地球温暖化問題は世界共通の課題です。
世界各国で脱炭素社会を目指す動きがある中で、再生可能エネルギーへの電力シフトが注目されています。
とく太陽光発電は、他の再生可能エネルギーと比べて導入ハードルが低いことから多くの企業によって採用されています。
しかし、そのCO2削減効果に関しては、一部に懐疑的な見方も存在します。
CO2排出削減の効果が不明確な場合、投資決定は複雑になる可能性があります。
この記事では、太陽光発電がどのようにして企業の脱炭素化に貢献するか、また太陽光発電のCO2排出削減効果について解説します。
さらに、太陽光発電の持つ多面的な利点についても紹介します。ぜひ最後までお読みください。
目次
環境問題を背景に企業による太陽光発電の導入が加速している
太陽光発電は、発電過程でほとんどCO2を排出しません。
一方で、日本の主要な電源である火力発電は、発電時に大量のCO2を排出し、地球温暖化や気候変動の主要な原因となっています。
これは深刻な環境問題として広く認識されています。
国際社会では、地球温暖化対策として化石燃料に依存する発電方式からの脱却とクリーンエネルギーへの移行が急務とされています。
このような状況に対し、問題意識を抱いた企業を中心に、太陽光で発電した電力を自ら使用する「自家消費型太陽光発電」の導入が加速しています。
企業が太陽光発電など再生可能エネルギーに切り替えることで、火力発電の稼働率が低減し、結果的にCO2排出量削減に繋がると考えられています。
関連記事:中小企業が脱炭素経営に取り組むべき理由|自社のCO2排出削減が経営課題の解決に
太陽光発電のCO2排出量は火力発電と比べて約3%程度
国立研究開発法人産業技術総合研究所の研究結果によれば、火力発電と太陽光発電で、1kWあたりの発電に対する温室効果ガス排出量を比較すると下記のようになります。
発電方法 | 温室効果ガス排出量(1kWhあたり) |
---|---|
化石燃料を使用した火力発電 | 519〜975g-CO2 |
太陽光発電 | 17〜31g-CO2 |
(参考:国立研究開発法人産業技術総合研究所の研究結果より抜粋)
上記のように、太陽光発電は火力発電と比較して、わずか3%程度の温室効果ガス排出に抑えらるという結果になりました。
具体的には、企業が使用する電気を火力発電から太陽光発電に切り替えた場合、1kWhあたり約500g-CO2から900g-CO2の排出が削減されます。
とくに電気使用量が多い製造業系の企業にとっては大幅なCO2削減が見込めます。
ソーラーパネルの製造時にCO2を排出している問題について
太陽光発電が環境に悪いという懐疑的な見解の中には「ソーラーパネルを製造する際にCO2を排出している」という意見もあります。
たしかに、ソーラーパネルを製造するにも電気を使用する必要があり、その過程でCO2は排出されています。
しかし、そのCO2排出量は一般的に25.0g-CO2/kWhから45.0g−CO2/kWhの範囲だとされており、製造時の排出量と発電時の排出量を合わせても、火力発電と比べて少ないCO2排出量で電気を作ることができます。
ただし、ソーラーパネルを廃棄する際のCO2排出や、大規模な発電所の開発に伴う森林伐採などの影響も考慮すれば、発電効率の向上や自然環境に配慮した電源開発などの取り組みが必要であるというのも実情です。
自社のCO2排出量削減・脱炭素経営のために太陽光発電を採用するメリット
「太陽光発電がCO2排出削減に貢献するのは理解できるが、それだけでは高額なコストをかけて投資はしずらい」という意見を持たれている企業も多いでしょう。
実は、企業が太陽光発電を導入には、環境面以外にも多数のメリットがあります。
環境に関わる税制への対策になる
企業が太陽光発電など再生可能エネルギーを利用してCO2排出削減に取り組むことで、環境に関する法令違反のリスク回避や税負担の軽減に繋がります。
- 省エネ法
- 工場・事業場・運輸分野において一定以上のエネルギーを消費する場合、定期的にエネルギー使用状況の報告や改善計画の提出を課す。
- 温帯法
- 対象となる事業所は、温室効果ガスの排出量に対する報告義務があります。排出量の報告をしなかったり虚偽の報告をした場合は罰則が科せられます。
関連記事:省エネ法とは?規制される分野と知っておきたい改正内容
また、今後は二酸化炭素を排出した量に応じて、企業が金銭的なコストを負担する「カーボンプライシング」が日本でも導入される可能性があります。カーボンプライシングには、以下のような例があります。
- 炭素税
- 企業などに対しCO2の排出量に応じて課税する制度。日本では実質的な炭素税といえる「地球温暖化対策税」が2012年から導入されており、規制の強化が見込まれている。
- 排出量取引制度
- 企業が排出できるCO2の排出量の上限を設定し、それを超える企業は、上限に達していない企業からお金を払って不足分を買い取る制度
