【2023年版】工場のCO2削減方法や事例を紹介|コスト0円で始められるPPAにも注目
年々深刻化する地球温暖化を防ぐためには、CO2排出削減に繋がる行動が求められます。これは、個人一人ひとりが真剣に考えなければならないのと同時に、企業においても社会的責任が求められていることも意味します。
企業規模や事業内容によっても排出されるCO2の量は異なりますが、なかでも多いのが工場です。今回の記事では、工場におけるCO2削減対策にはどのような方法があるのか、中小企業でも手軽に実施できる方法も含めてわかりやすく解説します。
目次
世界におけるCO2削減対策の現状

CO2排出量削減の取り組みは多くの企業における共通の課題といえますが、社会全体を俯瞰して見た時、どのような現状となっているのでしょうか。
日本のみならず世界の動向を見てみると、なぜ多くの企業が環境問題に取り組んでいるのか、その理由が見えてきます。
2015年にフランス・パリで開催された「COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)」において、以下の長期目標が掲げられました。
上記の目標は、COP21に参加した世界200カ国が合意し策定されたものであり、先進国はもちろんのこと途上国も対象に含まれます。そして、参加国に対しては5年ごとにCO2削減目標を更新し、目標を深掘りすることも求められています。
なお、平均気温上昇を2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑えるという目標を達成するためには、2050年までに脱炭素社会を実現させることが必要とされています。>
これを受け、日本政府は2020年10月に、「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表。2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量の差分を実質的にゼロにする「脱炭素社会」の実現を目指しています。

また、2021年4月にオンラインで開催された気候変動サミットでは、日本における温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%、アメリカでは2005年度比で50%から52%削減することが目標として掲げられました。
このように、日本および世界ではCO2の排出が共通の社会課題として認識され始めており、それに合わせて国内外の企業も環境問題に対する具体的な取り組みを続々とスタートさせている状況です。
工場がCO2削減に取り組むメリット

「環境問題に取り組んだところで経営上のメリットはないのでは」と考える企業も少なくありません。また、「環境問題は大企業など資金に余裕のあるところが取り組めば良いのでは」という考えもあるでしょう。
しかし、実際には企業規模や業種を問わず、あらゆる企業が一体となって取り組んでいく必要があります。そして、環境問題に取り組むことでさまざまなメリットが得られることも事実です。
企業イメージの向上
社会の課題であるCO2排出削減に取り組むことは、企業イメージの向上に繋がります。
企業として自社の利益を追求することは当然ですが、利益だけを追求するあまり、結果として環境破壊に繋がってしまうと企業イメージは低下し、事業にも大きな影響を及ぼしかねません。
企業として環境問題に取り組むことは、企業の信頼度や信用度を向上させ、高い企業価値を生むことにもなります。また、企業イメージが向上することで「この企業で働いてみたい」と感じる求職者も現れ、優秀な人材獲得にも結びつくと考えられます。
経費削減・節電によるコスト削減
CO2の削減に取り組むことにより、節電が徹底されコスト削減にも結びつくでしょう。こまめな消灯やCO2排出が少ない設備の導入などにより、従来よりもコストは低減し経営効率の向上が期待できます。
ビジネスチャンスの拡大
近年、社会的にSDGsが注目されており、SDGs経営に積極的に取り組む大手企業が増えています。一方、中小企業のなかには、大手企業からの下請けや提携によってビジネスを行っているケースも多く、複数の企業によってサプライチェーンが構築されています。
仮に、サプライチェーンの一端を担う中小企業が環境破壊に繋がる行動をとっていた場合、大手企業に対しても社会からの厳しい目が向けられてしまいます。
そのため、SDGs経営に取り組む大手企業のなかには、取引先企業に対して環境問題に関する一定の基準や指針などを設けているケースも少なくありません。
またSDGsはCO2削減との関連も深いため、環境問題に対して積極的に取り組むことで大手企業との取引が可能となり、ビジネスチャンスに繋がることも考えられます。
補助金・助成金の対象となる
CO2削減を目的とした設備などを導入する場合、資金力が乏しい中小企業にとっては経営に大きな負担がのしかかります。そこで、国や自治体は、さまざまな条件に応じて補助金や助成金などの事業を展開しており、申請を行い所定の審査などを経た企業に対しては資金が提供されます。
補助金や助成金をうまく活用することで、設備の導入コストを抑えつつ経営効率をアップさせることができるでしょう。
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工場におけるCO2削減方法の例

