工場や倉庫において、光熱費削減や労働環境の改善を目的に遮熱・断熱対策を講じるケースが増加しています。
これらの建物は屋根の面積が大きいため、屋根の遮熱・断熱性を高める対策が効果的です。
遮熱・断熱といえば塗装やシートが浮かぶ方が多いと思いますが、じつは太陽光パネルを屋根に設置することでも有効なことをご存知でしょうか。
また、太陽光パネルは電気代削減やCO2排出削減など複数の効果を得られることでも注目されています。
本記事では、工場や倉庫が遮熱・断熱効果を高めるための方法や、太陽光発電との相性について解説していきます。
目次
遮熱と断熱の違い
遮熱効果とは
「遮熱」は、太陽光を反射させることで建物内に熱が入らないようにすることを指します。
太陽光は物体に当たると、エネルギーが熱に変換されます。そのため、日差しが強い日は気温異常に暑さを感じることもあるでしょう。
この太陽光を反射させることで、熱の量を少なくして暑さを抑えられます。遮熱対策は性質上、夏の暑さを抑制することに特化しており、冬の寒さ対策には繋がりません。
断熱効果とは
「断熱」は、熱の移動を抑えることを指します。
熱は温度が高い方から低い方へ移動する性質があるため、夏は「屋外の熱が屋内に移動する」ことで暑くなり、冬は「室内の熱が室外に逃げてしまう」ことで寒くなります。
断熱対策を施すことで、この熱移動を抑えて「夏は涼しく冬は暖かい」環境を保ってくれるようになります。
工場・倉庫における断熱対策のメリット
そもそも、工場・倉庫の屋根に断熱対策を施すことによって企業にはどのようなメリットがあるのか解説します。
従業員のモチベーション向上
一口に工場や倉庫といっても、施設内の環境は多様です。なかには、常に空調が整い快適に作業ができる工場もあるでしょう。
しかし、空調設備が整っていない工場・倉庫も存在します。とくに夏場は過酷な環境のなかで業務をしなければなりません。蒸し暑い環境のなかでは作業への集中力が長時間維持できず、従業員の業務効率や生産性の低下に繋がります。
そこで、工場・倉庫に断熱対策を施すことで夏でも快適な就業環境が維持できれば、従業員のモチベーションは向上し、業務効率の改善や生産性アップに繋がることが期待できます。
電気代などの経費削減になる
空調設備が整った工場・倉庫であっても、断熱対策が施されていないと外気温の影響を受けやすく、エアコンを入れても室温が下がりづらくなります。断熱性能の低い工場は空調効率が良いとはいえず、電気代増加の一因となっています。
一方、適切な断熱対策が施されている工場・倉庫では、素早く室温を調節でき快適な環境を維持できます。空調効率が大幅に改善され、電気代の節約に繋がります。
屋根材の耐久性が上がる
工場・倉庫の屋根に断熱対策を行うことで、屋根材の耐久性が向上し、直接的に太陽光・雨水・鳥のふんなどにさらされるリスクが減少します。
屋根・屋上は経年劣化や欠損によって雨水が侵入すると、鉄骨が錆びるなど建物の寿命が短くなるという懸念があります。仮に雨漏りするようなことがあれば、工場内の機器や倉庫内の物資に悪影響が及ぶ可能性も考えられます。
屋根・屋上に断熱対策を施すことで、耐久性を高めて上記のようなトラブルを回避しやすくなります。
製品ロスのリスクを低減
遮熱・断熱効果によって建物の温度変化を抑えることで、製品の品質に対するメリットも期待できます。
製品によっては、室温が高いことで品質が劣化するものもあります。室温の上昇を抑えることで、製品の劣化とロスを減らすことに繋がる可能性があります。
また、室温の上下動を抑え作業環境を整えれば、従業員の集中力が保たれてミスを防ぐという意味でもロスを減らすことに繋がります。
結露対策になる
冬場などは建物の気温が低下すると、壁や天井に結露が発生しやすくなります。
結露ができやすいと、カビや錆の原因となり、建物や製品にとって悪影響を及ぼす可能性があります。
建物の断熱性を高めれば、室温の変動を抑えられるので、結露の対策にもなります。
工場・倉庫における断熱対策の4つの方法
一口に断熱といっても、さまざまな種類・方法が存在します。今回は工場や倉庫の屋根に施すことが可能な断熱対策の方法を4つ紹介しましょう。
遮熱シート・断熱シート
比較的手軽にできる屋根の断熱対策としては、遮熱シートや断熱シートを貼り付ける方法があります。
一般的な屋根材は直射日光が当たると10%程度しか熱を反射せず、大半は放射熱として建物の内部に入ってきてしまいます。しかし、遮熱シートであれば90%以上の熱を反射させる製品もあるため、室内の気温上昇を抑えてくれます。
また、屋内に断熱シートを貼りつけることで、空調の冷気や暖気を外に放出しないよう防いでくれ、高い断熱効果が期待できます。遮熱シートや断熱シートは、屋根や天井、窓用のものなどさまざまな製品があるため、取り付け箇所に応じて施工できるのもメリットといえるでしょう。
