再エネ賦課金とは?|2022年までの推移と固定価格買取制度との関係

太陽光発電などの再生可能エネルギー普及の後押しとして、2012年7月から導入された「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」をご存知でしょうか?

固定価格買取制度において、再生可能エネルギーの電力を電力会社が買い取る際に要した費用は、「再エネ賦課金」として国民の電気料金に上乗せする形でまかなわれており、その負担額は年々増え続けています。

電気料金の削減を図るためには、電気料金に深く関わる再エネ賦課金について理解することが大切です。今回は、再生可能エネルギーの基本から、再エネ賦課金の仕組みや計算方法、減免制度の条件などを解説します。

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再エネ賦課金とは?

再エネ賦課金は、再生可能エネルギーの普及促進を目的として「再生可能エネルギー特別措置法」により2012年7月から始まりました。

電力会社が再生可能エネルギーで作られた電気を買い取るための費用として、需要家(電気を使用する企業や家庭など)が電気料金の一部として負担している料金です。

再エネ賦課金の仕組み

再エネ賦課金の仕組み
引用元:制度の概要|固定価格買取制度|なっとく!再生可能エネルギー

電力会社は「再エネ賦課金」として集めた資金で、再生可能エネルギー発電事業者から電気を買い取ります。

また、再エネ賦課金の金額については、電力会社から毎月送られる「検針票(電気ご使用量のお知らせ)」に記載されています。

2022年最新の再エネ賦課金の単価は?

再生可能エネルギーで発電された電気は、電力会社を通じて日々使用している電気の一部として供給されています。そのため、電気料金に含まれる形で再エネ賦課金が請求されています。

電力会社に支払う月々の電気料金は以下の方法で算定されています。

電気料金明細(再エネ賦課金の計算式)

再エネ賦課金の計算方法は「再エネ賦課金=賦課金単価×電気使用量(kWh)」となっており、月の電気使用量が多いほど再エネ賦課金の負担が増していきます。

また、賦課金単価は調達価格等算定委員会の意見を踏まえて毎年、経済産業大臣が決定しており、2022年5月以降の再エネ賦課金の単価は「3.45円/kWh」となっています。

再エネ賦課金の単価の推移

再エネ賦課金推移
再エネ賦課金推移

冒頭でお伝えしたように、再エネ賦課金は再生可能エネルギーを普及させる目的で設けられた料金です。

そのため、再生可能エネルギー発電事業者の増加に比例して、再エネ賦課金の負担が大きくなっています。2012年から2015年にかけて、10kW以上の産業用太陽光発電が急増したことで、2016年以降の再エネ賦課金単価が大きく値上がりしました。

わずか10年で約16倍の単価上昇となっており、消費者の負担が増えることに対して疑問の声が上がっていることも事実です。

再エネ賦課金はおかしい?制度開始の経緯を解説

ここまでご覧になって「そもそもなんで再エネ賦課金を徴収されなきゃいけないの?」と感じた方もいるかもしれません。ここでは再エネ賦課金の始まりの経緯を解説します。

再エネ賦課金が始まった経緯には、日本のエネルギー事業があります。化石燃料(石炭・石油・天然ガス)が乏しい日本では、エネルギー自給率が諸外国と比べて11.8%と低い水準です。

さらに、日本のエネルギー供給の大部分は、化石燃料を必要する火力発電でまかなわれています。そのため、電気料金は化石燃料の市場価格に強く影響を受けています。

画像引用:2020—日本が抱えているエネルギー問題(前編)|資源エネルギー庁

再エネ賦課金によって再生可能エネルギーの普及が進み、日本のエネルギーの自給率が向上することで、企業や個人にとってもメリットがあります。化石燃料によるエネルギー供給の一部を再生可能エネルギーで賄うことで燃料価格の高騰に伴う電気代の上昇の抑制になるからです。

再エネ賦課金と固定価格買取制度の関係

再エネ賦課金は、固定価格買取制度(FIT)と密接に関わりのある制度です。

2013年時点での環境省の推測によると、固定価格買取制度が2030年度まで継続することを前提とした場合、再エネ賦課金のピークは2030年に訪れ、ピーク時の単価は2.95円程度になると推測されていました。

しかし、現実には2019年時点に2.95円にまで上昇したことから、再エネ賦課金単価の上昇率は環境省の推測を大きく上回る結果となりました。

電気事業に関する科学技術・経済・政策の研究開発を行う「一般財団法人電力中央研究所」が、2020年2月末から2030年までの再生可能エネルギー導入量とFITによる買い取り総額を推計したところ、2030年あたりには再エネ賦課金の単価が「3.5円から4.1円」にまで値上がりすることが予測されています。

2030年以降は値下がりが続く見通し

環境省が2013年にまとめた推計によると、再生可能エネルギー導入量の減少やFITの買取期間終了案件の増加により、2030年以降は再エネ賦課金の単価は値下がりが続くとみられています。ただし、予想より賦課金単価の上昇が早く進んでいることからも、推計どおりになるかどうかは不透明だといえるでしょう。

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固定価格買取制度の対象となる再生可能エネルギー

太陽光発電

画像引用:太陽光発電の概要 | 九州電力

太陽光発電は、シリコン半導体などに太陽光が当たると電気を発生させる現象(光電効果)を利用して、太陽光のエネルギーをソーラーパネル(半導体素子)により直接電力に変換する再生可能エネルギー発電設備です。

日本における太陽光発電の導入量は、固定価格買取制度の施行(2012年)以降、急激に伸びており、導入容量は2018年時点で約56GW(世界第3位)です。
太陽光発電の発電コストは諸外国と比べてまだ高い水準ではありますが、近年ではコスト低減が進んできており、日本でもっとも普及している再生可能エネルギーです。

画像引用:【3-1-4】日本の太陽光発電導入量の推移|エネ百科
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風力発電

画像引用:風力発電のしくみ|東京電力リニューアブルパワー

風力発電は、風力発電機と呼ばれる設備を使って、風のエネルギーを電力に変換する再生可能ネルギー設備です。

風力発電機上部の羽(ブレード)は、風があたることで回転し、そのエネルギーが動力伝達軸を通じてナセルと呼ばれる装置の中にある増速機に送られます。
そこでエネルギーを増大させ、そのエネルギーを発電機によって電気に変換しています。

風力発電は変換効率が高い反面、風が弱い時は発電できませんし、風が強すぎる時も安全上のため発電できませんので、発電の安定力という面では課題が残ります。

画像引用:日本の風力発電導入量の推移|エネ百科

日本における風力発電の導入量は、諸外国に比べると導入が遅れているものの、2000年以降毎年増加が続いています。

水力発電

画像引用:水力発電の特徴と仕組み|九州電力

水力発電は、高い所から低い所に水が流れる力を利用して発電を行います。
山の起伏や水資源に恵まれた日本の風土に合った再生可能エネルギーです。

ひと昔前では水力発電といえばダムを利用した大規模水力発電が主流でしたが、近年では河川の流水や農業用水を利用した中小水力発電の登場によって、日本では太陽光発電に次いで普及が進んでいます。(2019年時点)

地熱発電

画像引用:地熱発電|株式会社レノバ

地熱発電は、地下のマグマの熱をエネルギーとして利用して発電を行います。
地上で降った雨は、地下のマグマ層まで浸透することで蒸気になり、地下1,000mから3,000m付近に溜まっています。この蒸気を井戸などを掘って取り出し蒸気の力でタービンを回すことで発電します。
本格的な地熱発電の利用は1966年から開始され、現在では東北や九州を中心に開発が進んでいます。