広大な土地に立地し設備の規模も大きな工場では、生産活動に必要な電力量も大きく、生産コストに占める電気代の割合も少なくありません。そのため、工場の省エネ対策を実行することにより、多くのCO2削減が期待できるほか、ランニングコストの削減によって経営効率アップにも繋がるでしょう。
では、工場のCO2排出削減対策としてどのような方法が考えられるのか、例をピックアップしながら紹介します。
事業活動に伴うCO2排出を抑制する
工場内の設備を導入・更新する際の工夫や、既存設備を運用するうえでの工夫によって、大きなCO2排出抑制効果があります。
いくつかの対策例を挙げていきます。
燃焼設備の空気比を適正化する
ボイラーなどで燃焼する際、空気の量が少ない場合は不完全燃焼で燃料のロスが発生し、多すぎると余った空気が排ガスとして熱を吸収しロスが生じます。 ボイラーの空気比は1.0に近いほど熱損失を抑えて燃焼できます。
■対策事例
燃料が都市ガスで蒸発量5トン以上10トン未満の3基のボイラーがある施設において、ボイラーの空気比を0.1下げることで、以下のような効果が得られています。
・都市ガス削減量:438,000㎥N/年
・省エネ量:180GJ/年
・温室効果ガス削減量:9.2t-CO2/年
・エネルギー削減額:248,000円/年
(参照元:産業部門(製造業)の温室効果ガス排出抑制等指針(PDF)|環境省)
エネルギー消費効率が高いボイラーの導入
工場で使用しているボイラーを、エネルギー消費効率が高いものに置き換えることで、使用エネルギーの大幅な削減に繋がります。
■対策事例
ある工場では、エコマイザーやエアヒーターといった、熱やエネルギーを回収して再利用する高効率ボイラーを導入することで、以下のような効果を得ています。
・ガス節約量:5,000㎥/年
・ガス代削減:45,000円/年
・CO2排出削減量:11,385kg-CO2/年
・原油の削減量:5,805L/年
(参照元:産業部門(製造業)の温室効果ガス排出抑制等指針(PDF)|環境省)
動力設備の回転数制御装置を導入
機械を一定の回転数で運転していると、必要以上の風量や水量などを送っている場合があります。
状況に合わせてポンプやファンなどの動力の回転数を制御するインバータなどを導入することで、使用エネルギーを削減できます。
■対策事例
ある工場では、ポンプやファンにインバータを導入することで、使用する流量・圧力に応じて必要最小限のエネルギーで稼働するよう制御しました。これにより、以下のような効果が得られています。
・電力節約量:9,000kWh/年
・電気代削減額:135,000円/年
・原油の削減量:2,313L/年
・CO2排出削減量:3,438kg-CO2/年
(参照元:産業部門(製造業)の温室効果ガス排出抑制等指針(PDF)|環境省)
空調効率を高めてCO2を削減する
外壁や屋根が金属製の建物は、どうしても夏は暑く冬は寒くなりがちで、冷暖房を常時稼働しているケースもあるでしょう。
しかし、エネルギー消費が大きい機器ですので、CO2排出の要因にもなってしまいます。空調の設定温度を1℃上げる(暖房時は下げる)と、10%近くの省エネに繋がるといわれています。
とはいえ、作業効率や従業員の体調のことを考えると、省エネのために空調を弱めることが必ずしも正解とはいえません。そこで、効率的な空調稼働で省エネやCO2排出削減に繋がる施策をいくつかご紹介します。
ビニールカーテン |
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断熱塗装 |
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空調自動管理システム |
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上記のような方法で空調効率を高めれば、エネルギー消費を抑えて結果的にCO2排出削減に繋がります。
自家消費型太陽光発電

自家消費型太陽光発電とは、建物の屋根や屋上、空き地などにソーラーパネルを設置し、そこで発電された電力を自社で消費するというものです。いわば電力の自給自足のようなもので、従来のように電力会社から電気を購入する量が大幅に減少するため、ランニングコストの削減に繋がります。

