発電の運転期間は20年から30年程度となります。そのため、事業所の移転や移設する機会が多い事業形態をもつ企業にとっては、導入ハードルが高い設備といえます。
このような導入障壁を気にせず、太陽光発電による再エネ調達を実現できる方法として注目されているのが「自己託送」です。
太陽光発電の導入障壁を破る「自己託送」の仕組みとは?

自己託送とは、遠隔地に発電設備を設置し、発電した電気を既存の系統(一般電気事業者が保有する送配電ネットワーク)を通じて自社またはグループ会社の施設に送電する仕組みをいいます。
2013年に施行された自己託送制度により、発電設備で発電した電気を、系統を利用して離れた場所へ電力を供給ができるようになりました。
自己託送制度を利用することで、ソーラーパネルを屋根など敷地内に設置できない場合でも、離れた土地に設置した太陽光発電設備から再エネ電力を調達することができます。
また、系統に繋がっていれば、発電設備からの電力を複数の遠隔地で使用できるため、グループ企業全体間の再生可能エネルギーを使用することができます。
自己託送のメリット
企業グループ全体の電力コストを削減できる
太陽光発電の電気を事業で使用することで、電力会社から購入する電力量を減らせるため、電気代の削減に繋がります。
さらに、自己託送ではグループ企業全体で発電設備の電気を共有できるため、グループ企業全体での電気代削減効果が期待できます。
発電した電力を無駄なく使用できる
自社施設にソーラーパネルを載せる場合、定休日など電気を使用しない日には、発電した電気のほとんどを余らせてしまいます。
しかし自己託送では、自社施設での電力需要の低下に合わせて電気を別の施設に送れるため、余剰電力も無駄なく活用できます。
企業グループ全体の二酸化炭素排出削減に取り組める
自己託送によって、企業全体または、グループ企業全体・サプライチェーン全体で二酸化炭素排出量の削減が期待できます。
企業の二酸化炭素排出量を制限する温対法の対策や、導入検討されている炭素税の対策などにも繋がります。
また、近年、「パリ協定」「SDGs」「RE100」など、社会的に環境対策への機運が高まっています。投資家の中にも企業のESG(環境・社会・ガバナンス)を判断指標とて捉えて、優先的に投資するESG投資とよばれる投資手法も登場しました。
再生可能エネルギーの活用は投資家にとってもイメージが良く、消費者に対しては、自社の商品・サービスにクリーンなブランディングイメージを持たせる効果も期待できます。
自己託送のデメリットと注意点
託送料金が発生する
発電設備から施設に電力を送電するために送配電事業者の系統を使用するため、託送料金が発生します。
託送料金の相場は電力会社によって異なります。
発電量と電力需要量の計画値の書類作成と報告が必要
自己託送制度を利用するためには、発電した電気を送電する際に電力網を使用するため、一般送配電事業者との間で託送供給契約等の締結が必要です。
また、自己託送では「計画値同時同量」の制度を守る必要があります。
発電設備の発電量と電力需要量を30分単位で予測し、供給計画と需要調達計画を送配電事業者へ報告しなければなりません。
インバランス料金(ペナルティ)が課せられる場合がある
上述どおり、自己託送制度では送配電事業者に対して計画値を報告する義務があります。
「報告した計画値」と「実際に送電した電力量」に誤差(インバランス)が生じてしまった場合、送配電事業者がインバランス調整の対応に要した費用として「負荷変動対応電力料金」を電力会社に支払う必要があります。
また、インバランスの値が±3以上(自己託送制度では±10%)になってしまった場合、「変動範囲超過電力」として、追加のイランバランス料金も支払わなくてはなりません。
参照元|経済産業省「2021年度以降のインバランス料金制度について」
BCP(停電)対策としては期待できない
系統を通じて電力が供給されるため、停電時は自己託送による電力供給もストップします。
太陽光発電=停電対策というイメージも先行しているため、仕組みを理解したうえでの導入が必要です。
しかし、近年では、自己託送と蓄電池を活用するBCP対策の実証実験も行われています。
自己託送の利用要件
自己託送を行うためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 電力の自社利用を目的とした発電であること(売電目的では不可)
- 発電事業者と電力の供給先が同一法人の施設であること
- 電力の供給先の名義はグループ会社の施設であるなど密接な関係であること
自己託送では、自家消費を目的とした発電所建設が求められるため売電ができません。また、電力の供給先は自社もしくはグループ会社など「密接な関係」のある施設に限られます。
オフサイトコーポレートPPAとは?
自己託送以外に、遠隔の土地の太陽光発電所から電気を送る方法として「オフサイトコーポレートPPA」があります。オフサイトコーポレートPPAとは、電力の需要家に代わって、自己託送に必要な発電設備や土地をPPA事業者が購入し、そこで発電した再エネ電力を需要家に提供する導入モデルです。
近年の自己託送や自家消費型太陽光発電への需要の増加に伴い、初期投資を掛けずに再エネ電力を調達する方法として「PPAモデル」が注目されています。
オフサイトコーポレートPPAでは、PPA事業者が発電事業者を担うため、設備のメンテナンスや発電事業者への計画値の報告など、煩雑な作業をPPA事業者に任せられるなどのメリットがあります。
ただし、太陽光発電設備はPPA事業者の所有であるため、設備の増設が自由にできないことや、調達した電力量に応じて太陽光発電の利用料をPPA事業者に支払う必要もあります。
ハウスプロデュースにお気軽にご相談ください
太陽光発電で経営課題を克服するために
自己託送を活用することで、企業グループ全体で再生可能エネルギーの使用が可能になります。
太陽光発電による電気代削減、サプライチェーン全体での温室効果ガス(CO2)削減を実現できます。さらに、サプライチェーン全体の温室効果ガス削減に務める必要がある「RE100」加盟企業においては、自己託送は今後の再エネ電力調達の主流となっていくと期待されています。
一方で、自己託送はまだ発展途上の技術なのも確かです。今回ご紹介したデメリットの他にも、今後予測できなかったデメリットが発生することも否めません。
自己託送による自家消費太陽光発電の導入には、導入企業側の理解と組織体制が必要になります。太陽光設置お任せ隊(運営:株式会社ハウスプロデュース)は、導入企業様の経営課題の解決に向けて、太陽光発電設備の導入を全面的にサポート、支援いたします。
また、自己託送を始めるためには、発電設備と土地が必要です。電力コスト削減や脱炭素化に取り組みたい企業さまや、再エネ電源を必要とされる小売電力事業者さまを対象に「非FIT」の太陽光発電所の開発、及び販売を行っておりますので、そちらにご興味がある方もぜひお問い合わせください。
ハウスプロデュースにお気軽にご相談ください
カテゴリー: