「工場が暑くてしかたない」という悩みを抱えていませんか。
工場はその構造上、空気の流れが悪いことが多く、日本特有の高温多湿な天候と組み合わせると、非常に暑くなることがあります。
従業員の健康維持や生産性の向上のためにも、工場の暑さ対策は重要です。
この記事では、主に経営者や工場長、従業員の方々向けに、快適な工場環境を実現するための室温・暑さ対策と、それに役立つグッズや設備投資について紹介しています。ぜひ参考にしてください。
目次
「工場が暑い!」その理由とは?
工場内が暑くなる主な原因は、屋根と機械の関連性にあります。
長時間にわたる直射日光が屋根に当たり続けると、鉄やコンクリート製の屋根が熱くなり、その熱が徐々に室内の温度を上昇させます。
多くの工場では、熱が逃げる場所が少なく、室温が下がりにくい構造となっています。これが「工場内が暑くてしかたない」という状況を引き起こします。
さらに、製造機械が稼働し続けることで発生する熱も室温を上昇させます。また、物や人の出入りが多い工場では、扉が開けっ放しになることが多く、空調設備があっても最終的には外気温と同じような温度になることがあります。
なぜ工場の暑さ対策をすべきか
夏場における工場の室温は最大で45℃近くに達することもあり、このような環境下では従業員の体力消耗が激しく、集中力が低下し、生産効率が落ちることがあります。
暑さによって従業員が体調を崩すと、具合が悪くなって倒れたり、熱中症を発症してしまう恐れがあります。また、労災事故に繋がる可能性もあり、人手不足による通常運転の困難や製品の品質低下などのリスクも高まります。
そのため、工場運営においては、適切な暑さ対策や温度管理を行うことが非常に重要です。
生産性を高める工場の室温は何℃?
ダイキン工業の2005年の調査によると、人々が「快適だと思うオフィスの室温」の平均は25.1℃であることがわかりました。
また、兵庫県姫路市では2019年7月から8月にかけて、市役所の室温設定を28℃から25℃に下げた結果、職員1人あたりの月平均残業時間が約3時間減少しました。
この取り組みに関するアンケートでは、業務効率が「とても向上した」または「少し向上した」と答えた職員が全体の85%にのぼりました。
上記2つの調査は工場ではなくオフィスを対象としたものではありますが、室内温度は25℃前後にできれば、働きやすい環境を作り出すことができるといえます。
■参照元
(夏のオフィスの空気に関する調査結果(PDF.10ページ)|ダイキン工業)
(室温設定25度で 職員の8割強「効率上がった」|神戸新聞NEXT)
工場の暑さ対策(アイテム編)
工場の暑さ対策として、空調を強く運転したり、設備導入によって対処できればいいですが、コスト面やCO2排出による環境への負荷を考えるとそれは難しいこともあるでしょう。
そこで、まずは低コストでできる暑さ対策から始めてみましょう。
空調付き作業着
空調付き作業着は、腰や脇に小型ファンを装着した服のことを指します。
この小型ファンによって服内の空気の循環が促され、汗が乾きやすくなり、涼しさを感じることができます。
汗がすぐに蒸発することで、気化熱の原理により体温が下がります。
また、ファンの効果で蒸発した汗を含む空気は首元や袖口から排出されるため、汗が服の中にこもることはありません。
空調付き作業着は、発汗量の減少によって体力の消耗を抑え、作業効率を向上させる効果が期待できます。また、汗や服のにおい対策にも有効です。
ただし、注意点として、空調によって膨らんだ服が細かい作業を邪魔する可能性や、砂や埃が多い環境でファンがそれらを吸い込んで故障するリスクがあることが挙げられます。
冷却・冷感タオル
冷却・冷感タオルは、特別な繊維を使用しており、触れるだけで冷たさを感じることができるタオルです。水分を含ませて振ることで冷たくなるものや、保冷剤を入れるためのポケットが付いているものがあります。
保冷ベスト
保冷ベスト(アイスベスト)は、背中や脇のあたりに特別なポケットがあり、これに保冷剤を入れることで体を直接冷やすことができるベストです。保冷剤の冷却効果には時間の制限があるものの、保冷剤を交換できる環境があれば、暑さ対策として効果的です。
