工場の建設や増設をする際には、工場立地法の基準をクリアしなければいけません。生産施設のほかに、環境施設や緑地を一定以上の割合で設ける必要があるなど、細かい基準が定められています。
環境施設には運動場や広場などが含まれるのですが、じつは太陽光発電設備も環境施設に含まれています。そのため敷地を有効活用できたり、経費削減が行えたりなど、さまざまなメリットがあります。
この記事では、太陽光発電設備と工場立地法の関係性と、環境施設として太陽光発電を導入するメリットについて解説しています。
■太陽光発電は工場と好相性|長期的なCO2排出削減や電気代削減に繋がる
工場立地法において、太陽光発電は環境施設として認められるため、屋根・屋上を有効活用しながら電気代削減ができます。
製造業の工場は、他の業種と比較して顕著に電力消費量が増加しやすいですが、通常広い屋根を持っているため、太陽光パネルとの相性が良く、電力を大幅に削減しやすい傾向にあります。
工場に太陽光発電を導入するメリットについては以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。
目次
そもそも工場立地法とは?
工場立地法とは、「国民経済の健全な発展と国民の福祉の向上」を目的として1973年に制定された法律です。
工場があることで公害や環境問題を発生させないための指針や、一定規模以上の工場を建設する際は敷地内に緑地(運動場や広場など)を設ける必要があるといったことが定められています。
工場立地法が作られた背景
工場立地法が制定された背景には、高度経済成長期における公害問題が大きく関わっています。
経済の発展とともに各地では急速な工業化が進み、ゴミ問題や水質汚染といった公害問題も増えていきました。
これにより、水俣病や四日市ぜんそくなど、各地で「公害病」も起こり、企業の責任が問われるようになったのです。
そのような背景から工場立地法が制定され、工場敷地内の生産施設部分は一定の割合以内に収め、同時に緑地や環境施設を設けなければいけないと定められました。
工場立地法の届け出が必要な工場
工場立地法で届け出義務が必要な工場は以下のとおりです。
- 業種:製造業、電気・ガス・熱供給業者(水力、地熱及び太陽光発電所は除く)
- 規模:敷地面積 9,000㎡以上 または 建築面積 3,000㎡以上
上記に該当する場合、工場の新設や増設などを行う際に、工場が立地する自治体(都道府県や市)に届出が必要となり、基本的に届け出から90日間は着工できません。
生産施設や緑地面積の割合が基準を満たしていない場合は、勧告に従って変更を行います。もし勧告・変更命令に従わなかった時は、罰則が適用されます。
工場立地法が定める面積要件
工場立地法が定める面積要件には、生産施設・環境施設・緑地があります。
分類 | 要件 |
---|---|
生産施設(工場やプラント類) | 敷地面積の30から65%(業種による) |
環境施設(広場・運動場・太陽光発電など) | 敷地面積の25%以上(このうち緑地面積20%以上とする) |
緑地(樹木・花壇・芝生など) | 敷地面積の20%以上 |
(参照元:工場立地法の規制の概要(PDF)|経済産業省)
それぞれの内容を見ていきましょう。
生産施設
生産施設の面積は国が一律に定めており、業種によって敷地の30%から65%以内となっています。
業種の区分 | 敷地面積に対する生産施設の面積の割合 |
---|---|
・アンモニア製造業および尿素製造業 ・石油精製業 ・コークス製造業およびボイラ・原動機製造業 |
30% |
・伸鉄業 | 40% |
・窯業・土石製品製造業 (板ガラス製造業、陶磁器・同関連製品製造業、ほうろう鉄器製造業、七宝製品製造業及び人造宝石製造業を除く) |
45% |
・鋼管製造業および電気供給業 | 50% |
・でんぷん製造業・冷間ロール成型形鋼製造業 | 55% |
・石油製品・石炭製品製造業(石油精製業、潤滑油・グリース製造業、びコークス製造業を除く) ・高炉による製鉄業 |
60% |
・その他の製造業、ガス供給業及び熱供給業 | 65% |
(参照元:工場立地に関する準則(平成29年8月16日施行)|経済産業省)
かなり細かく分けられていますので、届け出を行う際には自治体または経済産業省に確認を取りましょう。
環境施設
環境施設の面積は、「緑地 + 緑地以外の環境施設」が該当し、敷地面積の25%以上が必要です。
(ただし、自治体によっては地域の実情に合わせて、国が定める10%から35%内で独自の策定が可能です)
環境施設の一例として、運動場・広場・修景施設などが該当します。
とはいえ、広場といってもただの空地ではなく、「休息や軽い運動ができるようなオープンスペース」などと細かな規定がありますので、どのような施設が該当するかは自治体に確認が必要です。
緑地
工場立地法では緑地面積が一番の鍵となります。環境施設の面積は「緑地+緑地以外の環境施設」で敷地面積の25%以上が必要とお伝えしましたが、そのうち緑地面積だけで20%以上が必須です。
つまり、緑地以外の環境施設だけで25%以上確保しても認められず、必ず緑地は20%以上設けなければいけません。
緑地として認められる主なものは、花壇や樹木が生育する土地、芝生などです。雑草地であっても手入れが施されている場合、緑地として認められるケースもあります。
ただし、野菜畑やビニールハウス、温室は緑地としては認められていません。また、環境施設と同様で自治体によっては敷地面積の5%から30%の範囲で定めている場合があります。
太陽光発電は環境施設でありながら経済的メリットも得られるシステム
太陽光発電システムは「緑地以外の環境施設」として認められています。
他の環境施設は、景観の改善や、体を動かしたり休ませたりすることでストレスを発散するといった利点がありますが、経済的なメリットは期待しにくい施設です。