断熱材
(画像引用:スレート屋根下施工|サーモバリア)
屋根用の断熱材とは、一般的に屋根と天井の間(屋根裏)に施工する素材であり、発泡プラスチックや繊維素材などが用いられるケースが多いです。工場の場合、そもそも屋根裏が存在せず屋根材がむき出しになっているケースもありますが、さまざまな工法で断熱材を施工できる業者も存在します。
また、断熱材は屋根からの放射熱を抑え室温を上昇しにくくするという役割以外にも、暖房による熱を外に逃がさない保温効果や結露の防止にも貢献します。特に冬の寒い時期など、暖房によって生じる結露を防ぐためにも断熱材は重要です。
遮熱塗料
(画像引用:水性屋根用遮熱塗料|アサヒペン)
遮熱シートや断熱材といった素材を貼りつけるのではなく、特殊な塗料を屋根材へ塗布し遮熱・断熱効果を実現する方法もあります。屋根用の塗料を塗布するだけのため見た目もすっきりとし、屋根そのものの防汚効果や防錆効果なども期待できます。
太陽光パネル
太陽光パネルを屋根に設置することで、屋根材が直射日光を受ける面積が減るため、一定の断熱効果が期待できます。太陽光パネルを設置する目的はあくまでも発電であり、断熱効果は付加的なメリットですが、エネルギーを自前で供給しながら断熱できるというのは魅力的といえるでしょう。
電気料金の大幅な削減に繋がるばかりではなく、脱炭素経営の促進やSDGsといった次世代型の企業経営にも繋がります。
工場に太陽光発電設備を導入するメリットについて、以下の記事でも解説しています。
工場・倉庫の屋根の断熱対策にかかる費用の目安
工場・倉庫の断熱対策にはさまざまな方法があることがわかりましたが、多くの方が気になるのはその費用ではないでしょうか。上記で紹介した種類ごとに、断熱対策にかかる費用の目安を紹介します。
遮熱シート・断熱シートのコスト
遮熱シートや断熱シートの素材そのものにかかるコストとしては、1平方メートルあたり500円から800円程度と比較的安価です。
ただし、これはあくまでも材料費のみであり、実際に施工する際は工事費が加算されることになります。工事費も含めたコストの目安としては、1平方メートルあたり2,500円から4,000円程度とされており、建物の形状や立地によっては別途足場の設置費などがかかる場合もあります。
断熱材のコスト
断熱材の施工にはさまざまな工法があり、天井の骨組みの間に隙間なく断熱材を敷き詰める必要があるため、熟練の技術を要します
1平方メートルあたりの平均的なコストは4,000円から8,000円程度とされていますが、工場の場合は天井が高く特殊な施工が必要になることも考えられ、これ以上のコストがかかる可能性もあります。
また、工場は一般住宅に比べて屋根の面積も広いため、断熱材の施工にあたっては数百万円、数千万円のコストがかかるケースも多いようです。
遮熱塗料のコスト
遮熱塗料の施工にかかるコストは、材料費も含めると1平方メートルあたり3,000円から6,000円程度が平均とされています。
断熱材の施工に比べると比較的コストは安い傾向にありますが、多くの塗料の耐用年数は10年から20年程度のため、定期的な塗り替え作業が必要です。
太陽光パネルのコスト
工場や倉庫の屋根へ太陽光パネルを設置する場合、設置容量に換算して1kWあたりの平均コストは25.3万円程度とされています。
たとえば、100kW程度の容量を設置できる中小規模の工場の場合、太陽光発電設備の設置コストは2,530万円、200kW程度の大規模な工場となると5,060万円程度の設置コストがかかることになります。
遮熱シートや断熱材、遮熱塗料などの施工費用に比べるとコストは高くなってしまいますが、太陽光発電には電気代そのものを削減できるというメリットがあることも事実です。
また、既にその他の断熱対策を施している場合でも太陽光パネルを設置できますので断熱性能がさらに高まります。自社で消費する電力を太陽光で賄いながら、断熱効果により空調設備の負荷も軽減できるため、相乗効果で電気代を削減することが可能です。
各種断熱対策の施工の流れ
では、ここまで紹介した工場屋根への断熱対策について、具体的にどのような流れで施工・設置を進めていくのか手順を追って紹介しましょう。
(製品によって施工方法や施工の流れは多少異なります)
遮熱シート・断熱シートの施工までの流れ
遮熱シートや断熱シートは、まずは屋根の表面に付着した汚れやホコリ、ゴミなどを高圧洗浄機で取り除き、十分に乾燥させます。
その後、シートを貼りつけるための特殊な両面テープや接着剤を屋根の表面に貼り付けまたは塗布し、屋根の形状に合わせてシートを貼り付けていきます。
