介護事業所を運営している方は、2024年3月末までにBCP対策・BCM対策に対応しなければいけません。しかし、具体的にどのような対応を迫られているのか、よくわからず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、介護事業者向けのBCP対策・BCM対策に関する内容や流れ、義務化の詳細について詳しくご紹介します。
介護事業を展開している方や介護事業のBCP対策義務化に関する内容がよくわからないという方は、参考にしてみてください。
目次
介護事業者は2024年までにBCP対策が義務化される
厚生労働省の「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」では、介護事業所に向けて2024年3月末までのBCP対策・BCM対策の義務化が明記されています。介護報酬改定は3年に1度行われていて、介護報酬や介護保険サービスに関する内容の変更や追加が行われています。
介護事業者は、2024年3月末までに事業継続計画の作成やBCP対策の訓練や運用を行う必要があります。また、BCP対策ではライフラインの確保も必要なので、非常用電源の設置も欠かせません。
BCP対策についておさらい
BCP対策(Business Continuity Plan)は、災害やテロ、感染症の拡大といった有事の際に復旧および事業を継続させるための計画を指します。日本語では事業継続計画と呼びます。
一方、BCM(Business Continuity Management)は、BCP対策で作成された計画に沿って行う訓練や運用、体制の強化などの総称です。
BCP対策のみ立てたとしても、非常時に計画通りの動きや支援を行えるかどうかはわかりません。BCMを導入および実行すれば、自社で作成したBCP対策の改善点や問題点などを見つけることが可能です。
介護事業所のBCP対策義務化とは
ここでは「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」で示された介護事業所向けのBCP対策・BCM対策の義務化に関する内容を紹介します。
BCP対策とBCM対策が義務化される
令和3年度の介護報酬改訂内容では、全ての介護事業者に対してBCP対策とBCM対策の義務化が定められています。
地震や台風といった災害が発生すると、介護事業所はライフラインの停止や建物の破損、災害対応による職員不足といったさまざまな被害が想定されます。
一方、介護事業所の利用者は生活や自身の健康・生命を施設に頼らなければいけない側面もあるため、介護サービス停止や施設の破損により大きな影響を受けてしまいます。
そこで厚生労働省は、介護事業者に向けてBCP対策・BCM対策を求めています。
猶予期間は2024年3月末まで
「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」における介護施設のBCP対策義務化の猶予期間は2024年3月末までとなっております。
現時点で期限までにBCPを策定しなかった場合の罰則などは発表はされておりませんが、BCP対策に取り組まないことで、経済面だけでなく企業としての社会的信用の低下などの経営リスクに繋がります。
BCP対策を行わないことで想定されるリスクについては後半で詳しく紹介します。
介護事業において求められるのは主に災害と疾病対策
BCP対策で重視されるポイントは、業種や企業の事業内容によって異なります。とくに介護事業者に求められているBCP対策は、災害と疾病に関する内容です。
災害と疾患に関するリスクには、インフルエンザやコロナウイルスなど感染症の拡大や、地震や大雨により停電しエアコンが使えないことで熱中症になってしまうなどの事態が想定されます。
介護施設ではおもに高齢者や障害・疾患を患っている方が集団で生活している空間であるため、一般的な施設と比べて災害対策と疾病対策には気を配る必要があります。
もちろん、介護施設における疾病対策と災害対策は入居者だけでなく職員の生命も守ることにも繋がります。
介護事業向けBCP作成に必要なもの
BCPの作成時は、厚生労働省作成のテンプレートを活用することで、効率よく計画を作成できます。厚生労働省HPには、自然災害と感染症に対するBCP作成用ひな形が公開されています。
自然災害 | 自然災害発生時によける業務継続計画に関する項目を列挙したもの。 総論(基本方針やリスク把握など)と平常時の対応、緊急時の対応、他施設との連携、地域との連携などの項目にわかれている |
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感染症 | 入所系、通所系、訪問系介護サービスに合わせたひな形が用意されている。 総則(基本方針やBCP対策の管理部門など)と平常時の対応、初動対応、感染拡大防止体制の確立にわかれている |
(参照元:介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修|厚生労働省)
また、ひな形の他には、様式ツールも公開されています。様式ツールは、入所者の健康管理に関する項目や感染者のチェックリスト、職員の緊急連絡先をまとめられる項目など、BCP対策の運用時に役立つ管理シートです。
