企業が事業所の屋根に太陽光パネルを設置し、自社で発電した電気を利用する「自家消費型太陽光発電」に注目が集まっています。
当社でも、電気代の削減やCO2の削減を目的として「自社の工場に太陽光パネルを設置したい」というご相談を、多数いただいております。
なかでも、工場のお客さまからは「どの程度の太陽光パネルが必要か?」「屋根の面積は十分か?」といったご相談を受ける機会が増えています。
そこで、今回の記事では、工場の屋根に太陽光パネルを設置する際に必要な屋根の面積の計算方法や、設置時の注意点などを詳しく解説します。
目次
太陽光発電の設置に必要な面積の考え方
工場の屋根に太陽光パネルを設置する際、必要な面積を計算する方法を説明します。
まずは、工場で消費される電力量に基づいて、太陽光発電による最大出力を算出することが必要です。
工場に必要な最大出力がわかれば、その出力を実現するために必要な太陽光パネルの枚数を計算し、そこから必要な屋根の面積を導き出します。
工場の屋根に必要な面積と太陽光パネル枚数を求める計算方法
日本経済国際共同研究センターの「工場の電力需要に関するアンケート調査」によると、従業員数が29人以下の小規模工場の最大需要電力は約100kWです。
今回は、この情報を基に、最大需要電力100kWの工場に必要な太陽光パネルの枚数と屋根の面積を計算します。
また、今回の計算では、
太陽光パネル1枚あたりの面積「約1.7㎡」
最大出力「0.35kW(350W)」
の製品を使用すると仮定します。
- 必要な太陽光パネル枚数の求め方
- 100kW(工場の最大需要電力) ÷ 0.35kW(パネル1枚の最大出力) = 約286枚(必要なパネル枚数)
- 必要な屋根面積の求め方
- 1.7㎡(パネル1枚の面積) ✕ 286枚(必要なパネル枚数) = 486㎡(必要な屋根面積)
上記の結果では、最大出力100kWの太陽光発電システムを屋根に設置するには、約486㎡の面積が必要になる計算となりました。
ただし、実際には太陽光パネル同士の間隔やメンテナンスのための作業スペースを確保する必要があるため、計算された面積(486㎡)の約2倍、つまり約1000㎡の屋根面積が必要になります。
工場の空き地に太陽光パネルを設置する際の必要な面積と発電量の目安
次に、敷地内の遊休地や空き地に太陽光パネルを設置する際に必要な面積について解説します。
敷地内の遊休地などに太陽光発電を設置する際は、一般に「野立て型」と呼ばれる設置方法が採用されます。
環境省の「太陽光発電(非住宅系)の導入ポテンシャル」によると、野立て型太陽光発電の設置には、1kWあたり約15㎡の面積が必要とされています。
これは、1㎡あたり0.0667kWの太陽光パネルを設置できるという計算に基づいています。
以下は、野立て型太陽光発電システムを設置する際の土地面積の目安です。
設備容量:10kW | 必要面積:約100〜150㎡ |
---|---|
設備容量:30kW | 必要面積:約300〜450㎡ |
設備容量:50kW | 必要面積:約500〜750㎡ |
設備容量:100kW | 必要面積:約1,000〜1,500㎡ |
この計算では、100kWの太陽光発電システムを土地に設置する場合、約1,000〜1,500㎡の敷地面積が必要です。
屋根への設置と比べて、太陽光パネルに影が入らないように距離を広く保つ必要があるため、遊休地ではより大きな面積が必要となります。
太陽光パネルの設置面積を確認する際の注意点
ここからは、太陽光パネルの設置面積を計算する際の注意点について触れます。
太陽光パネルは、さまざまなメーカーから多様な製品が販売されており、それぞれ性能やパネルのサイズが異なります。
工場に太陽光パネルを導入する際には、製品ごとの性能やサイズの把握が重要です。
例えば、2023年の産業用太陽光パネルの製品の一部を比較すると、以下のような違いがあります。
【2023年最新】産業用太陽光パネルの製品一覧
メーカー名 | 型番 | 小売希望価格 | 公称最大出力 | 外形寸法 | 質量 |
---|---|---|---|---|---|
Panasonic | VBM410FJ03N | 351,780円 / 枚 | 410W | H1,722/W1,134/D35mm | 21.5kg |
SOLAR FRONTIER | SFA375-120A | 公式非公開 | 375W | H1,763/W1,040/D35mm | 20.0kg |
Qセルズ | Q.PEAK DUO M-G11S | 公式非公開 | 415W | H1,722/W1,134/D30mm | 21.1kg |
ネクストエナジー | NER108M410B-MD | 公式非公開 | 410W | H1,722/W1,134/D30mm | 21.5kg |
上記以外にも産業用太陽光パネルを取り扱っているメーカーは多数あります。メーカーや製品によって、性能だけでなく保証内容なども異なります。
どのメーカーの製品も性能が拮抗しているため、選定が難しい場合は、直接メーカーへ問い合わせるか、施工業者に相談してみると良いでしょう。
屋根の形状や既存の設備の面積も計算する必要がある
一般的な工場は、陸屋根や緩やかな傾斜の屋根が多く、太陽光パネルの設置に適しているケースが多いです。
しかし、工場によっては、屋根の形状が起伏を持っていたり、屋上に換気扇やエアコンの室外機などの設備が設置されていたりすることがあります。
