工場やオフィスなど事業所では毎日多くの従業員が働き、業務のために電力を消費しています。照明や空調設備はもちろん、製造工場であれば印刷機や加工機器、製造機器など多くの電気機器で電力を消費しています。
企業が電気代を下げる有効策は、基本料金を下げることです。そのために有効な技術が「デマンドコントロール」です。
この記事では、デマンドコントロールの仕組み・導入方法・補助金情報・デマンドコントロールの効果を高める太陽光発電の活用について解説していきます。
目次
デマンドコントロールとは
デマンドコントロールとは、事業で使用する電力量の監視・調整を通じて消費電力量を計画的にコントロールする仕組みです。
デマンドコントロールは、無駄な電力消費を抑えることで電気代削減につながります。とくに業務用や高圧電力契約を結んでいる場合に高い効果を発揮します。
そもそも「デマンド」とは
デマンド(demand)は、英語で「要求」や「需要」を意味しますが、デマンド値と表記される言葉は、瞬時電力値(kW)を意味します。ここではデマンドコントロールに欠かせない、最大デマンド値についてみていきましょう。
デマンド値とは「30分間の電力消費平均値」
デマンドコントロールによって電気代を抑えるためには、デマンド値を理解しましょう。
電力会社との取引で「30分間の電力消費平均値」を意味します。デマンド値の計測は、30分間ごとに行われるため、1日48回行われます。
たとえば15分間で300kW消費したあとに、15分間で100kW消費した場合、デマンド値は計測期間の平均値を取るため、このケースでは200kWがデマンド値になります。
最大デマンド値が電気代を決める
1ヶ月間のデマンド値で最も高いデマンド値を「最大デマンド」と呼びます。
過去12ヶ月で最も高い月の最大デマンド値が、契約電力に反映されます。
電気代の「基本料金」は、「単価×契約電力(最大デマンド)×力率割引(割増)」で求められます。
そのため、普段から節電を頑張っていても、何らかの要因で電気を一気に大量に使った時間帯があれば、そのときの基準で電気代の基本料金が設定されます。
基本料金を下げるには、継続的に最大デマンド値を下げる施策が必要になります。
デマンド値を抑える仕組み
電気代を抑えるには、最大デマンド値を抑える必要があります。
最大デマンド値の仕組み上、少ない電力を長時間使用するよりも大量の電力を短時間使用する方がデマンド値が高くなることを覚えておきましょう。たとえば以下のような取り組みが考えられます。
- 電子機器に優先順位を決めておき、優先度の低い電子機器は停止する
- 空調設備・照明の省エネ化
- 太陽光発電・蓄電池など創エネ設備の導入
- 照明や空調設備に人感センサーをつけて稼働時間を限定
- インバータの高効率化
電力消費の影響が大きい箇所から局所的に電力を削減すると効果的です。このように施設の省エネ化と創エネ化に取り組むことで、効率的にデマンド値を下げることができます。
デマンドコントロールをする2つの方法
先ほど紹介した施策以外にも、デマンドコントロールを導入することで、デマンド値を見える化し、管理・制御できる体制作りを行いましょう。
デマンドコントロールを行う方法は、「デマンド監視装置」と「デマンドコントロールシステム」の2種類あります。それぞれについて見ていきましょう。
1.デマンドコントロールシステムの特徴
デマンドコントロールシステムは、あらかじめ設定した目標デマンド値を超過しないように、空調設備などの電源を自動でオフにしたり、出力を弱めてくれます。
デマンドコントロールシステムメリット
デマンドコントロールシステムの主なメリットは以下のとおりです。
- 契約電力(最大デマンド)超過を自動で防止する
- 電力消費の計測と記録業務を自動で記録する
- 自動制御なので人的ミスが発生しない
デマンドコントロールシステムの最大のメリットは、機械が自動で作動してくれる点です。特に大型施設や工場など、人力で電気機器の制御が難しい建物の場合に、活躍してくれます。
2.デマンドコントロールシステムのデメリット
デマンドコントロールシステムの主なデメリットは以下です。
- デマンド監視装置と比べて導入コストが高い
- エアコン設備などの停止によって、労働環境に問題が生じる場合がある
- 予期せぬ電気機器の急停止によって電気機器が痛みやすい
特に、エアコンの急停止による従業員の体調不良や不満の発生など、業務で使用する電気機器が急停止してしまえば業務に支障をきたす場合もあります。
デマンド監視装置の特徴
デマンド監視装置は、予め設定した目標のデマンド値を超過しそうになった際に、警報機やメールなどによって事前に警告・通知してくれます。デマンドコントロールの様に自動制御では無いため、手動で電子機器を調整する必要があります。
デマンド監視装置のメリット