初めてBCP対策を始める方も様式ツールやひな形を用いることで、どのような準備が必要なのか内容や方向性を把握できます。
介護事業所向けBCP対策の流れ
続いては、介護事業者向けのBCP対策をまとめる上で押さえておくべき流れを解説します。
基本方針などベースとなる項目を作成
BCP対策を始める際は、まず基本方針をはじめとした全体の流れを整えていくことから進めていきます。
基本方針 | 介護事業の継続を行う上で、どのようなBCPに取り組むのか、自社で定めたBCPの項目がなぜ必要なのか目的を定める |
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推進体制 | 平常時に災害対策をどのように進めるのか、防災に必要な組織体制を定める |
リスクの把握 | 介護事業所周辺の災害リスク調査(ハザードマップなど)を実施し、特にどのような災害に対して対策を進めるべきか判定する |
優先業務の選定 | 複数の介護事業所やサービスを運営している場合は、どの事業所の運用を縮小すべきか、入所・通所・訪問系のうちどれを優先すべきか事前に選定しておく。また、災害発生時でも生命維持に欠かせない業務はどれか確認しておく。 |
研修・訓練の実施、BCPの検証・見直し | BCMを実施し、改善点や課題点の見直し、BCPの定期的な更新を行う |
(参照元:介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン(PDF)|厚生労働省)
基本方針と推進体制を進める時は、BCP対策の方針や各部門の役割を策定するだけでなく指揮命令系統を決めておきましょう。
リスクの把握では、ハザードマップなど行政から提示されている資料をもとにどのような災害リスクが高いのか、災害発生時の被害範囲や影響を列挙しておきます。
たとえば、地震の影響を分析する際は、最大震度や建物の耐震性、津波などの影響に関する有無、インフラの復旧にかかる期間などを調査しておくのが大切です。
想定される災害リスクや組織体制を策定したあとは、災害発生時に継続すべき業務や各職員に求められる動きなどを確認します。あとは、定期的に訓練やBCPの見直しを図り、より効果的なBCP対策を作り上げていきます。
平常時に行っておくべき対策
BCPの総論を策定したあとは、平常時に進めておくべき災害対策の具体的な内容について確認およびリストアップ化しておく必要があります。
以下に主な対策を紹介します。
- 建物や設備の耐震性など安全性に関する調査を実施する
- 災害発生時に破損しないよう各種備品の設置場所を見直す
- 窓ガラスに飛散防止フィルムを設置するなど、建物内の防災対策を進める
- 非常用電源など停電時における電力供給を確保する
- 生活に必要な物品(カセットコンロや飲料水・生活用水・非常食・懐中電灯など)を常備しておく
- 非常時の通信手段やデータ保護の方法を決める
- 仮設トイレの設置や衛生面の維持管理方法を策定
- 資金手当ての方法を決めておく
生活に必要な物品とは、非常用食品、飲料水やマスク、ティッシュ、生理用品、ばんそうこう、消毒薬、市販薬、使い捨てカイロ、懐中電灯などのことです。
資金手当ては、緊急時に備えた現金や火災保険などの保険金額を指します。また、このような資金で介護事業所への被害をカバーできるか、試算しておくのも大切です。
災害発生時に行うべき対応
BCP対策では、平常時に加えて災害発生時に備えた準備なども求められます。以下に災害発生時に備えた準備を紹介します。
BCP発動基準 | どのような規模の災害が発生したらBCPを発動するのか明確な基準を決める |
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行動基準 | 災害発生時に職員の連絡体制、緊急連絡先、安否の確認穂方法を策定し、全職員に情報共有する |
対応体制 | 救護班や消火班といった各グループの区分と職員の所属グループを明確にする |
対応拠点 | 緊急時の拠点を事前に用意しておく 例:津波の浸水区域に介護施設がある場合は、避難および緊急時の拠点を別途準備 |
安否確認 | 介護サービスの利用者、入所者、職員に関する安否確認シートを作成したり、安否確認の方法を策定したりしておく |
職員の参集基準 | 災害発生時に職員を招集する基準(災害規模・職員の居住エリア・自宅被災の場合は参加しなくてよい等)を定めておく |
施設内外での避難場所・避難方法 | 地震や津波、噴火といった災害発生時にどこで避難するのか、避難場所を明確にしておく |
重要業務の継続 | 平常時の対応で定めた優先すべき業務の中でもとくに優先すべき業務を検討する 例:非常用電源の作動、利用者の安全確認と衛生環境の整備、食料品の準備など |
職員の管理 | 緊急時の職員にかかる負担を軽減するために何ができるのか列挙しておく 例:職員の休憩スペース、宿泊場所の確保など |
復旧対応 | 介護施設のが速やかに復旧するよう、破損部分の確認表や各種業者一覧を作成しておく |
(参照元:介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン(PDF)|厚生労働省)