コンプレッションシャツ
コンプレッションシャツは、伸縮性の高い生地で作られ、体にぴったりとフィットし、適度な圧力をかけるタイプのシャツです。スポーツ選手が着用するものと似ています。
最初は慣れないかもしれませんが、コンプレッションシャツはストレッチ性が高く、動きを妨げることはありません。また、疲労回復効果や血行促進など、多くの利点があります。
暑さ対策の面では、汗を良く吸収し、蒸発しやすいため、肌のべたつきや不快感を軽減し、快適さを保ちやすくなります。
工場の暑さ対策(行動編)
工場の暑さ対策は、機器が導入できれば早いですが、費用がかかります。まずは水分補給や休憩など基本的なところを見直すことも大切です。
こまめな水分・塩分補給
根本的な暑さ対策といえますが、可能な限り自由に水分・塩分補給ができる環境を整えることが大切です。水分・塩分を適度に補給することで、身体が汗をかいて体温調節するための準備ができます。
休憩スペースを設置
可能であれば、従業員が休憩を適宜取れるスペースを確保できると良いでしょう。休憩スペースは作業場から近くにあり、水分・塩分を取れる飲み物や飴を常備し、空調が効いていれば理想です。
工場の暑さ対策(空調設備編)
グッズによる暑さ対策だけでは限界があります。費用が必要とはいえ、より快適な環境のために空調設備による対策を検討することも1つの手です。
スポットクーラー
(画像引用元:クリスプ一体形 床置スリム・直吹形|ダイキン工業株式会社)
スポットクーラーは、空気を放出する方向を調節できるタイプがあり、冷たい風を当てることでピンポイントで温度を下げられます。
作業状況に合わせて移動できるほか、設置のために工事を行う必要がないため、エアコンを取り付けるスペースが無い場合でも導入しやすいのが魅力です。 また、スポットクーラーは貸し出しをしている業者があるため、夏場だけレンタルする方法もあります。
ある程度作業をするスペースが決まっていて、その場所で過ごす時間が長いのであれば、室内全体を空調する機器よりスポットクーラーが効果的なケースもあります。
ビニールカーテン
(画像引用元:工場の暑さ対策について|株式会社タカダ創美)
スポット空調の設置が難しい場合は、ビニールカーテンで空調効率を高めることも1つの方法です。
同じエアコンでも部屋全体を空調するよりは、仕切られた空間のみを空調するほうが、空調効率や電気代削減の面でメリットがあります。クーラーなどの設備より費用が少ないため、すぐに導入しやすい方法です。
自動空調システム
空調設備を一新するには大きな費用がかかるほか、温度管理を人の手で行うと、つい温度設定を下げすぎてしまう可能性があります。
代案としては、現在使用している空調設備に後付けで自動空調システムを取り付ける方法があります。設備を一新するよりも費用が安く済むほか、稼働時は最適な温度を保ちやすくしてくれます。
工場の暑さ対策(屋根・壁面編)
空調ではなく、工場の建物自体に断熱性を持たせることも有効です。断熱性を高めることで、室温の上昇を抑えられます。
屋根にスプリンクラーを設置する
工場の室温が高くなる大きな要因は、屋根が直射日光で熱されることです。そこで、屋根にスプリンクラーを設置し散水することで効果的に冷却できます。
屋根の上で水を噴射して、屋根についた水が蒸発して気体になる際、状態変化に必要な熱を吸収するため、水がついた部分が涼しくなります。
イメージとしては玄関先でする打ち水が近いでしょう。エネルギー消費が少ないうえに、数℃の室内温度低下が期待できます。
注意点としては、稼働している限り気代や水道代がかかることと、水分をまき続けることで屋根の劣化リスクがあることです。屋根の材質やメンテナンスコストを考慮して導入を検討しましょう。
断熱シート・断熱塗装を行う
屋根や壁に遮熱・断熱効果のある塗装やシートを用いることで、太陽光によって発生した熱が屋内に伝わることを防ぎ、外気温が室内温度に与える影響を軽減する方法です。