その点、太陽光発電は環境施設の割合を増やすだけでなく、以下のような工場運営におけるメリットが付随することが大きな特徴です。
- 電気代削減効果によって経済的なメリットを生む
- SDGs・CSRの活動としてアピールできる
- 非常用電源として活用できる
- 屋根の遮熱効果を向上させる
上記の内容を含め、太陽光発電を導入することで得られるメリットを紹介していきます。
環境施設として太陽光発電を導入するメリット
環境施設として太陽光発電設備を導入するメリットについて見ていきましょう。
工場の電気代が削減できる
太陽光発電で作った電気を自社で使用すれば、その分だけ電力会社から電気を買わずに済むため、自社の電気代を削減できます。
とくに2022年から続く電気代の高騰傾向は、2023年も続く見込みですので、電力会社に依存しない電力調達の仕組みを自社に設けることは、長期的なコスト削減に繋がるでしょう。
このように、環境施設でありながら経済的なメリットが生まれることは、噴水・運動場など、ほかの環境施設にはない太陽光発電の特徴といえます。
省エネ法対策になる
太陽光発電は、工場立地法だけでなく省エネ法の対策にも繋がります。
省エネ法とは燃料・熱・電気など、一定以上のエネルギーを使用している事業者に対して、エネルギー使用状況の報告義務や、年平均1%以上のエネルギー消費量低減などの目標などを定めている法律です。
省エネ化に対しての取り組みが不十分な場合、指導や罰則の対象となるため、事業所内での省エネ法対策が必要となります。
太陽光発電で発電した電気は省エネ法の規制対象となるエネルギーではないため、自家消費を行えば自社のエネルギー使用量の低減に繋がります。
CO2排出削減と企業価値向上
太陽光発電は再生可能エネルギーであるため、CO2を削減し環境問題への取り組みの一環になります。
いまは企業に対して脱炭素社会の構築や地球温暖化への対策が求められる時代となっており、SDGs(持続可能な開発目標)やCSR(社会的責任)活動、ESG投資などが注目を浴びています。
また、Appleやトヨタ自動車が取引先にもCO2排出削減に対する取り組みを求めるなど、脱炭素経営は大手が自社のみで行うのではなく、サプライチェーン全体で取り組む動きが出始めています。
太陽光発電などの再生可能エネルギーを積極的に取り入れることが、企業価値の向上ならびに新規取引先や案件の獲得に繋がるでしょう。
非常用電源としての活用
太陽光発電は、日光さえあれば常に発電してくれるため、自然災害などによる停電が発生した場合の非常用電源としての機能も果たします。
太陽光発電のみで工場内のすべての機械や設備の電気をまかなうことは難しいですが、停電した際に優先して運用したい機械や設備を選定し、太陽光発電の電気が供給できるように設計しておくことで、最小限のリスクマネジメントが可能です。
また、自社の事業継続性を向上させておくことは、いざという時の損失を最小限に止める努力をしている企業として、社会的信用を得ることにも繋がります。
屋根の遮熱効果を向上
太陽光パネルを屋根に設置した場合、屋根の遮熱性能を向上する効果が期待できます。
工場の屋根は、日光によって温められることで「熱伝導」を引き起こし、工場内部の室温の上昇させますが、太陽光パネルがあれば日射を吸収し、室内の温度上昇を軽減するといわれています。
工場の屋根全体に太陽光パネルを設置し、夏場の室内温度上昇を3℃ほど抑えているケースもあります。
これによって、空調の温度設定を抑えることで消費電力の削減や、設備の劣化軽減に繋がります。
太陽光発電を導入する際の課題
太陽光発電設備の導入にはメリットがある反面、課題が残っているのが現状です。企業規模によっては初期費用が高額となるほか、定期的なメンテナンスを手間に感じる方もいるかしれません。
災害時には非常用電源として活用できますが、大きな地震や雹(ひょう)など災害の規模によっては設備が損壊する恐れもあります。
そのほか、太陽光発電の発電量は天候や日射量に左右されやすいため、安定した供給が行えない可能性もあります。
長期的な観点から、自社にとってメリットとなるか、デメリットをどれだけ回避できるかなど、よく考慮したうえで導入を検討しましょう。
初期投資ゼロで太陽光発電を導入する方法
前述した通り、太陽光発電の導入には初期費用や、メンテナンスを要することなど注意すべき点があります。そのため、近年ではPPAモデル(初期費用0円)で太陽光発電設備の導入する方法が注目されています。
PPAモデルの太陽光発電導入では、お客さまが所有している施設(工場など)の屋根や遊休地を貸し出し、そこにPPA事業者が太陽光発電設備を導入・所有します。
契約期間中、お客さまは太陽光発電の電気を使用した分の電気代をPPA事業者に支払う代わりに、導入費用や設備のメンテナンス(保守・管理)はPPA事業者がすべて負担します。
また、PPA契約終了後は太陽光発電設備はそのまま需要家に無償譲渡されるため、引き続き太陽光発電の電気を利用できることになります。
PPAモデルを活用することで、初期投資やメンテナンスの手間などのデメリットを受けずに太陽光発電設備を入手できます。
まとめ
工場立地法によって、工場を建設する際に生産施設だけではなく緑地や環境施設を設ける必要があり、大きな土地があったとしてもすべてを工場(生産施設)として建設することはできません。
環境施設には運動場や広場などが含まれますが、太陽光発電設備を導入すれば敷地を有効活用しながら電気代を削減できます。環境施設でありながら経済的なメリットも生み出すことは、ほかの環境施設には無い太陽光発電のメリットです。
運動場や広場などの環境施設はできるだけ避けたい、緑地も有効活用したいといった場合、太陽光発電設備の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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