緊急事態の場合は、平常時と異なり想定外の事態が連続しやすい状況です。そこで、上記のように職員の不足や負担、施設の破損、避難、介護サービス利用者に対する支援など、さまざまな視点から防災に関する準備を進める必要があります。
災害発生時の感染症対策についても考慮
介護事業者は、平常時の災害対策や緊急時の復旧および業務継続計画だけでなく、災害発生後の感染症対策や衛生管理に関する対策も求められます。
たとえば、感染症の流行時期に大きな地震が発生すると、3密対策をとれずに避難生活や救護活動などを行わざるを得ません。
そのため、避難場所での換気対策や密にならないための環境整備、衛生用品の備蓄など、避難生活+感染症対策を念頭に置きながら動きをシミュレーションしていくのが大切です。
なお、豪雨や台風による浸水被害に関する予想時刻やピーク時刻は予測できるため、災害発生前に土のうの設置や避難経路の確保、入所者に向けた事前避難、衛生用品の浸水防止、感染症拡大につながる廃棄物の処理など、さまざまな行動を進められます。
このように感染症+災害に関するBCPを考える際は、災害ごとの性質を考慮した上で対策や行動を1つずつ組み立てていきましょう。
他施設や地域の連携
「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」(厚生労働省)では、他施設や地域との連携方法に関する重要性と指針が定められています。
以下に他施設や地域連携に関するポイントを紹介します。
- 連携体制の構築
- 平常時に他介護サービス・施設との連携について内容をすり合わせておく。その他、連携先の所在地や連絡先などの記録、連携協定書の締結(具体的な連携内容に関する情報共有に必要)、平常時から連携関係にある法人や医療機関と防災対策や協力関係を結ぶ
- 連携対応
- 他施設と連携する場合は、事前準備として備蓄の強化や職員派遣の方法や取り決め、入所者受け入れの方法や上限について定めておく、また、定期的な共同訓練によって内容を更新することや互いの施設入所者の情報共有も大切
他地域との連携
- 被災時の職員の派遣
- 地域ごとに設けられている害福祉支援ネットワークを調査し、参加を検討する
- 福祉避難所の運営
- 福祉避難所の運営を求められた場合は、自治体との協定書を添付し、受け入れ方法や人数に関するさまざまな情報を記録しておく。また、福祉避難所として指定されない場合も、要援護者や近隣住民の受け入れを可能な限り行えるよう準備を進めておく。
(参照元:介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン(PDF)|厚生労働省)
大規模災害が発生した場合、自社の職員や施設のみで入所者の健康管理、地域住民への支援を行えない可能性もあります。
そこで他の介護サービスや行政と協力関係を築き、平常時から少しずつ相互支援の関係性を強化していくことが、介護施設のBCP対策を完成させる上で重要なポイントです。
介護施設のBCP対策で期待できること
続いては、介護施設におけるBCP対策のメリットや期待できることを解説します。
自然災害による被害を少しでも抑えられる
介護事業者および職員がBCP・BCM対策を行えば、自然災害や感染症による被害リスクを少しでも抑えられます。
自然災害の被害リスクや復旧活動、避難所の運営は、日頃から対策を立てて訓練しなければ対応できません。
BCP対策があれば、災害や感染症に対しての備えを順序立てて整理できます。また、BCMを行うことで、災害発生時にすぐ入所者の避難や緊急事態の対応体制へ切り替えやすくなります。
金融支援を受けられる場合も
BCP対策を作成したのち国に支援制度の申請を行うと、金融支援を受けられる場合があります。
たとえば、日本政策金融公庫の社会環境対応施設整備資金は、事業継続力強化計画の認定およびBCP対策に沿った活動を行う場合に低金利の融資を受けられます。
金利は、設備資金や運転資金に定められている基準金利から0.9%以下の引き下げ率です。(事業継続力強化計画:防災や減災に関する計画)
ワクチンを優先的に接種できる
「新型インフルエンザ等対策特別措置法」には、BCPの認定を受けた介護事業者に対してワクチンの優先接種に関する優遇措置が含まれています。
介護事業者にとって感染症の拡大は、入所者・介護サービス利用者・職員の健康や生命の維持に大きく関わる事態です。BCP対策を行い、かつ認定を受けられれば、迅速にワクチンによる感染症対策を進めることが可能です。
介護事業者がBCP対策義務化に従わないリスク
令和3年度介護報酬改定では、BCP対策に違反した場合の罰則規定について定められていません。
ただし、BCP対策を怠ったりずさんな対策を行ったりした場合、本来防げる被害を防げず、入所者の生命や健康に重大な影響を与えてしまう可能性があります。
他には、災害や感染症の拡大で入所者や職員の家族から賠償責任を問われる可能性があります。さらに訴訟などが起きると、報道で社会的責任を問われたりSNSなどで事業者や職員などの責任を追及されたりするケースも考えられます。
BCPガイドラインのポイント
BCPをスムーズに作成するうえで注目すべきポイントを解説します。
担当者の役割や責任者を明確にしておく
