温対法とは?|省エネ法との違いや対象の事業者について解説

地球温暖化は深刻な問題であり、企業にはさまざまな対策が求められています。温対法もその一部であり、 温室効果ガス排出量の算出・報告義務などが課せられています。

しかし、省エネ法との違いや温対法の内容がいまいち理解できないこともあるでしょう。

この記事では、温対法と省エネ法との違いや対象の温室効果ガス、事業者などについて解説しています。

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温対法:地球温暖化対策の推進に関する法律とは?

温対法は「地球温暖化対策の推進に関する法律」が正式名称で、ほかにも「地球温暖化対策推進法」と省略して表記されている場合があります。1998年10月9日に制定された法律であり、京都議定書の締結に伴い2002年に改正されています。

名前のとおり地球温暖化防止を目的とした法律であり、おもに温室効果ガスの排出量に対する報告義務や排出量抑制が課されます。

制定以来、何度か改正を重ねてきましたが、2021年3月2日に「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」が新たに閣議決定されました。 この背景には、パリ協定の定める目標や、脱炭素経営に取り組む企業や自治体が増加していることが関係しています。

温室効果ガスと地球温暖化

地球温暖化の原因として、温室効果ガスが大きく関わっています。

温室効果ガス

温室効果ガスは大きく6つに分けられています。

  • 二酸化炭素
  • メタン
  • 一酸化二窒素
  • ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
  • パーフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
  • ふっ化硫黄

代表的なのが二酸化炭素であり、電気や熱、自動車の排気ガスなど、あらゆるところで大量に排出されているのが現状です。

世界全体では、温室効果ガスの総排出量のうち、二酸化炭素は76%を占めており、日本だけの数字で見ると91.7%もあります。

温対法では特定事業所排出者・特定輸送排出者に、この温室効果ガス排出量の算出・報告・削減が求められています。

地球温暖化

地球温暖化には、の原因として、温室効果ガスの濃度が関係しています。もともと地球の大気には温室効果ガスが含まれており、赤外線を吸収し再び放出(温室効果)することで地球は一定の温度(平均約14℃)を保っています。

この温室効果ガスがなくなれば地球の表面温度は-19℃になると考えられており、温室効果ガスは地球にとって必要なものといえます。しかし、温室効果ガスが増えると温室効果も高まり、地球温暖化へと繋がります。

地球温暖化が進めば海面水位の上昇、大雨による被害増加など、さまざまな気候変動のリスクが高まります。そのため、世界規模で地球温暖化対策が求められています。

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温対法と省エネ法の違い

温対法とは別に、省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)があります。どちらも温室効果ガス排出量の報告義務があるため似ていますが、対象範囲や目的が一部異なります。

省エネ法では燃料・熱・電気を対象とし、再生可能エネルギーなどの非化石エネルギーは含まれていません。また、省エネ法が規制する分野は、工場など、輸送、住宅・建築物、機械器具、電気事業者の5分野に分けられています。

温対法では温室効果ガスの種類が、「エネルギー起源CO2」と「エネルギー起源のCO2以外の温室効果ガス」の2つに分けられています。そのほか罰則の内容も異なり、省エネ法では複数の項目で罰金が設けられています。

温対法とは?|省エネ法との違いや対象の事業者について解説

温対法で対象となる事業者と温室効果ガス

エネルギー起源CO2

エネルギー起源CO2の対象者は、「特定事業所排出者」と「特定輸送排出者」で分けられています。

特定事業所排出者:全ての事業所のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上となる事業者

  • 省エネ法の特定事業者
  • 省エネ法の特定連鎖化事業者
  • 省エネ法の認定管理統括事業者又は管理関係事業者のうち、全ての事業所のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上の事業者
  • 上記以外で全ての事業所のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上の事業者
引用:「今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~|資源エネルギー庁

特定輸送排出者

  • 省エネ法の特定旅客輸送事業者
  • 省エネ法の特定航空輸送事業者
  • 省エネ法の特定荷主
  • 省エネ法の認定管理統括荷主又は管理関係荷主であって、貨物輸送事業者に輸送させる貨物輸送量が3,000万トンキロ/年以上の荷主
  • 省エネ法の認定管理統括貨客輸送事業者又は管理関係貨客輸送事業者であって、輸送能力の合計が300両以上の貨客輸送事業者
引用:「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」 |環境省_制度概要