次に、断熱効果を高めるために、シートの繋ぎ目や先端部分は屋根材が露出しないよう隙間なく貼り合わせ、細かい処理を施して完成となります。
断熱材の施工までの流れ
一般住宅の場合は天井板を取り外し、屋根と天井の間に断熱材を敷き詰めますが、工場の場合は天井がなく屋根材がむき出しの状態になっているケースも少なくありません。
そこで、屋根材の裏面に接着剤などを塗布し、その上からシート状の断熱材を貼りつける工法があります。なお、既存の断熱材が劣化し屋根から剥がれ落ちている場合には、古い断熱材をきれいに剥がした後で新たに貼り付けます。
一般住宅やオフィスと比べて高い場所に位置する屋根の場合、高所作業車やローリングタワーなどを持ち込み施工を行います。
遮熱塗料の施工までの流れ
屋根の表面に付着した汚れやホコリなどを高圧洗浄機で除去した後、十分に乾燥させます。屋根の塗膜が劣化しているケースは電動工具によって塗膜を完全に除去する「ケレン」とよばれる下地処理も行います。
その後、屋根の下地の上にサビ止め用の塗料を下塗りすることで、屋根材の耐久性を高めると同時に遮熱性の向上も期待できます。最後にサビ止め塗料の上から遮熱塗料を重ね塗りして完成です。
ちなみに、遮熱塗料は複数回重ね塗りをすることで屋根材との密着性が増し、屋根全体の塗装が鮮やかになるメリットもあります。
太陽光パネルの施工までの流れ
太陽光パネルを屋根へ設置する際には、設置箇所を決める墨出しという工程を行います。架台などの取り付け位置が決まったら、屋根材へドリルなどで穴を開け、専用の取り付け金具を固定します。この時、金具と穴の隙間から水が浸入しないよう、コーキングとよばれる処理を施し隙間を埋めます。
その後、太陽光パネルを固定するための架台を設置し、架台の上に太陽光パネルを設置します。パネルの取り付け角度によって発電効率が大きく変化するほか、反射光によって周辺住民に影響を与えることもあるため、専門業者へシミュレーションを依頼するのがおすすめです。
工場屋根の太陽光発電導入ご相談ください
太陽光設置お任せ隊を運営する「株式会社ハウスプロデュース」は、先述した「企業向け太陽光発電」の提案・設計・施工・アフターケアまで一貫してご相談いだけます。
工場屋根の断熱性を高めて省エネに繋がるほか、2022年度のように電気代が高騰しても、電気代の上昇を抑えられます。
当社はこれまで累計6,500件以上の太陽光発電システム導入に携わるなかで培ったノウハウを活かし、設置条件に合わせた最適な設計・安全性が高い施工を行います。
電気使用状況などをヒアリングしたうえで無料でお見積りを承りますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
断熱塗装も合わせてご提案いただけます
ハウスプロデュースでは、太陽光発電導入と合わせて工場の屋根や外壁の強化・断熱性工場に繋がる「断熱塗装」のご相談も承ります。 この断熱塗装では以下のような効果が得られます。
- 断熱性向上による室温低減
- 長期的な省エネ効果
- スレート屋根の強度回復
- 石綿の悲惨を抑制
- 外観を美しく回復
スレート屋根は強度的に太陽光パネルの設置が難しいですが、断熱塗装によって屋根の強度が上がり設置が可能になります(強度の劣化が著しい場合を除く)。
「工場と太陽光発電は相性が良いのに、スレート屋根の強度の面で導入できていない」という工場の方はぜひご相談ください。
まとめ|自社に合った工場・倉庫の断熱対策を検討しよう
工場・倉庫の屋根への断熱対策はさまざまな種類・方法があり、予算や設置場所に合わせて選ぶことができます。断熱対策といえば、天井や屋根裏への断熱材や断熱塗料の施工が定番ですが、太陽光パネルも断熱対策に有効であることは意外に感じた方も多いのではないでしょうか。
太陽光発電の導入は、断熱対策だけでなく、電気代の削減やBCP対策にも役立ち、企業にとってはメリットの大きい方法といえます。一般住宅とは異なり、工場・倉庫の屋根は面積も広くコストがかかるため、費用対効果を十分に比較しながら自社に合った方法を検討してみましょう。
太陽光設置お任せ隊(運営:株式会社ハウスプロデュース)は、記事内でご紹介した「企業向け太陽光発電」の提案・設計・施工を行っております。太陽光パネルによる断熱効果に加えて、電気代削減や脱炭素経営にも繋がり複合的なメリットが得られるため、製造業の経営者・責任者を中心に興味を持つ方が増えています。
ハウスプロデュースへのご相談では、簡易なヒアリングの後、設置することでどれくらいのメリットがあるのか、無料でごシミュレーションが可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。