パリ協定を踏まえ、世界中が気候変動対策へ動いています。日本政府も2020年10月、2050年までに温室効果ガス排出を全体としてゼロにする「脱炭素社会」を目指すことを明言。企業側にも今後具体的な取り組みが求められます。
この記事では、企業が今後、環境を意識した経営を行なうという視点から、脱炭素社会について解説します。
目次
脱炭素社会とは
脱炭素社会とは、温室効果ガスの排出を減らす努力に加え、排出されたガスを回収し実質ゼロにする社会のことです。今までは「低炭素社会」として取り組んできましたが、脱炭素社会は温室効果ガス排出の「実質ゼロ」を目指す施策です。
この背景には、低炭素社会を目指すだけでは現在進行している熱波や豪雨など、急激な気候変動に対処できないという各国の危機感があります。
脱炭素社会に向けた世界各国の取り組み
パリ協定を踏まえて、世界の122の国や地域が2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指しています。パリ協定とは、地球温暖化対策について定めた国際的な条約です。
たとえば、欧州連合(EU)欧州委員会は2019年12月に「欧州グリーンディール」を発表し、2050年に域内の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げました。しかし現在の政策では、2050年時点で1990年比60%削減が限界で、まだまだ課題が残る状態です。そのため2030年時点で1990年比50%から55%削減できるように政策の見直しが進められています。
アメリカでは、トランプ政権下で環境保護政策は後退したかのように見えましたが、バイデン氏は公約のなかで2050年までに排出実質ゼロを目指すと述べています。加えて、温室効果ガスの主要排出国である中国も2020年9月に、2060年までに脱炭素社会を目指すことを表明しています。
また、国際社会において注目すべき取り組みとして、2015年9月の国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」も挙げられます。これは17の目標と169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない」ことを宣言した取り組みですが、そのなかには気候変動に対する具体的な施策も含められています。
脱炭素社会に向けた国際イニシアチブ
EP100
EP100とは「Energy Productivity100%」の略で、環境NGO「The Climate Group」によって運営されている国際イニシアチブ(「イニシアチブ」は「取り組み」の意味)です。 企業が目標を掲げ、エネルギー効率向上倍増や、エネルギーマネジメントシステム、あるいはビル全体として消費エネルギーゼロにする建物「ZEB(ゼブ)」導入を目指すことで加盟の申請ができます。
RE100
RE100とは「Renewable Energy 100%」の略で、EP100と同じく「The Climate Group」により運営される国際イニシアチブです。企業が事業運営に必要な電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す取り組みです。
EV100
EV100とは「Electric Vehicle 100%」の略で、運営団体はEP100・RE100と同じく「The Climate Group」です。2030年までに企業が事業で使用する車両をすべて、電気自動車化を目指す取り組みです。
脱炭素社会に向けた日本政府の取り組み
日本政府はパリ協定のあと、2050年までに2013年比で温室効果ガス排出量を80%削減するとしていました。その後先進諸国と歩調を合わせ、2020年10月には菅首相が所信表明演説で2050年までに脱炭素社会を目指す旨を明示しています。
さらに日本政府は脱炭素社会実現に向けて、温暖化対策に取り組む団体や産業界の代表、学識経験者などを招集して、2020年12月に「国民会議」を開催予定です。
加えて、脱炭素社会の実現に向けて地方自治体とどのように協力するかについても意見交換の場を設けることにしており、脱炭素社会に向けた具体的な取り組みが本格化しています。
企業経営が脱炭素社会を意識すべき理由
各国政府が脱炭素社会に向けて急速に動き出しているなか、企業経営もそれに協調した動きが求められていますが、環境経営は企業自身のメリットに繋がります。
脱炭素社会への社会的要請が強まっている
脱炭素社会への社会的気運を強めている一つの原動力に、前述したSDGs(持続可能な開発目標)が挙げられます。日本の経営者層もSDGsを意識するようになり、現在では新しい価値観として社会全体で認知され始めています。
たとえば、日本経済団体連合会はSDGsの達成に貢献できるように、気候変動対策や再生可能エネルギーの割合拡大などを盛り込んで企業行動憲章を改定しました。
