太陽光発電のメンテナンス義務化とは?点検費用や実施頻度を解説

2017年4月FIT改正(固定価格買取制度)以降、50kW以上の産業用太陽光発電にのみに適用されていた「保守点検・メンテナンスの義務化」の適用が、10kW未満の家庭用太陽光発電まで拡大されました。

太陽光発電システムの点検・メンテナンスを怠ることで、発電効率の低下や故障などのリスクを高めるだけでなく、FIT認定取消など厳しい処分を受ける可能性があります。

本記事では、これから太陽光発電事業者になる方にもわかりやすく、太陽光発電の点検・メンテナンス義務化による変更点や対策について詳しく解説します。

太陽光設置お任せ隊の施工事例と導入効果

太陽光発電のメンテナンス義務化の対象

太陽光発電のメンテナンスが義務化が適用されるのは下記に該当する発電事業者です。

FIT認定を受けた太陽光発電 「再エネ特措法施行規則」による義務化
定格出力50kW以上の太陽光発電 「電気事業法」による義務化

FIT適用の太陽光発電設備は「改正FIT法」で義務化されており、定格出力50kW未満の太陽光発電であっても「再エネ特措法施行規則」に沿った点検とメンテナンスを行ったうえでレポートを保存しておく必要があります。

また、定格出力50kW以上の太陽光発電では、FIT適用に関わらず経済産業省が定めたメンテナンス義務を満たすためには「電気事業法」に沿った保守点検が必要になります。

メンテナンスと保守点検の違い

経済産業省のメンテナンスの義務化では保守点検に関わる内容も含まれます。

太陽光発電設備の「メンテナンス」と「保守点検」は混合してしまいがちですが、実際の作業内容は下記のような違いがあります。

太陽光発電のメンテナンス 太陽電池モジュール(太陽光パネル)やパワーコンディショナ等の機材の清掃や交換を行うことです。
太陽光発電の保守点検 設備の破損・故障や発電性能の低下などが起きていないか目視または特殊な機器を使用し定期的な点検を行うことです。
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太陽光発電のメンテナンス・保守点検の主な内容

太陽光発電所のメンテナンスは、改正FIT法により義務付けられていますが、資源エネルギー庁が提供する「事業計画策定ガイドライン」では具体的な点検方法は示されていません。

しかし、一般社団法人日本電機工業会と一般社団法人太陽光発電協会が提供する太陽光発電システム保守点検ガイドラインには、設置場所や機器に応じた詳細な点検項目が記載されており、これらのガイドラインに沿った点検とメンテナンスを行うことが、義務化された基準の遵守につながります。

太陽光パネルの破損やホットスポットの確認

太陽光パネルの点検作業

太陽光パネルは常に屋外にさらされており、鳥の糞や成長した雑草による「影」が太陽光パネルにかかり続けることで、ホットスポットと呼ばれる発熱異常を引き起こし、故障の原因となります。

そのため、実際のメンテナンス作業では、赤外線サーモグラフィを利用してホットスポットを特定して清掃または修理を行う必要があります。

また、夏場では雑草の急速な成長によって、ホットスポットが起きる可能性が高まるため、定期的な除草作業も行いましょう。

除草作業の外注費用の相場 1㎡あたり50円から150円

太陽光パネルなど設備の清掃

雨天の日の後など、太陽光パネルに砂埃が付着することで発電量の低下につながります。そのため太陽光発電の発電量を維持するためには、太陽光パネルを定期的に洗浄する必要があります。

太陽光パネル清掃費用の相場 パネル1枚あたり500円から1,000円

太陽光パネルがしっかり固定されているか点検

ソーラーパネルの固定

ボルトの緩みや経年劣化を放置しておくと、台風の際に太陽光パネルが飛散してしまう可能性が高まります。

そのため、設備の保守点検では、架台に太陽光パネルを固定するための「ボルト」の緩みもひとつひとつ丁寧に目視で確認して、必要に応じてボルトを締め直したり交換する必要があります。