エネルギー起源のCO2以外の温室効果ガス

エネルギー起源のCO2以外の温室効果ガスでは、対象者は以下のように定められています。

特定事業所排出者:次の①および②の要件をみたす事業者

  • 1.温室効果ガスの種類ごとに全ての事業所の排出量合計がCO2換算で3,000t以上
  • 2.事業者全体で常時使用する従業員の数が21人以上
引用:「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」 |環境省_制度概要

上記に該当する事業者が対象となり、温対法で定めている「算定・報告」が義務づけられます。

また、事業者・フランチャイズチェーン単位での報告が必要なため、要件を満たしているフランチャイズチェーンもひとつの事業者とみなして報告します。

エネルギー起源CO2の報告には、省エネ法の定期報告書を活用できます。

温室効果ガス排出量算定の対象となる事業活動

排出量算定の対象となる事業活動は、複数の項目があります。

エネルギー起源CO2

  • 燃料の使用
  • 他者から供給された電気の使用
  • 他者から供給された熱の使用

非エネルギー起源CO2

  • 原油又は天然ガスの試掘・生産
  • セメントの製造
  • 生石灰の製造
  • ソーダ石灰ガラス又は鉄鋼の製造
  • ソーダ灰の製造
  • ソーダ灰の使用
  • アンモニアの製造
  • シリコンカーバイドの製造
  • カルシウムカーバイドの製造
  • エチレンの製造
  • カルシウムカーバイドを原料としたアセチレンの使用
  • 電気炉を使用した粗鋼の製造
  • ドライアイスの使用
  • 噴霧器の使用
  • 廃棄物の焼却もしくは製品の製造の用途への使用・廃棄物燃料の使用

メタン(CH₄)

  • 燃料を燃焼の用に供する施設・機器における燃料の使用
  • 電気炉における電気の使用
  • 石炭の採掘
  • 原油又は天然ガスの試掘・生産
  • 原油の精製
  • 都市ガスの製造
  • カーボンブラック等化学製品の製造
  • 家畜の飼養
  • 家畜の排せつ物の管理
  • 稲作
  • 農業廃棄物の焼却
  • 廃棄物の埋立処分
  • 工場廃水の処理
  • 下水、し尿等の処理
  • 廃棄物の焼却もしくは製品の製造の用途への使用・廃棄物燃料の使用

一酸化二窒素(N₂O)

  • 燃料を燃焼の用に供する施設・機器における燃料の使用
  • 原油又は天然ガスの試堀・生産
  • アジピン酸等化学製品の製造
  • 麻酔剤の使用
  • 家畜の排せつ物の管理
  • 耕地における肥料の使用
  • 耕地における農作物の残さの肥料としての使用
  • 農業廃棄物の焼却
  • 工場廃水の処理
  • 下水、し尿等の処理
  • 廃棄物の焼却もしくは製品の製造の用途への使用・廃棄物燃料の使用

ハイドロフルオロカーボン類(HFC)

  • クロロジフルオロメタン(HCFC-22)の製造
  • ハイドロフルオロカーボン(HFC)の製造
  • 家庭用電気冷蔵庫等 HFC 封入製品の製造におけるHFCの封入
  • 業務用冷凍空気調和機器の使用開始におけるHFCの封入
  • 業務用冷凍空気調和機器の整備におけるHFCの回収及び封入
  • 家庭用電気冷蔵庫等 HFC 封入製品の廃棄におけるHFCの回収
  • プラスチック製造における発泡剤としてのHFCの使用
  • 噴霧器及び消火剤の製造におけるHFCの封入
  • 噴霧器の使用
  • 半導体素子等の加工工程でのドライエッチング等におけるHFCの使用
  • 溶剤等の用途へのHFCの使用

パーフルオロカーボン類(PFC)

  • アルミニウムの製造
  • PFCの製造
  • 半導体素子等の加工工程でのドライエッチング等におけるPFCの使用
  • 溶剤等の用途へのPFCの使用

六ふっ化硫黄(SF₆)

