【2023年6月電気代高騰】値上がりが続く要因と企業が行うべき対策
2023年6月1日から大手電力会社7社より電気代の値上げが実施されます。
電力会社の値上げによって標準的な家庭では、2022年11月と比較して実質的14%から42%までの電気代が値上げすると見込まれています。もちろん、家庭よりも多くの電力を必要とする法人に関しても電気代の負担はさらに増すことになります。
今回の記事では、2023年6月から実施される電力会社の電気代値上げに関する内容に加えて、そもそも電気代が高騰している理由、家庭や企業が取るべき打開策について解説します。
- 2023年6月に電気代はどれくらい値上がりするのか?
- 2022年では電気代がどれくらい値上がりしていたのか?
- 電気料金が値上がりしている原因
- 電気代高騰はいつまで?(2023年の見通し含めて解説)
- 電気代高騰への対策
目次
【2023年6月】大手電力会社が電気代値上げを実施
まずは、現在多くのニュースでも取り合えられている2023年6月1日から実施される「大手電力会社の電気料金の値上げ」の内容について概要をお伝えします。
経済産業省資源エネルギー庁の「電気料金の改定について(2023年6月実施)」によれば、今回の値上げの大きな要因は「ウクライナ侵攻に伴う燃料価格高騰や円安の影響などを受け、大手電力7社から料金改定(値上げ)の申請があり、厳格な審査を行いました。」とされています。
すでに2022年11月時点で大手電力会社からの電気代値上げの申請は行われており、東北電力・北陸電力・中国電力・四国電力・沖縄電力の5社は4月1日から実施されており、2023年6月1日から東京電力と北海道電力の2社に関しても電気代値上げが実施されます。
今回の電気代値上げの対象とされるの大手電力会社の規制料金です。そのため、電力自由化後に契約を変更していない家庭や法人が該当します。
大手電力会社7社の電気代値上げ率

実際に2023年6月1日から電気代がどのくらい上がるのか?について解説します。
経済産業省の公開する資料「標準的なご家庭における電気料金の試算結果(上図)」では、2022年11月の電気代と比べて14%から最大42%までの電気代値上げが許容されています。
ただし、2023年2月分(1月使用分)より施行されている「国による電気・ガス料金負担の激変緩和措置」による電気代の値引きを考慮すると、、2023年2年から10月分電気代(1 月~9月使用分)に関しては、ロシアによるウクライナ侵攻前の2022年2月の水準を下回るか同等の水準とされています。
また、関西電力・九州電力については、「原子力発電所の稼働が比較的順調で他の電力会社よりは経営への影響が少ないこと」や、「値上げを行う新電力との競争力を高める狙いがあること」という理由から電気代の値上げは行われておりません。
2023年までに電気代はどれくらい値上がりした?
電気代の高騰が始まった2022年2月から2023年1月にかけて「従量電灯」「低圧電力」「高圧電力」「特別高圧電力」で実際にどのくらい電気代が値上げしているのかをまとめてみました。

電力種別 | 電気代値上げ率 | 2022年2月 | 2023年1月 |
---|---|---|---|
従量電灯 | 161%(前年度比138%上昇) | 19.43円/kWh | 31.25円/kWh |
低圧電力 | 57%(前年度比130%上昇) | 20.1円/kWh | 31.55円/kWh |
高圧電力 | 227%(前年度比174%上昇) | 12.09円/kWh | 27.49円/kWh |
特別高圧電力 | 247%(前年度比186%上昇) | 9.65円/kWh | 23.88円/kWh |
2021年3月から電力区分を問わず電気代の値上がりが続いていましたが、2022年11月をピークに従量電灯・低圧電力・高圧電力の電気代が20円/kWh前後に落ち着いてきています。
この直近の値下がりについては、天然ガスや石炭などの燃料価格と為替市場の円安が落ち着いてきたことに加えて、再エネ賦課金の値下がりなどが要因として挙げられます。
電気料金の値上がりが起きている「3つの原因」
昨今の電気料金の値上がりが起きているおもな3つの要因は以下のとおりです。
- 燃料価格の高騰
- 国内の電力供給不足
- 再エネ賦課金の単価上昇
1.燃料価格の高騰
電気料金の高騰に大きな影響を与えているのが、天然ガス(LNG)や石炭の「燃料価格の高騰」です。
天然ガスの価格の推移