また、自前で発電される電力量の範囲に収まるよう意識をするため、節電にも繋がるでしょう。
太陽光発電システムは、ソーラーパネルを敷設する面積が広ければ広いほど発電量がアップします。そのため、広大な土地に立地する工場においては、屋根や屋上に設置できる自家消費型太陽光発電設備が適しているといえます。
なお、自家消費型太陽光発電は導入時にコストがかかりますが、国や自治体が行っている補助金や助成金事業の対象に含まれることも多く、これらをうまく活用することによって負担が軽減されます。また、短期的に見れば導入コストはかかりますが、毎月の電気代が節約できるため、長期的に見ればコスト削減に繋がることも事実です。
LED照明や高効率の空調などへの買い替え
手軽に始められる工場内でのCO2排出削減対策としては、LED照明やエネルギー効率が高い空調への切り替えをする方法もあります。
従来の白熱灯からLED照明に変更した結果、消費電力が大幅に下がったという事例もあり、大きなCO2排出抑制効果が期待できます。加えて、人感センサーなどを搭載した照明設備を導入すれば、照明の消し忘れも防止できるでしょう。
また、空調設備が老朽化し買い替えを検討している場合には、エネルギー効率が高い製品を選ぶことも有効です。工場内の温度や湿度は、作業員のモチベーションにも影響を与えます。そのため、空調効果を維持しつつ省エネも両立することは経営の面からも大きなメリットがあるでしょう。
カーボンオフセット
脱炭素に向けた企業努力をしても、自社が排出するCO2量をゼロにすることは難しいです。
カーボンオフセットとは、自社で削減しきれないCO2量のすべてまたは一部を、CO2削減に繋がる取り組みによって埋め合わせ(オフセット)することを指します。
カーボンオフセットの方法はさまざまで、たとえば下記のような取り組みがあります。テキストテキスト
画像引用元:自治体向けカーボンオフセット「カーボン・オフセットの研究」による研究成果の紹介|ECOネット東京62 ![]()
- 商品の売上の一部を環境活動を行う団体に寄付する
- 商品の売上の一部を利用して、他者が発行している「J-クレジット」を購入する
- コンサートなどのイベント開催によって排出される温室効果ガス排出量を、クレジット購入によって埋め合わせる
工場のCO2排出削減が対象の補助金がある
国としてもカーボンニュートラルの達成に向けて、CO2排出削減に取り組む事業者を支援する取り組みを行っています。
たとえば環境省の「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)」では、条件に当てはまれば以下のような支援が受けられます。
- 中小企業が工場・事業場でのCO2削減目標・計画を策定する場合、最大100万円が補助(さらにDX化によるCO2排出削減を行う場合は上限200万円が補助)
- 工場単位で15%以上、または主要な設備単位で30%以上CO2削減が見込まれる設備を導入する場合、最大1億円を補助
- 年間4,000t-CO2以上削減する大規模な設備更新に対して、最大5億円を補助
- 中小企業がCO2削減計画に基づいた設備更新を行う際、最大5,000万円を補助
この補助金の実施期間は令和7年度までですので、2023年度(令和5年度)にCO2削減に取り組みたい工場の方はチェックしておきたい補助金です。
上記補助金以外にも、CO2排出削減の取り組みに対する支援が政府や自治体で設けられているため、自社が当てはまるものが無いか確認したり、設備導入を依頼する業者に質問したりすることをおすすめします。
(参照元:工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(PDF)|環境省)
コスト0円で自家消費型太陽光発電設備を導入する方法
工場内でのCO2排出削減対策にはさまざまな方法があることを紹介しましたが、なかでも条件が合えば大きな効果が見込めるのが自家消費型太陽光発電です。
しかし、補助金や助成金が活用できるとはいえ、導入に向けて価格面で高いハードルがあることに変わりありません。そのような場合でも導入しやすい方法として、初期費用をかけずに導入できる方法があることをご存知でしょうか?
通常、自家消費型太陽光発電設備を導入する場合、自社がコストを負担し設置する必要があります。
しかし、割賦販売契約・リース・PPAなどの方法は、導入時の負担がありません。長い目でみれば、自社購入がいちばん経済的なメリットが出ますが、自社の状況によっては、初期費用をかけずに太陽光発電を導入する方法を検討してみましょう。
まとめ
企業や工場における生産活動に不可欠な電力。事業規模が大きくなればなるほど電力使用量も増えるため、コスト削減は重要な経営課題ともいえます。同時に、消費電力の削減はCO2削減やにも繋がるため、環境配慮型の経営が求められている現在、中小企業も含めて真剣に取り組む必要があるでしょう。
企業や工場が実践できるCO2排出抑制対策にはさまざまな方法がありますが、自家消費型太陽光発電は高い効果が見込める一方で導入時のコスト負担が大きな課題となります。
今回紹介したPPAを活用することで、設置時のコストやメンテナンスコストを大幅に削減しながら環境配慮型の経営を実現できるため、導入に向けて検討してみてはいかがでしょうか。
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