  • マグネシウム合金の鋳造
  • SF₆の製造
  • 変圧器等電気機械器具の製造及び使用の開始におけるSF₆の封入
  • 変圧器等電気機械器具の使用
  • 変圧器等電気機械器具の点検におけるSF₆の回収
  • 変圧器等電気機械器具の廃棄におけるSF₆の回収
  • 半導体素子等の加工工程でのドライエッチング等におけるSF₆の使用

三ふっ化窒素(NF₃)

  • 三ふっ化窒素(NF₃)の製造
  • 半導体素子等の加工工程でのドライエッチング等におけるNF₃の使用

排出量の報告義務と罰則

排出量の報告に必要な提出書類は、温室効果ガスの種類によって異なります。エネルギー起源CO2は、省エネ法の定期報告書を使用して報告が可能です。

エネルギー起源のCO2以外の温室効果ガスでは、温対法に基づく「温室効果ガス算定排出量の報告書」が必要です。

両方を報告する場合には、省エネ法の定期報告書に温室効果ガス算定排出量の報告書を添付して報告する形となります。排出量の報告は温対法によって義務となっていますので、虚偽の報告または報告しなかった場合に20万円以下の過料が科せられます。

Jクレジットとの関連性

Jクレジットとは温室効果ガスを削減・吸収した量を国が認証し、「クレジット」として売買できる制度です。省エネ設備や再生可能エネルギー設備の導入、森林経営などの取り組みによる温室効果ガスの削減・吸収量を「環境価値」として売買します。

近年ではCO2削減や再生可能エネルギーの導入などが重視されており、投資家の多くは企業の環境対策に注目しています。事業者によっては自社内での温室効果ガス削減が難しいケースがありますが、このJクレジットを購入することで環境対策に参加しているとアピールができます。

Jクレジットは、温対法や省エネ法の報告に活用できるため、自社内での省エネ化やCO2削減が厳しい場合には、Jクレジットの購入も視野に入れてみましょう。

【5分で分かる】Jクレジットをわかりやすく解説

自家消費型太陽光発電で温対法・省エネ法の対策

自家消費型太陽光発電とは、企業の工場や倉庫など施設の屋根や屋上にソーラーパネルを設置して、発電した電気を事業活動で消費する太陽光発電の導入モデルです。

電力会社から購入している電気を再生可能エネルギーによって賄うことで、その分の企業活動におけるCO2排出量の削減が認められます。

さらに省エネ法や温対法の対策だけでなく、電気料金削減災害時における非常用電源としても効果を発揮します。

また、温暖化対策に取り組む企業であることを内外に発信することで、CSR向上・企業価値向上にも期待できます。

自家消費型太陽光発電の導入には、「中小企業等経営強化法に基づく税制優遇」が利用可能であり、即時償却もしくは税額控除のいずれかが適用されます。

【実例付き】自家消費型太陽光発電とは?仕組み・メリット・デメリットを分り易く解説

まとめ

温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)は、地球温暖化防止を目的として制定された法律です。一部省エネ法と似ている部分がありますが、対象範囲が異なりますので注意が必要です。
また、地球温暖化は深刻な問題であり、世界規模でさらなる温室効果ガスの削減が求められています。とはいえ、事業内容によっては自社内での取り組みに限界を感じている方も少なくありません。

そういった場合には、太陽光発電など再生可能エネルギーによる電力調達や、Jクレジットなどの環境価値の購入も視野に入れて対策を練ってみてはいかがでしょうか。

株式会社ハウスプロデュースでは、企業向けに太陽光発電に関するご相談を承っております。導入を検討されるお客さまには、電気使用量などお伝えいただければ無料で導入効果をシミュレーションいたします。太陽光発電にご興味がある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

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執筆者:株式会社ハウスプロデュース広報部

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当社は、産業用太陽光発電システムのEPC工事を専門に手がけています。経験豊富な電気工事士やエネルギーマネジメントアドバイザーなどの有資格者が在籍。一次情報や専門家からの取材を基に、EPC事業者としての「現場から得たノウハウ」を活かしたコンテンツ作りに取り組んでいます。

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