BCPを作成する際は、緊急時の体制や方針を策定し、なおかつ従業員の役割分担、緊急時の連絡方法や情報収集の担当者、責任者や命令指揮系統をどうするのか明確にしておくのが大切です。
どのような状況でもサービスを継続するための対策
災害によるインフラの停止や水害、災害発生後の感染者発生といった場合でも、安全を確保しながらサービスを継続するために対応策を平常時から策定しておくことが大切です。
前半でも触れたようにBCPの作成時は、ガイドラインを活用しながら介護施設周辺の被害想定やシミュレーション、復旧に必要な施設や人手、サービス継続に最低限必要なことをリスト化し、定期的に訓練しましょう。
また、1回のBCP作成では、不完全な内容も出てきます。訓練の際に職員同士で課題を出し合い、都度BCPの内容を更新していくのもサービス継続に重要なポイントです。
緊急時の人員体制に関する確認と連携体制のチェック
災害発生時には、職員の自宅が被災した場合やケガ・感染症などによって人員不足となる可能性もあります。また、平時より職員の業務負担が大きくなるため、事前に他サービスとの連携体制を確立させ、人員不足に関する対策を打っておきましょう。
他施設との連携を行う際は、連携先の検討と協議、さまざまな取り決めを定めたのちに連携協定書の締結、日常的な訓練と相互に情報共有といった流れで準備を進めます。連携の際は、情報の共有だけでなく、積極的に交流を行い良好な関係構築を意識するのも大切です。
介護事業における優先順位をリスト化
BCPを作成する時は、特に優先すべき内容や緊急時に休止しても問題のない業務をリスト化しておくことで、対策不足や不備といった問題を抑えられます。
前半で紹介した「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」内には業務選定のリストシートも公開されているので、様式から作成せずに優先順位のリスト化に着手できます。
非常用電源の必要性
災害発生時は、発電所や変電所などの破損によって長期停電してしまう場合もあります。
特に介護施設内では、情報収集に必要な通信設備や入所者が利用している医療機器を稼働させるために電力を必要とします。そのため、停電時でも電力を供給できるよう非常用電源を導入しておくのが大切です。
非常用電源の種類とメリット・デメリット
ここからは、非常用電源の種類とそれぞれのメリット・デメリットについて紹介します。
ガソリンエンジン発電機
ガソリンエンジン発電機は、ガソリンを燃料にした発電機の総称です。小型発電機が主流で、緊急用だけでなくアウトドアなどさまざまなシーンで利用されています。
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メリット
- 種類が多く小型なのでスペースの限られている場所でも設置しやすい
- 人の手で発電機を移動できる
- 平常時なら燃料を容易に確保できる
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デメリット
- ガソリンは引火性の強く取り扱いに注意が必要
- 長期の停電時は大量のガソリンの取得が困難な場合も
- 燃料価格高騰の際はコストが高い
スマートフォンなどの小型機器や照明は、ガソリンエンジン発電機でカバーできます。しかし、小型発電機が主流なので、長時間の稼働に向いていません。また、燃料価格の高騰している時期は、ガソリンの費用負担が大きくなってしまいます。
ディーゼル発電機
ディーゼル発電機とは、軽油を燃料とした発電機のことです。小型発電機だけでなく業務用の大型発電機も揃っているので、医療機器など長時間稼働させなければいけない場合に役立ちます。
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メリット
- 大型発電機を選べるので長時間稼働可能
- ガソリンより燃料価格は安い
- 型発電機もあるので限られたスペースにも設置可能
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デメリット
- 燃料価格高騰時は軽油の費用負担が大きくなる
- 保管容器に応じた保管容量が消防法で定められている
- 引火性のある液体なので火事に注意
軽油はガソリンと同じく引火性があるので、保管の際に周辺に物を置かないようにしたり静電気を除去した上で取り扱ったりなど、注意が必要です。また、200L以上の軽油を保管する場合は、消防法で管轄の消防署へ届け出る必要があります 。
ポータブルLPガス発電機
>ポータブルLP発電機は、LPガス(液化石油ガス、プロパンガス)を燃料にした発電機を指します。ガソリン式の発電機と同様に燃焼によってタービンを回し、発電を行う仕組みです。
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メリット
- 小型発電機なので手持ちで移動、保管可能
- 大型発電機と比較すると低コスト
- 容器への充てんはガス会社で行ってくれる
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デメリット
- 不完全燃焼の際に一酸化炭素を含むガスが発生