投資家・ステークホルダーからの要請が強まっている
投資家の間では気候変動のリスクを回避して、安定した投資先を求めるESG投資が今や主流になりつつあります。ESG投資とは「environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に着目し、投資先の企業価値を見極めようとする投資手法です。今後、企業経営において脱炭素社会を意識しなければ、投資を呼び込むことは難しくなるでしょう。
また、企業の事業活動、サプライチェーンには多数のステークホルダー(利害関係者)が 関わっています。脱炭素社会への社会的気運の高まりとともに、ステークホルダーの関心もESG投資へ向いているため、企業経営もその要請に協調する必要があります。
コスト削減が見込める
企業が脱炭素経営にシフトするには、膨大なコストがかかるようにも見えます。確かに設備投資には初期コストが必要ですが、長い目でみればコスト削減が見込めます。
たとえば、10年前は再生可能エネルギーの発電コストは割高であり、企業にとって敷居が高い選択肢でした。しかし、太陽光エネルギーに関して言えば2017年のコストは2010年の3分の1以下に下落しており、今後はさらなる低下が期待できます。
法人、とくに中小企業が脱炭素経営に取り組む意義やメリットについて、以下の記事でも解説しています。
脱炭素社会に向けた企業の具体的な取り組み
脱炭素経営に向けた取り組みは、企業にとってもメリットがあります。各企業の具体的な取り組みを見てみましょう。
海外企業の取り組み
海外先進企業は、自社のサプライヤーにも温室効果ガスの削減を求めています。
たとえば、アメリカのアップルはサプライヤーに再生可能エネルギーへの転換を促し、2018年4月までに10ヵ国合計23社が生産を100%再生可能エネルギーで行う旨を明示しています。グーグルにおいても世界23ヵ国400超のサプライヤーが、温室効果ガスの削減目標の設定を目指しています。
また、前述した国際イニシアチブの1つであるRE100にはアップル社やグーグル、P&G、ウォルマートなど各分野で影響力のある企業が相次いで参加。持続可能性が経営戦略や資金調達に欠かせない要素だとわかります。
日本企業の取り組み
RE100・EP100への参加
日本企業の各国際イニシアチブへの参加も加速しています。RE100にリコーが日本企業としてはじめて参加表明したのは2017年4月でしたが、2020年12月には43社もの日本企業が参加しています。EP100への参加は2020年12月現在、大和ハウス・NTT・大東建託の3社のみですが、RE100と同じように今後参加する企業は増加すると予想されます。
環境省「脱炭素経営による企業価値向上促進プログラム」
環境省は脱炭素経営を目指す企業を支援する目的で2018年6月に「脱炭素経営による企業価値向上促進プログラム」を発表しました。以下3つの活動を柱とし、説明会やコンサルティングを実施しています。
- 野心的な脱炭素経営の目標設定の支援
- 脱炭素経営ネットワークづくり
- 気候変動リスク・チャンスを織り込む経営の支援
企業の脱炭素への取り組みに対する補助金・支援制度
二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金の概要
環境省が各執行団体を通じて行う補助事業であり、トラック・バス導入時の電動化対応やサプライチェーンの脱炭素への転換支援、建物の「ZEB(ゼブ)」化など、多岐に渡る分野において補助金の交付を行います。
プラスチック等資源循環システム構築実証事業の概要
プラスチック資源循環を目指し、化石資源由来の素材からバイオマスや生分解性プラスチック、紙等の再生可能資源への転換やプラスチック素材のリサイクル技術の実証事業の事業者公募を実施していました。
まとめ
地球温暖化の進行によって、世界各国で異常気象や自然災害が頻発しています。
それらによって引き起こされる、さまざまな二次災害のリスクを防ぐため、日本を含めた各国が脱炭素社会の実現に向けた政策が進んでいます。
SDGs・RE100・ESG投資などの国際イニシアティブの活発化、脱炭素社会に向かう政治的な潮流から、既に国内でも多くの先進的企業は事業による環境配慮を織り込むことがスタンダード化されています。
サプライチェーンへの脱炭素化への移行要請も強まっており、中小企業にとっても脱炭素化の流れは波及しています。
一方、脱炭素社会の貢献する企業とっては、企業成長の機会が増えていくことになります。太陽光設置お任せ隊(運営:株式会社ハウスプロデュース)は、自家消費型太陽光発電の導入をはじめ、企業の脱炭素社会への取り組みに対して様々な支援を行っております。
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