毎月の電気料金の請求書に「燃料費調整額」という項目があることをご存知ですか?
今回は、電気料金の中に含まれる>燃料費調整額の概要や、高い電気代に企業として対策する方法について解説していきます。
企業の方は、知っておいて損はない知識となりますので、ぜひご覧ください。
目次
燃料費調整制度とは?
燃料費調整制度とは、火力発電に使われる燃料(原油・石炭・液化天然ガス)の価格の変動を、毎月の電気料金に反映させるための仕組みです。
日本は火力発電に必要な燃料を、海外からの輸入にほとんど頼っている国です。そのため、世界の情勢や為替レートの変動などによって燃料の価格が変動すると、その影響を大きく受けやすい傾向があります。
そのため、
- 燃料の価格変動によって電力会社の経営を影響を受けず、安定存続すること
- 電力会社の経営安定化によって、国民の生活基盤を安定させること
おもに上記2つの目的で燃料費調整制度が設けられています。
燃料費調整額とは?|電気料金の内訳の1つ
燃料費調整額は毎月の電気代に含まれる費用のひとつで、使用した電気量に比例して支払います。
燃料費調整単価は、下記の「基準燃料価格」と「平均燃料価格」の差分をもとにして算出されます。
- 基準燃料価格:各電力会社が定めている基準価格
- 平均燃料価格:3カ月間の貿易統計価格をもとに算出
燃料費調整額の高騰は電気代上昇に直結
ここまで専門用語が並んで難しく感じたかもしれませんが、簡単にいえば「燃料の価格が上がると電気料金も上がり、燃料の価格が下がると電気料金も下がる」ということです。
2022年は燃料費調整額が高騰しており、それが電気代上昇の一因となっています。一般家庭でも、エアコンなどの使い方によっては月の電気料金が2021年より数千円上昇しているような状況ですので、電気をたくさん使用する企業は数十万・数百万円の上昇になることも珍しくはありません。
多くの企業・法人の方が、このことをきっかけに電気代上昇に対する対策を検討しています。
2022年は燃料費調整額の単価が高騰|家庭・企業ともに大きな影響
実際、燃料費調整額に影響を与える単価は何円くらいなのでしょうか?
例として、関西電力の高圧受電契約における燃料費調整単価の推移を紹介します。
年月 | 燃料費調整単価(円/kWh) | 年月 | 燃料費調整単価(円/kWh) |
---|---|---|---|
2022年12月 | 9.72 | 2022年2月 | 1.94 |
2022年11月 | 8.34 | 2022年1月 | 1.15 |
2022年10月 | 7.16 | 2021年12月 | 0.76 |
2022年9月 | 5.88 | 2021年11月 | 0.43 |
2022年8月 | 4.69 | 2021年10月 | 0.09 |
2022年7月 | 3.95 | 2021年9月 | -0.24 |
2022年6月 | 3.27 | 2021年8月 | -0.55 |
2022年5月 | 3.13 | 2021年7月 | -0.54 |
2022年4月 | 2.89 | 2021年6月 | -0.62 |
2022年3月 | 2.61 | 2021年5月 | -0.77 |
2021年4月 | -1.11 |
(参照元:各月の燃料費調整単価のお知らせ|関西電力)
燃料費調整単価は、燃料の価格変動を電気料金に反映するものですので、燃料が安く手に入る時期はマイナスになることもあります。
2021年9月までは、比較的安価で燃料が手に入っていたためマイナス調整が入っていましたが、液化天然ガスの価格上昇にともない、2021年10月からは上昇傾向が続いています。
2022年12月にはプラス10円近い調整がかかっており、2021年4月と比べると燃料費調整額だけで約11円も値上がりしていることになります。この状況では、家庭・企業ともに高額な電気代になってしまうのも当然といえます。
燃料費調整額が電気料金に与える影響
単価だけではイメージが湧きにくいので、上記の表を参照し、実際にどれくらい電気料金が変わるのかみていきましょう。
仮に、ひと月に10万kWhの電気を使用する工場があるとしましょう。その工場での2021年4月と2022年12月の燃料費調整額は以下のようになります。
100,000kWh ×(-1.11円/kWh)= -111,000円
100,000kWh × 9.72円 = 972,000円
仮に同じ100,000kWhの電気使用量でも、燃料費調整額分だけで110万円高くなる計算です。
工場のように電気使用量が多い企業の場合、単価の安定しない燃料費調整額が電気料金に与える影響が大きいことがわかります。
近年の燃料費調整額に関する出来事
近年、燃料費調整額に影響を与えた出来事を上げていきます。
液化天然ガスの高騰による電気代の上昇
2021年9月から、各電力会社の電気料金の値上がりが続きました。これは、石炭や液化天然ガスの輸入価格高騰により、燃料費調整額が値上げされたことがおもな要因です。
2020年12月から2021年1月にかけての市場価格高騰
2020年後半から2021年1月にかけて、電力の卸売取引市場であるJEPXでの電力価格の高騰が話題になりました。
要因はおもに2つあり、1つは2020年12月下旬からの強い寒波によって、暖房利用などによる電力需要が増加したことです。もう1つは、電力需要の増加によって液化天然ガスの需要も増加し、液化天然ガスの価格が高騰したことです。
ただし、この時は市場価格が高騰したものの、実際の電気料金には大きな影響は出ませんでした。
ロシア・ウクライナ情勢による電気料金への影響
2022年2月末ごろからのロシア・ウクライナの情勢は、電気料金にも影響を及ぼすとみられています。
ロシアが天然ガスや石炭の資源が豊富な国であることが大きな理由です。ロシアからの天然ガス・石炭の供給が不安定になると、世界的に燃料価格が高騰する可能性があります。この影響で、日本でも電気料金も上がるとみられています。