- ポータブル式なので発電量が少ない
- 燃料価格高騰の際にLPガスの費用負担が大きくなる
導入費用やサイズ感という点では、メリットの多い発電機といえます。しかし、不完全燃焼による有害ガスの発生やガス漏洩による爆発といった事故に注意が必要です。
>定置式LPガス発電機
定置式LPガス発電機は、業務用に開発された大型発電機です。前段で触れたようにLPガスの燃焼によって発電される仕組みとなっています。
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メリット
- 照明や医療機器などを長時間同時に稼働可能
- 業務用の場合は静音性や耐久性も強化されている
- ポータブル式と異なり各種設備にあらかじめ接続されている
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デメリット
- 大型発電機なので移動できない
- 燃料価格高騰の際にLPガスの費用負担が大きくなる
- 小型発電機と比較して導入費用が高い
長時間の停電に備えたい場合は、ポータブル式ではなく定置式LPガス発電機の方が向いています。ただし、設置の際は、水害リスクや設置場所の地盤などを調査し、被害を受けにくいかどうか判断する必要があります。
非常用電源の導入に対して補助金が出ている
政府は介護・福祉施設が非常用電源を導入する際の補助金制度を設けています。
名称 | 認知症高齢者グループホーム等防災改修等支援事業 |
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対象事業所 |
など、原則定員29名以下の介護施設等 |
補助率・上限額 |
・補助率:定額補助 ・上限額:1施設あたり1,540万円または773万円 (対象施設・設備内容により異なる) |
(参照元:令和5年度予算案の概要(老健局)の参考資料(PDF 3ページ)|厚生労働省)
名称 | 高齢者施設等の非常用自家発電設備整備等事業 |
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対象事業所 |
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補助率・上限額 |
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(参照元:災害時の拠点等となる医療施設、社会福祉施設(高齢者・障害者・児童福祉施設等)の給水設備や非常用自家発電装置の整備(医療施設) PDF|内閣府)
BCP対策の進めるうえで重要な非常用電源には、けっして安くはない費用がかかります。
上記のような、政府による補助金の対象となる場合がありますので、設置を依頼する業者と相談しながら、施設で使用できる補助金がないか調査することをおすすめします。
太陽光発電システムもBCP対策に繋がる
太陽光発電とは、太陽光発電で発電した電気を自社で使える発電設備のことです。蓄電池と併用することで、夜間や雪の日など太陽光で発電できない状況でも電気を利用できます。
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メリット
- 屋根・屋上に設置でき、敷地内の有効面積を占領しない
- 蓄電池との併用で夜間や消費電力の多い時間帯にも自家消費可能
- 平常時に自家消費でき、費用回収が可能
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デメリット
- 設置後に移動できない
- 天候や時間帯によって発電量が変動する
- 定期的に清掃や点検が必要
一般的に発電機を使用できるのは非常時のみに限られていますが、太陽光発電と蓄電池は非常時だけでなく平常時でも稼働し続けます。
太陽光発電の電気を平常時に使用することで、電気代削減につながり、およそ10年程度で設備導入に掛かった初期費用を回収することができます。
PPAなら初期費用0円で太陽光発電を導入できる
太陽光発電は、他の非常用発電機と異なり初期費用0円で導入可能なPPAモデルという方法もあります。
PPAモデルは、自社の屋根や遊休地にPPA事業者所有の太陽光発電を無償で設置してもらえるサービスです。さらに契約期間中の維持管理や保守点検費用は、PPA事業者側で負担してもらえるのが特長です。
発電した電気は自社の設備で自家消費できるため、非常用発電機として活用できます。
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介護事業者は、2024年3月末までにBCP・BCM対策を進める必要があります。また、対策を進める際は、非常用水やガスの確保に加えて、非常用電源の導入を考えるのが大切です。
BCP対策の義務化に向けて非常用電源の準備を行う方や非常用電源の種類で悩んでいる方は、今回の記事を参考にしながらぜひお気軽にご相談ください。
太陽光設置お任せ隊(運営:株式会社ハウスプロデュース)は、屋根上や駐車場など様々な場所に太陽光発電を設置することが可能です。また、補助金や税制優遇に関する制度を活用しながら、お客様の費用負担を軽減できるよう努めます。