近年、SDGsや脱炭素への機運の高まりから、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)などのエネルギー効率の優れた建物や再生可能エネルギーを利用した建物への需要が高まっています。
建物のエネルギー効率を高めるための方法として、ビルの屋上・壁面・駐車場を有効活用して太陽光発電を設置し、発電した電気を自家消費する「自家消費型太陽光発電」が注目されています。
本記事ではビルに太陽光発電を設置するメリットや事例を紹介します。ビルオーナーや自社ビルを持つ経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ビルの屋上・壁面・駐車場を活用した太陽光発電の設置方法
自社ビルに太陽光発電を導入する方法として屋上・壁面・駐車場を活用した3つの導入パターンがあります。まずはそれぞれの導入パターンの特徴について解説します。
ビルの屋上を活用した太陽光発電
ビルや事務所の屋上は、平坦な陸屋根や折半屋根が多く、安定感があり太陽光パネルを設置しやすい環境です。
陸屋根の場合は、発電効率を上げるために角度をつけるよう、金属やセメント製の架台でソーラーパネルを固定します。
ビルの壁面を活用した太陽光発電
近年では、ソーラーパネルの性能向上により壁面への太陽光発電の導入事例も増えています。
2024年時点では一般に浸透した導入方法ではないため、通常の太陽光パネルより設置費用が高くなりますが、太陽光発電の導入が困難な高層ビルなどの場合は有効な導入手段となります。
外壁に設置する「ソリッドタイプ」や、透明性が高く窓ガラスとしても活用できる「シースルータイプ」があります。
ビル・事務所の駐車場を活用した太陽光発電
駐車場への太陽光発電の導入は「ソーラーカーポート」と呼ばれ、駐車場にカーポートを設置し、屋根上にソーラーパネルを導入する方法です。
ソーラーカーポートは、以下のような企業のケースで有効です。
- 屋上に太陽光発電を設置できるスペースが無い場合
- 既に太陽光発電を導入している企業が、発電量をさらに上げるために増設する場合
- 営業車両をEVに切り替えてソーラーカーポートと組み合わせ、EVステーションと組み合わせることで充電施設としても活用する場合
ビルの屋上は、面積が足りなかったり、不規則な形をしていたりして、太陽光発電システムの導入に不向きなケースもあるため、ソーラーカーポートによる電気の自給自足は注目したい方法です。
自社ビルに太陽光発電を導入するメリット
次項では、自社ビルに太陽光発電を導入するメリットについて解説します。
ランニングコストを削減できる
ビル内の照明・空調設備・給湯やエレベーターなどの電気機器で消費される電気を太陽光発電によってまかなうことで、毎月の電気料金を削減できます。
また、固定価格買取制度(FIT)を活用すれば、太陽光発電の余剰電力を売電して売電することも可能です。
ビルの電気使用量や営業時間によって、完全に自家消費した方が良いケースと、余った電気を売った方が良いケースが異なります。設置方法を適切に判断できる経験豊富な太陽光業者に相談しましょう。
ビルに省エネ性能の付加価値が付く
建築物を評価する指標として「BELS(建築物エネルギー性能表示制度)」があります。建築物の省エネ性能を5段階で評価する認定制度であり、建物の資産価値を示すひとつの指標として用いられています。
BELSでは、建築物の外皮性能と一次エネルギー消費量の2点の性能で評価されます。エネルギー効率化が図れる太陽光発電を導入することで、建物の省エネ性能が向上し建築物の資産評価を高めることができます。
テナント募集で有利になる
ビルオーナーにとって、自身が持つビルに優良企業がテナントとして入って来れば、信頼性の向上や収益の安定化に繋がります。
近年はSDGsや脱炭素への機運の高まりから、自社の拠点を置く建物を選定する際に、家賃(テナント料)や立地だけではなく、環境面も物件選定の条件に組み込む企業が増えています。
当社でも、ビルの賃貸者から太陽光発電を導入したいというご相談が急増しております。その場合はビルの所有者に許可を得る必要があるため、実現できるケースは多くはないものの、賃貸者からの再エネニーズが高まってきていることは確かです。
蓄電池と併設して非常用電源として活用できる
太陽光発電システムと蓄電池システムを併用することで、停電時でも電気を使用することが可能になります。太陽光発電で発電した電気を蓄電池に貯めておけば、夜間や雨天での電力バックアップが可能になります。
ZEBの実装には太陽光発電が必須
太陽光発電システムは、今後の普及が確実な「ZEB(ゼブ)」には欠かせない設備です。
ZEBとは、過ごしやすい空間を維持しつつ、建物で消費する一次エネルギーの収支ゼロを目指す建物です。自社ビルで環境経営を目指す多くの企業が、建物のZEB化に取り組んでいます。
(引用元|環境省ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル))
建物内でさまざまな活動をする以上、消費エネルギーそのものをゼロにはできません。
しかし、省エネ対策や高断熱化などで消費エネルギーを減らすと同時に、エネルギーを作り出す「創エネ」ができれば収支ゼロが現実的になります。
そして、ビルの「創エネ」には太陽光発電が欠かせません。太陽光発電は、再生可能エネルギーの中では比較的場所を選ばずに設置でき、技術的にも汎用化が進んでおり導入しやすいからです。
関連記事:ZEBネット・ゼロ・エネルギー・ビルとは?|メリットや補助金を解説
ビル屋上の太陽光設置への補助金制度もある
ビルの屋上へ太陽光発電を設置する場合、補助金制度に採択されれば初期費用を抑えて導入できます。
