事業所の屋根に太陽光発電設備を導入し、電気代削減や環境経営に向けて舵を切る企業の事例を聞くことが増えました。一方、自社屋根や敷地内に発電設備を導入できない場合、遊休地に発電設備を設置して自社に電気を送る方法があることをご存知でしょうか。
この記事では、自社に太陽光発電設備を導入できない企業・経営者に向けて、遊休地に設置するメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
目次
遊休地の野立て太陽光から事業所へ電力を送る方法
太陽光発電を導入する場合、設置場所は基本的に事業所の建物の屋根・空き地・駐車場のいずれかとなります。
屋根の形状・広さ・耐久性によっては、自社の建物に太陽光発電設備を設置することが難しい場合があります。
その場合は、「自己託送」といい、遠隔の遊休地の太陽光発電設備から事業所に電力を送る方法があります。
既存の電力系統を使用するため、発電設備から複数の事業所へ送電することも可能です。
(※電力系統:発電設備から家庭や企業に電気を送るための設備)
遊休地の野立て太陽光発電も自家消費が注目されている
太陽光発電を遊休地に設置するとなると、投資用のイメージを持つ方もいるかもしれませんが、2020年以降は発電した電気を建物で使用する「自家消費」が主流になっています。
その背景を解説していきます。
FITの条件が変わり、自家消費重視になっている
FIT(固定価格買取制度)が開始した2012年からは、太陽光発電の売電単価が高かったこともあり、野立ての投資用太陽光発電の導入が広まりました。
しかし、2020年にFITが改正され、投資向けでポピュラーだった低圧(出力10kW以上50kW未満)の太陽光発電において、以下の条件が追加されました。
- 発電した電気のうち30%以上を自家消費すること
- 停電時に自立運転できる設備を取り付けること
これにより、投資用太陽光で普及していた規模の発電所で全量売電ができなくなったため、実質的にFITを活用した投資用太陽光発電は減少していくことになりました。
太陽光で発電した電気を売るより使う方がお得な状況になっている
FITは10kW以上50kW未満の区分で全量売電ができなくなったほか、年々売電価格が低下傾向が続いています。
一方で電気料金は高騰傾向が続いており、とくに2022年は化石燃料の価格高騰に起因する電気代の上昇が社会的な問題となりました。
大ざっぱな言い方ですが、いまは「10円で電気を売るより、20円で買うはずだった電気を太陽光発電によって無料で賄う」方がお得な状況となっています。
このような社会的な状況もあり、発電した電気を自ら使用する自家消費型太陽光発電に注目が集まっています。
脱炭素化の流れが加速している
太陽光発電は、発電の際にCO2を排出しません。そのため、企業が太陽光発電で作った電気を自家消費した分だけ、電力会社が火力発電によって供給する電気の購入量を削減できます。
つまり、自家消費型太陽光発電が普及することで脱炭素化が進むのです。政府も自家消費向けの補助金制度を厚くするなど、自家消費への移行を促しています。
また、RE100に加入するような大手企業を中心に、取引先にも脱炭素の取り組みを求める動きが徐々に出ているため、中小企業が脱炭素経営に取り組むために太陽光発電を導入するケースが増加しています。
遊休地に太陽光発電を設置するメリット
買い手が見つからない土地を有効活用できる
遊休地への太陽光発電の導入が進めば、買い手がつかない土地の活用化が期待できます。
田舎や郊外の土地・造成が必要な土地・荒れてしまった農地など、一般的な不動産業者ではなかなか買い手が見つからない土地でも、日光さえ当たれば太陽光発電用地として活用できることがあります。
太陽光発電設備を設置できない事業所でも導入できる
屋根の状態や形状によっては自社に太陽光発電設備を導入できない場合があります。自社への導入が難しくなる事例として多い条件は以下です。
- 屋根の設置スペースが足りない(150坪以上が望ましい)
- 新耐震基準に満たない(1981年6月以前の建築物)
- 建物の高さが16メートルを超える(施工時の安全確保のため)
- 屋根の形状が合わない(スレート屋根など)
太陽光発電の導入をあきらめていた事業所でも、遊休地に設備を設置する自己託送なら導入できる可能性があります。
遊休地に太陽光発電を設置するデメリット
広い土地が必要
敷地外の遊休地への太陽光発電の導入では、高圧以上の設備を設置する必要があるため、広い土地が必要になります。
高圧のなかでも小さめの100kW規模の発電設備を建設する場合でも、土地は400坪以上の広さが必要になります。さらに、土地を自社名義で持っていない場合は、借りるか購入するという金銭的・時間的なコストもかかります。
高圧の発電設備に限られる