2021年7月から2022年6月までの、日本における為替を考慮した天然ガス価格推移(円/mmbtu)をみていきます。
年月 | 天然ガス価格(円/mmbtu) |
---|---|
2021年7月 | 1,081 |
2021年8月 | 1,162 |
2021年9月 | 1,528 |
2021年10月 | 1,399 |
2021年11月 | 1,457 |
2021年12月 | 1,454 |
2022年1月 | 1,788 |
2022年2月 | 1,721 |
2022年3月 | 2,137 |
2022年4月 | 2,165 |
2022年5月 | 2,128 |
2022年6月 | 2,285 |
(参考:新電力ネット|天然ガス価格の推移)
天然ガスの価格は、2021年9月に急上昇して以来、全体でみれば価格の上昇が続いています。
石炭の価格推移
20021年7月から2022年6月までの、南アフリカにおける石炭価格(為替考慮)の推移(円/kg)をみていきます。
年月 | 石炭価格(円/kg) |
---|---|
2021年7月 | 13.49 |
2021年8月 | 15.15 |
2021年9月 | 16.09 |
2021年10月 | 22.58 |
2021年11月 | 14.61 |
2021年12月 | 16.23 |
2022年1月 | 19.35 |
2022年2月 | 22.63 |
2022年3月 | 34.89 |
2022年4月 | 38.06 |
2022年5月 | 36.06 |
2022年6月 | 38.13 |
(参考:新電力ネット|石炭価格の推移)
石炭の価格は、2021年10月に急上昇したあと、11月にいったん低下しましたが、その後はまた上昇が続いています。1年間で、1kgあたりの単価が約3倍に上昇していることがわかります。
石炭や天然ガス(LNG)の価格が電気料金に影響する理由
2020年の日本の電源構成は以下のとおりです。
- 火力発電・・・76.3%
- 再生可能エネルギー発電・・・19.8%
- 原子力発電・・・3.9%
さらに、火力発電に使用する燃料の内訳は以下のとおりです。
- 天然ガス(LNG)・・・51.1%
- 石炭・・・40.6%
- 石油・・・8.3%
このように、日本は主力の火力発電の燃料のうち約90%を天然ガス(LNG)と石炭で賄っています。
これだけ天然ガス(LNG)と石炭への依存度が高い状況では、これらの燃料の価格高騰は電気料金の上昇に大きく影響します。
石炭や天然ガスの価格が高騰している原因は?
- 新型コロナウイルスの影響
- 天然ガスの需要増加による価格上昇
- ウクライナ情勢の影響
- 円安の影響
01.新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界的に経済活動が停滞しました。その流れで、2020年4月には化石燃料の価格が一時的に下落しています。
徐々に経済活動が回復したものの、今度は化石燃料の需要増加に対して供給が追いつかない状況となりました。これにより、需給バランスが崩れて価格高騰に繋がりました。
02.天然ガスの需要増加による価格上昇
天然ガス(LNG)は、他の化石燃料に比べるとCO2排出が少ないのが特徴です。
世界的に脱炭素が叫ばれるなか、従来の石炭や石油から天然ガスへ切り替える動きがみられたため、天然ガスの需要が増加し、価格の上昇に繋がっています。
03.ウクライナ情勢の影響
ロシアによるウクライナ侵攻をうけ、EUやアメリカが経済制裁を行なっています。
ロシアは石油・石炭・天然ガスのいずれの輸出額においても世界上位の国であったため、ロシアから化石燃料の輸出が制限されたことで、価格高騰に繋がっています。
04.円安の影響
2022年度は、円安も石炭や天然ガスの輸入価格高騰に影響しています。
USドル / 円の為替レートにおいて、2021年6月は「110.1USドル / 円」でしたが、2022年6月は「133.9USドル / 円」まで上昇しています。
このように、複数の原因が重なって、石炭と天然ガス(LNG)の価格が高騰しており、その影響で電気料金が上昇しています。
2.日本国内の電力供給不足
(画像引用元:資源エネルギー庁|エネルギー白書2022・第一章 国内エネルギー動向(PDF.33ページ)) ![]()
日本国内の電力供給量をみると、2010年を境に減少していることがわかります。
なぜ国内の電力供給量が低下傾向なのか、その原因を挙げていきます。