パワーコンディショナなど設備の点検・交換

パワーコンディショナの画像

パワーコンディショナの目視点検では汚れ・悪臭・異音・フィルターの目詰まりなどを点検します。

パワーコンディショナの寿命は10年から15年とされています。そのため。。太陽光発電事業ではパワーコンディショナの交換時季が必ず1回は訪れることになりますが、メーカー保証の期間内であれば無償で交換してくれる場合もあります。

また、ケーブルやコネクタ等の機器についても損耗しやすい機器になりますので、状態に応じて交換作業を行う必要があります。

パワーコンディショナの買い替え 20万円から30万円/台
パワーコンディショナの修理 3万円/台

太陽光パネルなどの絶縁抵抗値の点検

ソーラーパネルの抵抗点検

絶縁抵抗値の確認とは、太陽光パネルやケーブルから流れる電流が規定値以上に通電していないかを確認することです。

太陽光発電システムの絶縁抵抗値が低い場合、漏電や感電のリスクが発生します。点検作業では、絶縁抵抗計を使用して太陽光パネルとケーブルの絶縁抵抗値を計測します。

配線や接続部分の状態を点検

ケーブル確認

発電した電気を送るケーブルや接続部分の状態を目視で点検します。損傷や劣化がみられないかしっかりと確認します。

これらに異常があると、発電効率が落ちる、ケーブルが焼損する、などの危険が発生します。もし異常がある場合は速やかな対処が必要となります。

太陽光パネルの発電量を点検

発電モニターの画像

太陽光パネルが性能どおり発電しているか点検します。
業者に依頼する場合は測定器を用いるため、正確な発電量が把握できます。

業者への依頼が難しい場合は、モニターを導入していれば1日の発電量を記録することが可能です。

もし劣化や故障による保証を受けるなら、客観的なデータが必要になる可能性があります。そのため、必ず日々の発電量を記録しましょう。

接地抵抗(アース)を点検

太陽光発電アース点検

隣り合う太陽光パネル同士はアース線で結ばれており、架台を通して地中に接地したり、接続箱・集電箱・パワーコンディショナなどに収められて接地されています。

この接地に異常がある場合、感電や火災の原因につながります。接地抵抗(アース)の点検作業では接地抵抗計を使用して点検していきます。

太陽光発電のメンテナンスの実施スケジュール

太陽光発電におけるメンテナンス及び保守点検の実施頻度について解説していきます。

どれくらいのペースで太陽光発電の点検をすべきかは気になるポイントです。

しかし、「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」では、「◯年に1回」のようなわかりやすい基準は設けられておらず、「システムの環境によって頻度は考えること」という内容が記載されています。

「システム環境」とは、おもに以下の内容です。

  • システムの種類(家庭用・産業用など)
  • 遠隔監視装置の有無や性能
  • 契約内容やメーカー保証の内容
  • 設置場所の周辺環境
  • 稼働期間や劣化の程度

しかし、「発電所の環境によって点検頻度を考える」といわれても、多くの発電事業者は困惑してしまいます。

そのため、ガイドライン沿った「点検時期と実施頻度」が分かる表を作成したので、ぜひご確認ください。

点検種類と時期 推奨点検実施者 目的
設置1年目点検 専門技術者
  • システムの初期的な不具合がないか点検し、必要があれば補修を行う。
  • この時期に初期不良を発見することが長期稼働するうえで重要である。
設置5年目点検 専門技術者
  • 機器や部材の劣化や破損状況を点検し、必要な補修作業を行う。
  • 機器メーカーによる精密点検が設定されている場合は別途実施すること。
設置9年目以降の点検(4年ごと) 専門技術者
  • 発電開始9年目以降は4年ごとを目途に、機器や部材の劣化や破損状況を点検し、必要な補修作業を行う。
  • 機器ごとの保証期間を確認し、機能の確認や消耗部品(メーカー指定)の交換などを行う。
  • 設備更新時期を検討する。
設置20年目以降の点検(4年ごと) 専門技術者
  • 発電開始20年目以降は4年ごとを目途に、機器や部材の劣化や破損状況を点検し、必要な補修作業を行う。
  • 点検内容を確認し、設備更新時期を検討する。
日常点検 システム所有者または専門技術者
  • 毎月1回程度の点検に加えて、地震・台風・悪天候・火災・落雷などの後に行う。
  • 汚れや損傷の有無の確認など、一般的な目視点検を行う。
  • 異常がみられた場合は専門業者に依頼する。
  • 設置者は可能な範囲で日常点検を行う
  • 発電開始から1年後、専門技術者による点検を行う
  • その後は4年に1度、専門技術者による点検を行う