デマンド監視装置の主なメリットは以下です。
- デマンドコントロールシステムと比べて導入コストを抑えられる
- 現場の状況に合わせて臨機応変にデマンド制御できる
- 従業員に対して節電の意識づけができる
デマンド監視装置は自動制御で無いため、予期せぬ電源停止で困ることがありません。また、表示盤を設置することでリアルタイムでデマンド状況が把握できるため、従業員の節電意識が向上する効果も見込めます。
デマンド監視装置のデメリット
デマンド監視装置の主なデメリットは以下です。
- デマンド状況に合わせて手動で調整が必要
- 電力消費の計測と記録業務のため人員が必要
- デマンドの計測と制御のタイミングにズレが生じる
デマンド監視装置のデメリットは、機器の操作時に担当者の工数が発生する点です。また、いつでも瞬時に機器を操作できるわけではないので、自動制御と比べてデマンドコントロールの効率は劣ります。
デマンドコントロールシステムとデマンド監視、どちらを選ぶべき?
デマンドコントロールシステムとデマンド監視装置を選ぶ際のポイントは、導入コストや会社の方針などさまざまですが、基本的には現場の規模感で選ぶことをおすすめします。
- デマンド監視装置
- 目標のデマンド値を超えないように従業員が機器を操作しなければなりません。そのため、従業員が数十名で細かな管理が行える小規模なオフィスや工場などの事業所に合います。
また、手動制御の補填として人感センサー付きの照明や空調設備に切り替えることで、工数を削減する事が可能です。 - デマンドコントロールシステム
- 目標のデマンド値を超えないように自動で機器がコントロールされるため、従業員が数百名を超えるような、大規模な工場や施設などの事業所に合います。
初期費用が高くても、デマンド管理や制御に人員と工数を割く必要がないので、結果的にコスト削減が見込めるでしょう。
デマンドコントロール導入の流れ
次に、デマンドコントロールを導入する流れを見ていきましょう。
- まずは、施設内の電気使用状況を調査します。どのくらい電気を消費しているか、どのような機械をどう使用しているのか専門家に細かく確認してもらう必要があります。
- 過去2年間分の「電気ご使用量のお知らせ」(電気代明細書)を提示することも求められるため、明細書が手持ちに無い場合は契約先の電力会社から入手しておきましょう。
導入後は、現状の契約電力を下げるよう電力会社に申請(減設申請)を行います。申請を忘れてしまうと、契約電力が下がらないため注意しましょう。
- 受電設備の仕様書(単線結線図など)
- 設備の仕様書
- 取扱説明書契約電力の超過時に停止対象とする機器の仕様書
デマンドコントローラー導入の補助金
近年では新型コロナウイルスの影響もあり、デマンドコントローラーの導入には積極的に各自治体で補助金を出しています。ここではその一部ご紹介いたします。
引用:金沢市公式ホームページ
制度タイトル 金沢市事業者用デマンドコントロールシステム設置費補助制度 補助対象 ・自己の事業の用に供する市内の建築物にシステムを設置すること
・電力会社との契約電力が50kW以上500kW未満の建築物であること。
・市税を滞納していないこと補助対象 1. パソコン上でデマンドや電力使用量のデータ管理ができること (ただし、パソコン、プリンターは補助対象外)
2. デマンドの監視機能と目標値超過を予測した場合の警報機能があること
3. 未使用のシステムであること
4. 既存の設備の更新ではないこと助成金額 設置費用×1/4 (限度額20万円・千円未満切り捨て)
引用:公益財団法人東京都中小企業振興公社
制度タイトル 令和2年度 LED照明等節電促進助成金 対象者 都内において製造業を営んでいる中小企業者及び中小企業団体公社で実施する節電診断(あるいはクール・ネット東京の省エネ診断)を受診している中小企業者及び中小企業団体(製造業以外の方はご応募いただけません) 助成対象経費 要件に該当する工場において、下記の節電対策設備(付帯設備を含む)の購入および設置に係る経費
1. LED照明器具(既存の照明器具を交換する場合に限る)
2. デマンド監視装置
3. 進相コンデンサ
4. インバータ助成額 助成対象経費の1/2以内 (上限1500万円 下限額30万円)
太陽光発電と蓄電池の活用で効果が出やすくなる
デマンドコントロールシステムやデマンド監視による電力使用の効率化と併せて検討したいのが「太陽光発電と蓄電池」です。太陽光発電を活用すれば電力会社から購入する電力量そのものを減らせるため、より直接的な電気代削減に繋がりやすいです。
以下、太陽光発電と蓄電池を組み合わせてデマンド値を下げる方法を2つ紹介します。
ピークカット
画像引用元:エネチェンジBiz|電力のピークシフトとピークカットとは?