画像引用:2019年(暦年)の自然エネルギー電力の割合(速報)|isep認定NPO法人環境エネルギー政策研究所

環太平洋火山帯に位置する日本は、世界有数の豊富な地熱資源に恵まれており地熱発電を活かすポテンシャルは十分にあります。
しかし、その一方で設置に適した場所が少ないことや、地熱発電設備の建設には膨大なコストが掛かることから普及が遅れており、2019年時点で国内の全発電量に占める割合は、わずか0.2%にとどまっています。

再エネ賦課金とは?|2022年までの推移と固定価格買取制度との関係

バイオマス発電

バイオマス発電とは、生物資源を有効活用することで電力を生み出す再生可能エネルギーです。間伐材、食品廃棄物、廃油、下水汚泥、家畜の糞尿などを燃焼または発酵させることで、タービンを回し、発電機を動かすことで発電を行います。

バイオマス発電は燃料と燃焼方法によって、直接燃焼方式・熱分解ガス化方式・生物化学的ガス化方式の3つの種類に分けれています。
バイオマス発電は資源を燃やして発電する性質からCO2のを排出を伴いますが、もともと地球上に存在していた動植物などの資源(CO2)を燃料としていることから、発電の際に「トータルしてCO2排出量を増やしてはいない」という考えのもと再生可能エネルギーとして扱われています。

しかし実際には、バイオマス発電所の多くは、石炭など化石燃料との混焼式の設備が多くバイオマス燃料のみでの発電量は、平成26年2月時点の設備認定容量(約242万kW)の一部しかありません。

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再エネ賦課金の支払いを抑える方法

賦課金減免制度を利用する

再エネ賦課金は、電気使用量に伴い負担額が増していきます。
そのため、特定事業者の国際競争力の維持・強化の観点から一定の条件を満たす事業所については「減免措置(賦課金減免制度)」が用意されています。

この賦課金減免制度は、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の改正によって2016年11月からルールが見直されています。

認定基準
製造業においては電気の使用に係る原単位※が平均の8倍を超える事業を行う者、非製造業においては電気の使用に係る原単位が平均の14倍(製造業、非製造業ともに5.6kWh/千円)を超える事業を行う者。
※電気の使用に係る原単位とは、エネルギー使用に相関のある指標に対するエネルギー使用量のこと。(電気使用量(kWh)÷指標(売上高))
申請事業所の申請事業における電気使用量が年間100万kWhを超えること。
申請事業における電気使用量が申請事業所の電気使用量の過半を占めていること。
原単位の改善のための取り組みを行う者。(優良基準)
減免率
事業の種類及び事業者の原単位の改善に向けた取組の状況 に応じて減免率を適用。
賦課金減免制度について(概要資料)|資源エネルギー庁

「原単位の改善のための取り組みを行う者」は次のいずれかを満たしていることが条件です。

  1. 11月1日前に終了した直近事業年度から起算して、過去4事業年度分の原単位の変化率の平均の値が99%以下である。
  2. 11月1日前に終了した直近事業年度又はその前事業年度において、各事業年度の原単位が、それぞれの事業年度の前事業年度の原単位以下であり、かつ、11月1日前に終了した直近事業年度から起算して、過去4事業年度分の原単位の変化率の平均の値が105%以下である。
  3. 11月1日前に終了した直近事業年度の前事業年度から起算して、過去4事業年度分の原単位の変化率の平均の値が99%以下である。
  4. 11月1日前に終了した直近事業年度の前事業年度又はその前事業年度において、各事業年度の原単位が、それぞれの事業年度の前事業年度の原単位以下であり、かつ、11月1日前に終了した直近事業年度の前事業年度から起算して、過去4事業年度分の原単位の変化率の平均の値が105%以下である。

減免制度の申請を行おうとする事業者は、定められた様式の書類、決算報告書などの事業売上高や、電気使用量を証明する書類を事業者本社の所在する地域の経済産業局に提出しましょう。

その際、公認会計士または税理士の確認書類が必要になります。減免認定の申請の受付期間は毎年11月の1カ月間と決まっており、期限を過ぎると申請を受け付けてもらえないため注意してください。