改定前のガイドラインでは「4年に1度」の点検が義務となっていました。頻度の規定は無いものの日常点検を行いつつ4年に1度のペースで点検を行うことを1つの目安としています。

太陽光発電のメンテナンスにかかる費用

太陽光発電設置後のメンテナンスや保守点検のことを「O&M(オペレーション&メンテナンス)」といいます。このO&Mにかかる費用の目安は以下のとおりです。

住宅用太陽光発電 1回のメンテナンスで5万円から10万円が相場といわれています。足場を組む必要がある場合は割高になる可能性があります
産業用太陽光発電(低圧) 年平均10万円から15万円程度が目安です。点検・メンテナンスの内容や頻度によっては割高になることもあります
産業用太陽光発電(高圧〜特別高圧) 高圧でも100kWから200kW規模は年平均15万円から20万円に収まるケースもあります。特別高圧(2MW以上)になると年平均で100万円から200万円かかる可能性があります
  • 上記は目安であり、システムの条件・点検を依頼する業者・点検内容などで費用は上下します。

設備の修理・交換にかかる費用

上記のような不具合が起き、修理や交換が必要になった場合の費用の目安は以下のとおりです。

太陽光パネル 1枚あたり10万円から15万円
パワーコンディショナー 修理・交換の場合は10万円から40万円。部品交換のみなら10万円程度

上記の費用が発生した場合、点検・メンテナンスの費用より高くついてしまいます。

もしメーカー保証の期間内であっても、点検・メンテナンスを怠っていた場合は、適切な使用方法でなかったため対象外とみなされ、トラブルになってしまう可能性もあります。繰り返しになりますが、経年劣化の抑制や不要なトラブル・事故を防ぐためにも、定期的なメンテナンスを行いましょう。

産業用太陽光発電の設置費用の相場と維持費|費用を抑える方法と実例を紹介

太陽光発電の設備導入からメンテナンスまで承ります

太陽光発電事例写真
事例:助川電気工業|茨城工場
  • 「50kW未満の非FIT」以外はメンテナンスが義務化されている(2023年1月時点)
  • 点検内容は「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」が参考になる
  • しかし、専門的な内容は業者へ依頼すべきである
  • 年に1度の点検が望ましいが、少なくとも3年〜4年に1度の点検を
  • 点検・メンテナンスを怠れば、発電量の低下・不要な事故やトラブルの原因になる

当社(株式会社ハウスプロデュース)は、提案・設計・調達・施工・メンテナンス(O&M)まで、ワンストップサービスでお任せいただけます。

故障箇所の修理
太陽光パネルやパワーコンディショナーなどの機器に損傷や故障がみられる場合、まずは補修を行います。その後、原因を調査し、使用できる保険があれば適用します。
メンテナンス・点検
目視点検はもちろん、サーモグラフィーによるセル単位での蓄熱・ホットスポットの確認や、パワコンの開放電圧・短炉電流値の確認などを行います。データを通じて発電所の状態を把握していただけるほか、異常がみられた際は補修を行います。
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当社は10年間の施工補償を設けています。万全の体制で施工を行いますが、万が一、工事ミスや工事後の瑕疵が認められた場合は、責任を持って保障いたします。施工力に自信があるからこその保証制度です。
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執筆者:株式会社ハウスプロデュース広報部

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当社は、産業用太陽光発電システムのEPC工事を専門に手がけています。経験豊富な電気工事士やエネルギーマネジメントアドバイザーなどの有資格者が在籍。一次情報や専門家からの取材を基に、EPC事業者としての「現場から得たノウハウ」を活かしたコンテンツ作りに取り組んでいます。

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