原子力発電の停止による影響
2011年の東日本大震災のあと、原子力発電の停止が相次ぎました。
再稼働している原子力発電所もありますが、日本の発電全体に占める原子力発電所の割合が多くなっているなかで大半が停止したため、全体の電力供給にも影響を与えました。
ちなみに、2010年は日本の発電全体の25%を占めていた原子力発電所は、2020年時点では3.9%まで低下しています。
火力発電の縮小
原子力発電所だけでなく、火力発電所も規模を縮小しています。
原子力発電所が減少しているにも関わらず、火力発電まで減少している理由はおもに以下の2つがあります。
- 古い火力発電所の停止
- 再生可能エネルギーへの転換
古い火力発電所の停止
2016年の電力自由化によって、多くの小売電気事業者が参入しました。
これにより、電気料金の競争が激化し、大手電力会社は古い火力発電所は採算が合わないとして停止化を進めました。
再生可能エネルギーへの転換
世界的に脱炭素化の風潮が広がるなかで、CO2排出が少ない再生可能エネルギーへの転換の動きが進んでいることも、火力発電所の縮小の要因の1つです。
電力の供給不足が電気料金上昇の原因に
ここまで紹介したような要因によって、火力発電所や原子力発電所が縮小したことで、全体的な電力の供給が減少しています。
電力の需要が減少しているわけではないので、需要と供給のバランスがとれず、電気料金の上昇に繋がっています。
3.再エネ賦課金の上昇
再エネ賦課金の上昇も、電気料金の値上がりに繋がっています。
再エネ賦課金とは
再エネの普及を目指すために、政府は太陽光発電など再生可能エネルギーで作られた電気を電力会社が買い取る「FIT(固定価格買取制度)」を実施しました。
再エネ賦課金は、再エネ由来の電気を電力会社が買い取るための費用として、電気の利用者(一般家庭や企業)が電気料金の一部として負担している料金です。
再エネ賦課金の単価の推移

2010年代はFITを利用した産業用太陽光発電が急速に普及しました。
再エネ賦課金の単価は、2012年は0.22円 / kWhでしたが、2022年には3.45円 / kWhまで上昇しています。
単価でみれば大きな差ではないようにみえますが、とくに大量の電気を使う企業では、再エネ賦課金だけでこの10年間のうちに数十万円から数百万円の上昇に繋がっているところもあるでしょう。
この再エネ賦課金の値上がりも、電気料金の上昇の一因となっています。
電気料金の高騰はいつまで? 2023年6月以降の電気代推移を予測
電気料金の上昇がいつまで続くのかはわかりません。しかし「この先もしばらく値上がり傾向は続く」可能性は十分に考えられます。
先ほど紹介した「電気料金の値上がりの3つの原因」について、以下のような見方ができるためです。
- 石炭や天然ガス(LNG)の価格高騰 ウクライナ情勢が長期化する可能性があるほか、天然ガスの受給バランスが取れない状況や円安も続く可能性が高い。
- 電力の供給不足 休止している火力発電の再開がされるかどうかは不透明であり、また原発の再開には慎重な議論が必要である。
- 再エネ賦課金の単価上昇 再エネ賦課金は2030年までは上昇することが確実視されている。
また、2023年の電気料金に関する情報がいくつか出ており、それを踏まえると以下のような流れになると予想できます。
- 低圧・高圧
-
4月〜9月:2022年12月と比較して値下がり
10月〜:2022年12月と比較して値上がり
- 特別高圧
-
4月〜9月:2022年12月と同等か微増
10月〜:2022年12月と比べて値上がり
上記の流れが想定される理由を解説していきます。
2023年9月までは電気代が一時的に下がる見込み
2022年12月まで電気料金は値上がりし続けてきましたが、政府の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が実行に移されました。これにより、2023年1月から9月まで、燃料費調整額が下記のように値引きされます。
- 【低圧契約(おもに家庭)】値引き単価:7円 / kWh(9月のみ3.5円 / kWh)
- 【高圧契約(おもに企業)】値引き単価:3.5円 / kWh(9月のみ1.8円 / kWh)
引用元:電気・ガス価格激変緩和対策事業|経済産業省 資源エネルギー庁 ![]()
約2年間上がり続けてきた電気料金ですが、2023年に入ってようやく一旦落ち着くことになりました。ただし、特別高圧は対象ではないため、この制作による電気料金の値下がりは見込めません。