- 炭素国境調整措置
- 輸入品に対して、その製品の製造過程で出たCO2の量に応じて課税する制度
SDGsや脱炭素への取り組みによる企業価値向上
最近、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)への関心が高まり、ビジネスを通じて環境や社会にプラスの影響を与える企業がますます求められています。
このような中で、太陽光発電の導入は、企業が事業活動を通じてCO2排出量を削減し、社会的責任を果たす手段として重要です。
社会的責任を果たしている企業という認知が広まることで、環境への配慮を重視する消費者や投資家からの評価が高まり、企業のブランドイメージの向上が期待できます。
取引先の拡大に繋がる可能性がある
太陽光発電によるCO2削減には、大手企業だけでなく、中小企業も注目しています。
なぜなら、企業がCO2をどれだけ出しているかを計るとき、その企業のサプライチェーン(つまり、材料や部品を供給している会社)も含まれるからです。
そのため、大手企業は自分たちの取引先を選ぶ際に取引先企業のCO2排出量も評価します。
これは中小企業にとって、CO2削減が必要な課題となりますが、同時に、適切に対応することで新しいビジネスチャンスになることもあります。
太陽光発電を導入することは、CO2削減の効果的な方法の一つで、これにより中小企業も大手企業の取引先として選ばれやすくなる可能性が期待できます。
太陽光発電はCO2削減以外のメリットも豊富
電気代の削減になる
企業・家庭問わず、電気料金は基本的に「電力会社から購入する電力量が多いほど高く」なります。企業が太陽光発電を導入すれば、発電した電気を自ら使用できます。つまり、電力会社から購入する電力量が減るため、電気代削減に繋がります。
2022年から2023年にかけて電気代の高騰傾向が続いた場合の電気代上昇リスクも回避できるため、コスト削減に繋がるシステムとしても注目されています。
関連記事:太陽光発電で企業の電気代はどれくらい削減できる?【事例あり】
優遇税制によって節税効果が得られる
太陽光発電システムを新規で取得した場合、税制の対象となればシステム費用全額を一括償却、または取得価額の10%(※1)の税額控除が適用できます。
(※1 資本金3,000万円超から1億円以下の場合は取得価額の7%)
そのほかにも、取得価額の30%に相当する特別償却または7%の税額控除を利用できる「中小企業投資促進税制」や、対象設備を導入することで3年間建屋の固定資産税がゼロまたは2分の1に軽減される「生産性向上特別措置法」が適用できる可能性があります。
非常用電源として利用できる
「自家消費型太陽光発電」と「自立運転機能」付きのパワーコンディショナーを併設すれば、日中の晴天時であれば停電が起きても電気を使用できます。
また、蓄電池を導入し、太陽光発電で作った電気を貯めておけば、夜間や天候の悪い日に蓄電池に貯めた電気を使用できます。ただし、蓄電池で建物すべての電気をまかなうことは難しいので、優先的に使用したい電気を選定しておく必要があります。
夏場の室内温度上昇を抑える
建物の屋根に広範囲に太陽光パネルを設置すれば、太陽光パネルによって屋根の断熱性が向上し、室温の上昇を軽減してくれます。
夏季には、建物の屋根の表面温度は約65℃まで上昇するといわれていますが、太陽光パネルにより40℃程度まで抑え、建物内の温度を3℃から5℃低下させるといわれます。これにより、空調の負荷を抑えて間接的にエネルギーコストを削減できます。
太陽光発電の導入によるCO2排出削減事例
金属加工工場の導入事例
導入先 | 株式会社特殊金属エクセル 様 |
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都道府県 | 埼玉県 |
年間発電量 | 636,132 kwh |
- 製造コスト削減に加えて、早期の再エネ導入による脱炭素促進で業界リードを目指したい
- 当該施設の電気使用量を約10%削減し、年間で約1,000万円の電気代を節約
- 当該施設におけるCO2排出量を約10%削減し、年間で約300t-CO2の排出を減少
複合的にメリットが得られる企業の太陽光発電は脱炭素の主流に
ここまでご紹介したように、太陽光発電設備で作った電気は、火力発電に比べてわずか数%のCO2排出量で使用できます。これにより、これからの時代に企業に求められる「脱炭素経営」を推進できます。
さらに、電気代の削減・環境に関する法制度への対応・優遇税制の適用・非常用電源としての活用など、複合的なメリットが得られるのが企業の太陽光発電の特徴でありメリットでもあります。
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