たとえば環境省の「建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業」では、新築や既存の建物のZEB化や省エネルギー設備・蓄電池などが補助対象となっています。既存の建物のZEB化を目指す場合は、採択されれば導入費用のうち3分の2が補助されます。
太陽光発電は、補助金なしでも十分な経済的メリットが得られますが、補助金に採択されれば初期投資の回収期間を大幅に早められるので、動向をチェックしておきましょう。
(参考:地域脱炭素移行・再エネ推進交付金|環境省)
自社ビルへの太陽光発電システム導入事例
実際に、ビルへ太陽光発電を導入し、再生可能エネルギーを活用している事例をみていきましょう。
超高層タワーへの壁面設置事例
(画像引用元|三菱倉庫株式会社)
横浜駅東口にある高さ160メートルの超高層タワー「横浜ダイヤビルディング」は、外壁面に日本最大級の建材一体型太陽光発電システムを搭載することで、再生可能エネルギーを活用しています。
蓄電池や省エネ設備と組み合わせRE100を具現化したビル
(画像引用元|大和ハウスグループ)
大和ハウスグループは、事業に使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目指す「RE100」に加盟しています。
同グループの事業所「大和ハウス佐賀ビル」は、太陽光発電と蓄電池を併用した電力自立システムを導入し、RE100の取り組みを具現化する形となっています。
ほかにも、太陽熱・井水を利用した空調システムや、エネルギーを適正に制御するシステムなどを組みわせています。この取り組みにより、以下のような成果を生んでいます。
- 同規模のオフィスビルに比べて年間で約600万円の電気代削減
- 太陽光発電と蓄電池により、停電時でも自立して電気が使える
- 該当オフィスのZEB化を実現
関連記事:RE100とは?加盟する企業のメリット
災害に強く環境にも配慮したZEB化を進めるビル
(画像引用元|環境省ゼブ・ポータル)
熊本県熊本市のしらさぎホールディングス株式会社の「白鷺電気工業株式会社 本社ビル」は、2016年の熊本地震をきっかけとして「災害に強いビル・ZEBの導入・働き方改革」の3つのコンセプトを掲げて施工(既設改修)が行われたビルです。
こちらのビルでは地中熱利用換気システム・外断熱・Low-E複層ガラス・直流配電システムなどの設備で一次エネルギー削減率54%を達成し、さらに太陽光発電の導入によって創エネを含んだ一次エネルギー削減率も75%を達成し、Nearly ZEBに認証されています。
ハウスプロデュースによる太陽光発電システム導入事例
株式会社ハウスプロデュースにて、自社ビルへの太陽光発電システム導入を行った事例をご紹介します。
倉庫と併設した自社オフィスビルと工場への導入
導入先 | カグラベーパーテック株式会社 様 |
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都道府県 | 兵庫県 |
年間発電量 | 159,899 kwh |
- コスト削減と同時にCO2排出量の削減に努め脱炭素化を着実に進めていきたい
- 当該施設の電気使用量を約71%削減し、年間で約185万円の電気代を節約
- 年間で約81t-co2のCO2排出量削減
- クリーンエネルギー事業におけるブランディングに寄与
オンサイトPPA(初期費用0円)を活用した自社ビルへの導入
ハウスプロデュースでは、中小規模の施設への「オンサイトPPA」による太陽光発電システム導入実績も多数手掛けています。
導入先 | 株式会社石竹 様 |
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都道府県 | 埼玉県 |
年間発電量 | 317,729 kwh |
- 初期費用0円で太陽光発電を導入したい
- 年間で約120万円の電気代を節約
- PPA(契約期間10年間)により、初期費用0円で太陽光発電システムを導入
- 契約満了後は太陽光発電設備をそのまま利用可能(無償譲渡)
本案件では、本社ビルの屋根(約170㎡)のスペースを活用した「オンサイトPPA」での太陽光発電システムを導入しました。
オンサイトPPAは、第三者保有ともいわれており、自社ビル・事業所の屋根などソーラーパネルを設置できるスペースを第三者に提供することで、設備導入にかかる初期費用を負担せず、ソーラーパネルで発電した電気を自社施設で活用できる仕組みです。
ハウスプロデュースでは、オンサイトPPAの導入方法以外にも、初期費用0円で太陽光発電システムを導入していただけるスキームをご用意しております。
自社ビルへの太陽光発電導入お気軽にご相談ください
株式会社ハウスプロデュースは、上記の事例以外にも多数のお客さまの自社ビルへ太陽光発電システムの導入を支援してきました。
建物への太陽光発電導入ではパネルをたくさん設置すればいいというわけではなく、電気の使用状況を踏まえた容量での設計が大切です。
ハウスプロデュースは、お客さまの電気料金明細やデマンドデータなどの書類や現地調査によって「いちばん費用対効果が良くなる設計・部材選定」を追求しています。
無料シミュレーションや、使用できる補助金・税制の調査サポートも行っております。ご興味がある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
まとめ
ビルへの太陽光発電システム導入は、近年の社会的要請となっている脱炭素に取り組むだけでなく、コスト削減や社会的な評価の向上としてもメリットがあります。政府としてもビルへの太陽光発電導入を推進していくため、補助金制度があるのも魅力です。
ビルのオーナーや自社ビルを持つ経営者の方は、これからの時代に即したビルの運営に向けて、太陽光発電の導入を検討してはいかがでしょうか。