2021年1月現在では、自己託送を行う場合は高圧以上の設備を設置する必要があります。 自己託送では、遠隔地で発電した電力を自社まで送る過程で、電力が減少していきます。低圧規模の発電設備では電圧が弱く、離れた自社まで電力を送る力が足りなくなることがあるため、自己託送は高圧以上を対象としています。
つまり、高圧以上の電力を使用するような企業でなければ自己託送も相性が良くないといえます。
送電する電力量を契約時に決めておく必要がある
自己託送では、「30分ごとに送る電力量」をあらかじめ設定する必要があります。これは、電力の需要と供給を一致させる「同時同量」の原則に基づいています。
たとえば、自己託送を行う企業が急に大量の電力を流したり止めたりすると、同時同量の原則が崩れ、電力の供給が不安定になったり、停電が起きたりするリスクがあります。そのため、送電する電力量を事前に設定するのです。
また、設定した30分ごとの電力量と実際の電力量が一致しない場合、自己託送を行う企業はペナルティとして「インバランス料金」を支払わなくてはなりません。ちなみに、このインバランス料金の設定は電力会社ごとに異なるため、事前に確認しておきましょう。
事業所へ直接送電できない
自己託送による太陽光発電では、事業所へ直接送電できないデメリットがあります。 自社に設備を設置している場合は、系統を挟まず直接電気を送れるため、発電した電力を効率良く使えるほか、停電時でも電気が供給されます。
一方、自己託送では系統を挟むため、送電の過程で電力量が減少するほか、系統に不具合が生じた場合は発電設備からの電気が送られてきません。
太陽光発電に向いている遊休地の特徴
日当たりがよい
太陽光発電は、文字どおり太陽光がエネルギー源です。発電設備を設置する際には、日当たりのよさに重点を置いて場所を探しましょう。
年間の日射量は地域ごとに異なるため、日射量が豊富な地域の遊休地に設置すれば、より発電量を稼げるでしょう。
また、発電設備の周りの建物・木・電柱などの障害物で影が入らないことも大切なポイントです。せっかく晴れていても、太陽光パネルに影が差すと発電量が低下してしまいます。
平らな土地である
太陽光発電設備を設置する遊休地は、傾斜がなく平らな土地のほうが向いています。
日本では、太陽光パネルの角度は約30度が発電効率が高いといわれているため、傾斜のある遊休地に設置すると発電量が増加しそうに思えます。
しかし、傾斜のある土地に太陽光パネルを設置する場合、土地の造成・木の伐採・安定性を高めるための補強工事などで余計に費用がかさむ場合があります。また、土砂崩れのリスクも高まります。
近くに電柱がある
太陽光発電設備の設置では、設備に一番近い電柱に電線を繋ぐ作業があり、この費用は発電事業者(自社)の負担となります。
また、近くに電柱がない場合は、電柱を新たに設置する必要があり、その費用も事業者の負担となります。そのため、近くに電柱があると設置にかかる費用を抑えられます。
遊休地の野立て太陽光発電の導入は当社にご相談ください
当社ハウスプロデュースは、これまで累計6,500件以上の太陽光発電の施工実績を積んでおり、屋根上だけでなく野立て太陽光発電の導入も得意としております。
また、提案・設計・施工・アフターフォローまで1社完結でサポートできる体制を構築し、それぞれの分野のプロが社内に在籍しておりますので、スピーディで品質が高い発電所を提供いたします。
シミュレーションの結果、お客さまにとって経済的メリットが見込めない場合の無理な提案は致しませんので、自家消費型太陽光発電にご興味がある方はお気軽に問い合わせください。
当社の遊休地への導入事例
「株式会社特殊金属エクセル」様からご相談いただいた当初、工場での電力消費を賄うため屋根上に自家消費型太陽光発電を導入を提案しておりました。
さらに、シミュレーションの段階で工場の消費電力量が大きいことから、屋根上とカーポートに加えて遊休地に太陽光パネルを設置することで、発電量を確保し自家消費率を高めるご提案をさせていただきました。
これにより、より効率的に電気代を削減できる自家消費型太陽光発電設備の導入が実現しました。
まとめ
太陽光発電と遊休地を組み合わせる「自己託送」は、まだ世に広まっているとはいえません。しかし、脱炭素社会に向けた世界的な動きのなか、環境経営への入り口として導入が増えていくことは間違いないでしょう。
太陽光発電を自己託送で検討する時は、今回ご紹介した相性のよい遊休地の条件をぜひ参考にしてください。
太陽光設置お任せ隊(運営:株式会社ハウスプロデュース)では、企業向けに太陽光発電に関するご相談を承っております。導入を検討されるお客さまには、電気使用量などお伝えいただければ無料で導入効果をシミュレーションいたします。太陽光発電にご興味がある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。