原燃料費が前年比54%増加
国内大手電力会社が火力発電に使う燃料費と、大手ガス会社の都市ガス原料費の合計が、2021年度は前年度比で約54%増加の約5兆7,900億円となりました。
2021年度は、産油国が生産増加を見送ったため、原油の受給がひっ迫して価格高騰が起きていました。さらに、豊富な資源を持つ国であるロシアがウクライナへの侵攻をした2022年2月以降は、原油や天然ガスの価格が上昇し、燃焼価格が上昇すれば、電気やガスの料金も上昇します。
(参照元:読売新聞オンライン|電力・ガス大手、21年度の原燃料費54%増…今年度さらに増加か)
2023年1月から「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が実施
2022年12月まで燃料費調整額はね値上がりし続けてきましたが、2023年1月から政府の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が実施されました。
これにより、2023年1月から9月まで、燃料費調整額が下記のように値引きされます。
- 【低圧契約(おもに家庭)】値引き単価:7円 / kWh(9月のみ3.5円 / kWh)
- 【高圧契約(おもに企業)】値引き単価:3.5円 / kWh(9月のみ1.8円 / kWh)
約2年、高騰し続けてきた燃料費調整額の単価ですが、ようやく一旦落ち着くことになるでしょう。ただし、特別高圧の受電契約はこの値引きの対象でない点に注意が必要です。
また、この緩和対策事業は「2023年1月から9月使用分まで」と期限が設けられていることや、2023年4月から大手電力会社の電気料金値上げが開始されることから、2023年10月からは再度電気代が上がる可能性が高いです。
この先も燃料価格の変化によるコスト増加が発生しないとは言い切れないため、できる範囲から省エネ対策を講じることが長期的な視点でコスト削減を考えてもおすすめです。
燃料費調整額と再エネ賦課金の違い
電気料金の内訳をよくf再エネ賦課金」という項目があります。これらの料金の違いは以下のとおりです。
- 燃料費調整額
燃料価格の変動を電気料金に反映するもの - 再エネ賦課金
FIT(固定価格買取制度)において、電力会社が再生可能エネルギー電力を買取るための費用
概要 | 特徴 | |
---|---|---|
燃料費調整額 | 燃料価格の変動を電気料金に反映するもの | ・価格は毎月変動する ・電力会社ごとに単価が異なる |
再エネ賦課金 | 再エネ賦課金:FIT(固定価格買取制度)において、電力会社が再生可能エネルギー電力を買取るための費用 | ・価格の変動は基本的に年に1回 ・どこの電力会社でも、一律に同じ単価で計算され |
また、再エネ賦課金は以下の計算式で算出されます。
再エネ賦課金の単価は、2012年は0.22円/kWhでしたが、2022年では3.45円/kWhまで上がることが決定しています。こちらも昨今の電気料金の上昇の要因の1つといえます。
燃料費調整単価はコントロールできないが、電気料金の対策は可能
燃料費調整額は、火力発電が続く限り必ず発生する費用です。
しかし、燃料の単価は私たちが直接コントロールできるものではありません。そのため、電気料金への影響を下げるためには、自社の使用電力を下げたり、電力プランを見直したりすることが現実的です。
省エネ化を進める
使用電力を減らすために考えられる方法の1つは、自社の省エネ化です。省エネ性の高い生産機器や空調設備に買い換えることなどが考えられます。
機器を購入するための費用がかかるものの、長期的にみれば大きな電気代の削減に繋がるケースがあります。
電力会社の見直し
電力自由化によって、多くの企業が新電力会社として参入しており、さまざまな料金プランやサービスが存在しています。
今の電力会社より自社に合ったプランが見つけられれば、電力会社を切り替えるだけで大幅に電気代削減効果が得られるケースもあります。
電気料金高騰に対する支援補助金を申請する
自治体によっては、燃料費価格や物価の高騰によって影響を受けた事業者を支援しており、その一環として事業に使用する電気料金の一部を補助する制度を設けているところがあります。
自治体によって対象条件が異なります。事業所の最寄りの役場に、電気料金補助の制度があるか・自社が対象となるか確認してみるといいでしょう。
太陽光発電で自家消費する
企業が自社の建物に太陽光発電システムを導入し、発電した電気を自ら使用する仕組みを「自家消費」といいます。これにより、電力会社から購入する電気量を減らすことが可能です。
燃料費調整額(プラス調整の場合)や再エネ賦課金は、電力会社から購入した電気量に応じて加算されます。そのため、太陽光発電システムの導入によって、電力会社から購入する電力量が減り、大幅な電気料金削減に繋がります。
また、電気代削減だけでなく、CO2排出削減・税制優遇・非常用電源としての活用・屋上の断熱性向上など、さまざまなメリットがあるのが太陽光発電の特徴です。
システムの費用はけっして安くありませんが、設置条件さえ良ければどの方法よりもインパクトのある電気代削減効果を長期的に得られます。
まとめ
燃料費調整額が高騰しており、再エネ賦課金の上昇も続いていることから、電気料金の値上がり傾向が続くとみられています。
電気をたくさん使う企業は、対策をしなければ「電気使用量が同じなのに電気料金が高くなっていく」ということになるでしょう。今から電気料金の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
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