イメージとしては、断熱シートは夏場に自動車の窓に掛けるシートが近いでしょう。断熱塗装は、太陽光に含まれる赤外線を反射し、屋根が熱を吸収することを抑制します。
ほかの設備よりは比較的コストが低いため、導入を検討しやすいです。ただし、初期費用が比較的安いですが、10年から20年で張替えや塗替えが発生し、ランニングコストが発生する可能性は考慮しておくべきでしょう。
屋上や駐車場などの緑化を行う
屋上がコンクリート面の平らなタイプであれば、緑化も有効です。緑化によって、植物が光合成のために太陽光のエネルギーを吸収したり、蒸散によって気化熱を消費したりします。
これにより、室内温度が2℃から3℃低下、エアコンの消費電力も2割から3割の削減が見込めるといわれています。
屋根に太陽光パネルを設置し遮熱性を高める
工場の太陽光発電といえば、電気代やCO2削減の効果のイメージがあると思いますが、じつは遮熱・断熱効果を高めて暑さ対策効果も発揮します。
屋根に太陽光パネルがあることで、屋根に直接日光が当たらないようになります。
直射日光による屋内の温度上昇を3℃から5℃抑える遮熱効果があるといわれています。
また、室内温度が下がることで、空調負荷も軽減されるため、電気代の節約に繋がります。
夏場の空調設備の設定温度を1℃上げれば、約13%の消費電力削減に繋がるといわれています。
実際に屋根に太陽光パネルを設置したことで、夏場の電力ピーク需要を30kWも下げる効果(※1)があったという事例もあります。
(※1)参照元:かほく市の屋根上太陽光、パネルの遮熱効果で「省エネ」|日経クロステック
工場の太陽光発電はさまざまなメリットが得られる
また、太陽光発電は、断熱効果以外にもさまざまなメリットがあることが、ほかにはない魅力です。
- 太陽光パネルで発電した電気を自社で使用し、さらに電気代削減できる
- クリーンエネルギーの使用により、自社の脱炭素化やSDGsの取り組みとしてアピールできる
- 省エネ法・温対法の規制を受けないための対策になる
- 設備費用を購入年度に一括で計上(即時償却)できる税制がある
- 補助金制度が豊富なほか、初期費用0円で導入できる制度もある
国の脱炭素化が進むなか、エネルギ―消費量・CO2排出量が多い工場は、ほかの業界より省エネ法・温対法などの規制対象として厳しい目で見られています。
また、2022年は電気代の高騰が続き、電気使用量が多い工場では大幅な電気代上昇によってコストが増加しています。
そのため、脱炭素経営をしながらコスト削減になる太陽光発電に注目が集まっており、当社・ハウスプロデュースも工場の経営者・役員の方から多数のお問い合わせをいただいております。
ハウスプロデュースによる工場への太陽光発電設置事例
太陽光設置お任せ隊を運営している「株式会社ハウスプロデュース」での導入事例をご紹介します。
高品質な金属材料を提供し続けている「株式会社特殊金属エクセル」様には、金属材料製工場の屋根上・遊休地・駐車場の3エリアに太陽光発電設備を設置いたしました。運用後は年間1,000万円の経費削減に加えて、年間CO2排出量300トンの削減が見込まれています。
また、埼玉県で電子部品を中心に製造する工場様では、太陽光パネルで工場の温度が3℃から5℃下げられる見込みであることに注目いただきました。さらに脱炭素経営や電気代削減に繋がることが後押しし、導入を決定されました。
まとめ
工場の暑さ対策には、グッズや行動で行うものから設備導入によって行うものもあります。設備による対策には費用がかかるものもありますが、空調負荷軽減による電気代削減や、従業員の生産性アップにより長い目でみれば投資費用以上のメリットが得られるでしょう。
自社の状況や、従業員が夏場の労働環境をどう感じているかなどを踏まえ、暑さ対策を検討してみてはいかがでしょうか。
ハウスプロデュースがおすすめしている「企業向け太陽光発電」については、以下の記事でも詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。