申請を行い経済産業局の審査に通過すると、減免認定通知が送付され、受け取った後は、電力会社に申し出ることで翌年の再エネ賦課金が減免されます。減免制度の申請手続きの詳細や必要書類の確認などは、資源エネルギー庁が掲載する「各経済産業局の窓口」をご確認ください。

賦課金減免制度の優良基準

賦課金減免制度の減免率は、事業の種類や事業者の原単位の改善の取り組み状況によって2割から8割まで幅があります。

優良基準※3 満たす 満たさない
製造業等 ※1※2 8割 4割
非製造業等 ※1※2 4割 2割

※1農業・林業、漁業、鉱業・採石業・砂利採取業については製造業の減免率と同等とする。
※2事業の種類は日本標準産業分類の細分類(4桁)を基に区分することとする。
※3電気の使用に係る原単位の改善に向けた取り組みの状況に係る基準。優良基準を直近2事業年度連続で満たさない場合は認定基準を満たさない。

減免認定手続|なっとく!再生可能エネルギー

たとえば、電力多消費製造業者の年間電気使用量が100万kWhだと仮定した場合、減免制度を受けていなければ2019年度の単価であれば295万円の再エネ賦課金が発生します。

減免制度を受けた場合、4割減少(177万円)の再エネ賦課金となります。

さらに優良基準を満たしている場合は8割(59万円)まで再エネ賦課金を下げることができます。ただし、2年連続で優良基準を満たせなかった場合は、減免認定の基準を満たしていないと判定されますのでご注意ください。

太陽光発電を導入する

再エネ賦課金は、電力会社からの電気の供給量に比例して負担が大きくなります。つまり、電力会社から購入する電気を減らすことが、電気料金(再エネ賦課金)の負担を下げることに繋がります。

工場など電気使用量が多い事業所では、事業所の敷地内(屋上や遊休地)などに太陽光パネルを設置して自社で作った電気を使用することで、電力会社から購入する電力量を削減できます。

また、太陽光発電によって得られた電気は電力会社を介さないため、電気使用量に伴う再エネ賦課金や消費税なども削減でき、今後の電気料金上昇リスク(再エネ賦課金の上昇・燃料価格の上昇・消費税の増税など)の影響も軽減できます。

電気代削減イメージ
太陽光発電による電気代削減イメージ

電気の品質は、発電方法に関わらず一定です。事業所の屋根が広く、電気の使用量が多い企業・法人であれば、今後の電気代上昇リスクを回避する意味でも、太陽光発電の設置を検討してみてはいかがでしょうか。

【企業向け】自家消費型太陽光発電とは?メリット・デメリット・注意点を解説|導入事例も紹介

まとめ

再エネ賦課金の支えがあり、国内の再生可能エネルギー導入は急速に普及が進んでいます。一方で、固定価格買取制度(FIT)の買取対象である再生可能エネルギー設備が急増したことで、経産省が推測しているよりも早い段階で再エネ賦課金が上昇しており、国民負担の増大が課題となっています。

電力会社に依存せず、自家消費型太陽光発電(再エネ)による電力調達を行うことで、電気料金の値上がりにも備えることができます。また、CO2を排出しないクリーンな電気を取り入れることで企業価値の向上にも繋がります。

太陽光設置お任せ隊(運営:株式会社ハウスプロデュース)では、企業向けに太陽光発電に関するご相談を承っております。

導入を検討されるお客さまには、電気使用量などヒアリングしたうえで無料で導入効果をシミュレーションいたします。太陽光発電にご興味がある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

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執筆者:太陽光設置お任せ隊

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EPC事業者として、全国6,500件以上の産業用太陽光発電の企画提案から設備導入まで一貫して手がける株式会社ハウスプロデュースの記事編集チームです。第一種電気工事士・第三種電気主任技術者・一般耐震技術認定者・エネルギーマネジメントアドバイザーなどの有資格者が在籍し、一次情報や専門家からの取材を基に、現場から得たノウハウを活かしたコンテンツ作りに取り組んでいます。

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