デマンドコントロールの仕組みを活かす手法として、ピークカットが注目されています。
ピークカットを行うには、太陽光発電と蓄電池の設備を利用します。
太陽光パネルで発電した電気を、自社で使用することで電力会社から電気を買う必要がなくなり、その分デマンド値を抑制できます。
ピークシフト
画像引用元:エネチェンジBiz|電力のピークシフトとピークカットとは?
昼間は夜間と比べて電気の需要量が多いため、一般的に電力会社の電気使用料金は昼間が割高、夜間が割安に設定されています。蓄電池を活用することで、夜間の割安な電気を購入して蓄電池に貯めておき、昼間に消費する電力の一部をまかなうことが可能です。
このように電力消費が増える昼間を避けて、朝や夜間に電力を消費する(貯める)ことを、ピークシフトといいます。
ピークシフトに寄って、デマンド値の上昇が抑えられます。
デマンドコントロールによるデマンドの可視化と制御に加えて、太陽光発電(ピークカット)と蓄電池(ピークシフト)を組み合わせることでより効果的なデマンド制御を行えますので、電気代を削減効果も高くなります。
複数のメリットが得られる太陽光発電
企業・法人が太陽光発電システムを導入し、発電した電気を自ら使用する「自家消費」は、おもに以下のようなメリットがあります。
- 電気代削減と今後の電気代上昇リスクの低減
- CO2排出量削減による企業価値向上
- 非常用電源としてBCP対策の強化
- 税制優遇が受けられる
脱炭素社会に向けた動きが強まるなか、コスト削減をしながら環境経営に取り組めます。けっして費用が安い設備投資ではありませんが、当社にて導入するお客さまの多くは8年前後で初期費用を回収し、その後も長期的に効果を得られる見込みです。
企業・法人向け太陽光発電の概要や導入メリットについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
2023年は太陽光発電と蓄電池に対する補助金が増加する見込み
政府は毎年、太陽光発電システムを対象とした補助金制度を設けています。
2022年8月に、2023年度補助金の概算要求時点の情報が公開され、経産省や環境省の補助金は対象条件に「蓄電池も導入すること」という記述が追加されています。
太陽光発電と蓄電池のセット導入を検討している企業の方は、動向を追っておくといいかもしれません。
まとめ
デマンドコントロールを導入することで、使用電力を見える化させ目標デマンド値を上回らないように制御することで、電気代の基本料金を下げることができます。
また、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた自家消費型太陽光発電によってピークカットやピークシフトを行うことで、さらなる電気代の抑制が望めます。
太陽光発電と蓄電池など再生可能エネルギー設備についても、国や各自治体から新しい補助金情報が出ておりますので、デマンドコントロール導入の際には合わせて検討してみるのも良いでしょう。
太陽光設置お任せ隊(運営:株式会社ハウスプロデュース)では、企業向けに太陽光発電に関するご相談を承っております。とくに、デマンドコントロールに取り組むためには、太陽光発電は必須と言ってもいいでしょう。
導入を検討されるお客さまには、電気使用量などお伝えいただければ無料で導入効果をシミュレーションいたします。太陽光発電にご興味がある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。