これらが障害物となり、太陽光パネルに影がかかる時間帯が発生し、発電量を著しく低下させてしまう可能性があります。
屋根に設置する場合は、これらの障害物も考慮したうえで検討することが重要です。
屋根の耐荷重も考慮する必要がある
屋根の耐荷重も重要な検討事項です。
とくに工場や倉庫などで大規模な太陽光発電を導入する場合、屋根にかかる負荷が増えるため、建物の耐荷重を超えないように太陽光パネルの枚数を計算する必要があります。
一般的な太陽光パネル1枚の重さは約15kgです。
例えば、70kWのシステムを屋根に設置する場合、約200枚のパネルが必要となり、約3,000kg(3トン)の負荷になります。
200枚 × 15kg = 3,000kg※1
- 実際の重量は架台なども重量に加算されます。参考としてご確認ください。
屋根の耐荷重を超えて太陽光パネルを設置すると、雨漏りや建物の耐震強度に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、太陽光発電システムの設置計画では、電気工事の知識だけでなく、建築分野のノウハウも必要です。
とくに、高圧以上の太陽光発電設備を設置する場合は、一級建築士などの専門家による建物の構造計算が求められます。
工場の屋根や遊休地以外の敷地で太陽光パネルを設置する方法
最近では、工場敷地内の屋根を使わず、駐車場スペースを活用する「ソーラーカーポート」という太陽光発電システムが注目されています。
とくに、下記のような課題を持っている工場や倉庫などでは、ソーラーカーポートは太陽光発電システム導入の有効な手段となります。
- 屋根や建物が老朽化していて耐久性に不安がある
- 屋根に設置した太陽光パネルを増やしたいが、追加できるスペースが無い
ソーラーカーポートに関する詳細な情報や導入事例、補助金については、下記のコラムで詳しく解説しています。
太陽光パネルを増設する際の注意点
太陽光発電をすでに設置している工場で、事業拡大などにより使用電力量が増加する場合、太陽光パネルの増設を検討するケースがあります。
増設は、空きスペースがあれば原則として可能ですが、以下の2点に注意する必要があります。
既存システムとの互換性
既存の太陽光発電システムと、新たに追加するパネルが互換性があるかを確認しましょう。
異なる種類のパネルやインバーターを組み合わせるとで、システムの効率が低下する可能性があります。
また、既存システムの容量や設計によっては、追加のパネルを接続できない場合もあります。
配置方法と建築規制
太陽光パネルを設置する際には、屋根の耐荷重を含む建築規制の確認が必要です。
また、新しい太陽光パネルを設置することで、既存の太陽光パネルに影が生じて発電効率が下がらないよう、配置は慎重に行う必要があります。
増設を考える際は、これらの点を考慮し、専門家や施工業者と充分に相談し、最適な計画を立てることが大切です。
さらに、新しい設備の導入コストや補助金制度の有無など、経済的な側面の検討も重要です。
工場の屋根・遊休地・駐車場を活用した太陽光発電の導入事例
株式会社ハウスプロデュースでは、工場や倉庫を含む事業所への自家消費型太陽光発電システムの導入をトータルでサポートしています。
今回は、当社が導入した事例の中から、工場の屋根・遊休地・駐車場を全て活用した太陽光発電システムの事例をご紹介します。
株式会社特殊金属エクセル(金属加工工場)
導入先 | 株式会社特殊金属エクセル 様 |
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都道府県 | 埼玉県 |
年間発電量 | 636,132 kwh |
太陽光パネル枚数 | 1,710枚(設備容量(DC):581.40kW) |
設置面積 | 約3,000㎡ |
- 製造コスト削減に加えて、早期の再エネ導入による脱炭素促進で業界リードを目指したい
- 当該施設の電気使用量を約10%削減し、年間で約1,000万円の電気代を節約
- 当該施設におけるCO2排出量を約10%削減し、年間で約300t-CO2の排出を減少
金属材料製工場(埼玉事業所・R&Dセンター)の屋根上・遊休地・駐車場の3エリア(約3,000㎡以上)に自家消費型太陽光発電を導入した事例です。
太陽光のクリーンエネルギー活用により、年間1,000万円の電気代削減に加えてCO2排出量300トンの削減が見込まれています。
太陽光発電は屋根工事と太陽光工事の専門家である当社にご相談ください
今回は、工場の屋根への太陽光パネル設置に必要な面積の計算方法と注意点についてご説明しました。
本記事で紹介した内容を踏まえて、業者とよく相談しながら太陽光発電システムの導入を進めることをおすすめします。
株式会社ハウスプロデュースは、工場だけでなく、オフィスビルや学校など、さまざまな施設への自家消費型太陽光発電システム導入において豊富な経験があります。
設立以来、屋根の修繕・リフォーム工事で築いた12,000件以上の実績と、6,500件を超える産業用太陽光発電システム導入のノウハウを活かし、お客様に安全で効率的な自家消費型太陽光発電システムの提案を行っています。
当社は以下のようなご提案・設計・施工は一切行いません。
- 経済合理性が見込めない場合での無理な提案
- 過剰なシステム容量での設計
- 無責任な外部への業務委託
- 引渡後にお客様が困るような設計・施工
上記のポリシーを厳守したうえでお客様に向き合いますので、まずはお気軽にお問い合わせください。