注意点としては、政府の補助は「2023年1月使用分から9月使用分まで」と期間が定められておりますので、2023年10月以降は再び電気代が値上がりする可能性が高いでしょう。。
2023年4月から「託送料金」の値上げも
上記見出しで紹介した「規制料金」や「電力量料金」のほかにも、値上げのニュースが報道されています。
2023年2月24日、大手電力会社のうち東京電力・関西電力・中部電力・北陸電力・九州電力の5社が、送電網の利用料金にあたる「託送料金」の値上げを行うことを発表しました。
託送料金の値上げ幅はエリアごとに異なり、一般的な家庭において数十円から数百円の値上げになる見込みです。また、2月時点で公表していない電力会社も、値上げを発表する可能性があります。
(参照元:東京電力など5社が値上げ 4月分の電気料金|日本経済新聞)
ここまでご紹介したように、家庭・企業ともに電気料金は今後も値上がり傾向が続く可能性が高いため、高い光熱費に悩まされないために対策を打っていく必要があります。
2023年度以降の大手電力会社の動向
大手電力会社では、依然として「燃料費調整額」の単価上昇がみられます。
大手電力会社は、消費者の負担が大きくなりすぎないよう、燃料費調整額に上限を設けています。しかし、上限を超えた分は電力会社の負担となるため、燃料費調整額の上限を超えた状態が続いてしまうと、電力会社の負担は増え続けていきます。
燃料価格の上昇の影響で、上限金額を超えてしまう見込みの大手電力会社が複数出てきています。
そのため、電力会社によっては燃料費調整額の上限を撤廃する動きが出てきています。
四国電力は、高圧・特別高圧の新規契約分に関して、2022年6月分の料金から上限額設定を撤廃しています。また、九州電力や東北電力でも上限撤廃の動きが出ています。
このように、各電力会社において、燃料費調整額の高騰が課題となっています。
(参考:日本経済新聞|東北電力、燃調制度の上限撤廃 今期最終赤字1800億円に)
新電力は新規受付停止や撤退が続く可能性
新電力のサービスは、2023年も厳しい状況が続く可能性があります。
2023年1月時点では、2022年11月より既に2割が事業停止していて、サービス提供中の新電力でも新規受付停止や電気料金の値上げといった措置が実行されています。
理由は、大手電力会社と同じくウクライナ侵攻などによる燃料調達コストの高騰と卸電力取引市場の取引価格値上げなどの影響を受けているためです。
万が一、契約している新電力の事業撤退や倒産によりサービスの提供が止まった場合は、供給停止期日までに別の電力会社と契約しておけば電力の供給を継続してもらえます。
電気代高騰に対策!注目を浴びる自家消費型太陽光発電

ここまで、電力会社の電気代の値上がりについて解説しました。
急激な電気代高騰は家庭への負担増加はもちろん、企業にとっても経営を揺るがす大きな問題となっています。
このような背景から、昨今では「自家消費型太陽光発電システム」を導入する家庭や企業が急増しています。
自家消費型太陽光発電を個人の自宅や企業の事業所に導入することで、太陽光によって発電した電気を無料で使用することができます。
そのため、発電した電気の分だけ電力会社から購入する電気が減って効率的に電気代を削減することができます。
自家消費型太陽光発電の導入事例
製造工場への太陽光発電導入で年間約1,000万円の電気代削減

- 導入先
株式会社特殊金属エクセル - 都道府県
埼玉県 - システム容量
DC容量:581.4kW
- 導入目的
- 製造コスト削減に加えて、早期の再エネ導入による脱炭素促進で業界リードを目指したい
- 導入効果
-
- 事業所における消費電力を年間約60万kWhの削減
- 製造過程におけるCO2排出量年間300tの削減
- 新設工場を設置予定となる遊休地の有効活用
まとめ
さまざまな原因が重なり、電気料金の値上がりが続いており、今後も続いていく見通しです。
現状でもこれまでより電気料金が高くなっており、今後もその傾向が続くことが確実視されている状況では、「電気料金の上昇への対策が企業の競争力強化に繋がる」といっても過言ではありません。
企業として対策を打っていくことが得策といえる状況であり、自家消費型太陽光発電などの設備投資が企業の競争力を高めることに繋がるでしょう。
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