2022年度のFIT改正で太陽光発電はどうなる?|売電価格・申請締切|自家消費についても解説
2023年度の太陽光の買取価格に関しては、こちらの記事で解説しています。
SDGsやカーボンニュートラルといったキーワードと関連性が高いことから、近年注目されている太陽光発電。2012年からFIT制度によって全量買取がスタートしましたが、2022年で10年を迎えます。この10年という期間でFIT価格は大きく変動し、再生可能エネルギー業界は激変しました。
FIT制度は毎年変更されていますが、2022年度以降の太陽光発電はどうなるのでしょうか。
2022年から新たに始まる「FIP制度」の内容も気になるところです。そこで、今回の記事では、2022年度のFIT売電価格や申請スケジュール、今後の太陽光発電のキモである「FIP制度」の概要も含めて詳しく解説します。
目次
FIT(固定価格買取制度)とは?
FIT(固定価格買取制度)とは、太陽光・風力・バイオマスなど経済産業省が認める再生可能エネルギー由来の発電設備で作られた電気を売却できる制度です。FIT法によって、国は発電事業者に対し、10年間または20年間にわたり固定価格で電力会社に売却する権利を保証しています。
FITが、2012年7月1日に「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」として日本で正式に施行されたことにより、2020年度までに認定を受けた再エネ発電設備の件数は2,278,429件にまで増加しました。
このようにFITは、国内の再生可能エネルギー比率の向上に大いに貢献した制度といえます。しかし、FITによって国内で太陽光発電所が増える一方で、FITは以下の問題を抱えることになります。
(参照:国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案(2021年10月)|資源エネルギー庁)
FITの問題点1. 再生可能エネルギー賦課金の高騰による国民負担の増加

実は、FITにおいて再生可能エネルギーの買い取りに要する費用は、「再生可能エネルギー促進賦課金(通称 再エネ賦課金)」という名目で、電力会社を通じてすべての国民に請求されています。
つまり、国内でFIT認定を受けた発電所の数が増えるほど、電気料金への反映という形で国民の負担増加に繋がります。
再エネ賦課金の単価は2012年度時点で「0.22円/kWh」でしたが、年々値上がりしており、2022年時点では「3.45円/kW」と、わずか10年間で約18倍にまで高騰しています。
関連記事:【電気代の税金】上がり続ける再エネ賦課金とは|太陽光発電で負担を軽減
FITの問題点2.買取単価の減少と法改正
FITによる電力の買取単価は、2012年度では1kWhあたり40円(10kW以上)から42円(10kW未満)の値がついていました。しかし、年度ごとに徐々に低下していき、2022年度では1kWhあたり11円(10kW以上50kW未満)や17円10kW未満)にまで下がっています。
また、2020年度のFIT法の改正により、もっとも普及していた50kW未満の太陽光発電において全量売電の廃止が決定しました。
さらに、これらの要因以外にも、太陽光発電所の建設に伴う大規模な森林伐採や、近隣住民とのトラブルなどによりFITの認定が厳格化されたことで、2022年現在ではFITは衰退に向かっています。
2022年度(令和4年度)のFIT売電価格
経済産業省が公表した資料「令和3年度以降の調達価格等に関する意見」をもとに、固定価格買取制度(以下、FITと記載)における2022年度の買取価格(売電価格)と買取期間(売電期間)は、以下のように設定されました。
設置容量 | 売電価格 | 買取期間 |
---|---|---|
10kW未満 | 17円/kWh(税込) | 10年間 |
10kW以上~50kW未満 | 11円/kWh(税別) | 20年間 |
50kW以上250kW未満 | 10円/kWh(税別) | |
250kW以上1,000kW未満 | 入札制度 |
FIT売電価格の推移
再エネ賦課金の単価は、調達価格等算定委員会の「令和4年度以降の調達価格等に関する意見」をもとに、2023年度まで決まっています。
産業用太陽光発電のFIT売電価格や、過去の推移と傾向は以下となっております。
FIT売電価格の推移
年度 | 売電価格(税別) | 前年度との差額 |
---|---|---|
2023年度(令和5年度) | 10円/kWh(10kW~50kW未満) 9.5円/kWh(50kW以上250kW未満) |
前年のFIT売電価格から-0.5円または−1円 |
2022年度(令和4年度) | 11円/kWh(10kW~50kW未満) 10円/kWh(50kW以上250kW未満) |
前年のFIT売電価格から-1円 |
2021年度(令和3年度) | 12円/kWh(10kW~50kW未満) 13円/kWh(50kW以上250kW未満) |
前年の売電価格から-1円 |
2020年度(令和2年度) | 13円/kWh | 前年の売電価格から-1円 |
2019年度(令和元年度) | 14円/kWh | 前年の売電価格から-4円 |
2018年度(平成30年度) | 18円/kWh | 前年の売電価格から-3円 |
2017年度(平成29年度) | 21円/kWh | 前年の売電価格から-3円 |
2016年度(平成28年度) | 24円/kWh | 前年の売電価格から-4円 |
FIT制度(固定価格買取制度)のもとで2012年に再生可能エネルギーの全量買取がスタートして以降、1kWhあたりの買取価格は毎年変動してきました。
50kW未満の小規模な発電設備の場合、2012年度の買取価格は40円でしたが、その後徐々に買取価格は下がり、2022年度にはとうとう11円まで下がりました。
また、過去からの売電価格の推移の傾向を見ると、2019年までは4円〜3円と大幅な低下が続いていましたが、2020年以降から、1円ずつFIT売電価格が低下していることがわかります。
2023年度は、売電価格がさらに低下しますが、FITによる売電の制度自体は継続されます。
2022年度(令和4年度)のFIT受付開始日と締切日
2022年度からFITによる太陽光発電事業をスタートさせたい場合、いつまでに申請を行えば良いのでしょうか。申請受付の開始日、および締切日について解説しましょう。
FIT申請の受付開始時期
2022年度の受付開始時期は公式に発表されておらず、未定の状況です。
しかし、FIT事業を管轄する経済産業局と太陽光発電協会(JPEA)へ問い合わせたところ、申請受付は2022年4月にスタートする予定であることがわかりました。
ただし、これはあくまでも公式発表ではなく、正式には2022年3月中に詳細が公表される予定とのことです。
また、FIT制度に関連する法律の改正などがあった場合、上記のスケジュールからさらに遅れる場合もあります。
FIT申請の締め切り時期
FIT申請の締め切り時期は、例年10kW以上が2022年12月半ば、10kW以下が1月上旬となっています。
なお、具体的な締切日については、例年6月または7月頃を目処に資源エネルギー庁から公式に発表される見込みです。
FIT認定の締切日は年々早まっている傾向があるほか、関係省庁との確認作業や許認可関係(農地転用・林地開発・条例・法令など)の条件が年々厳しくなっていることもあり、審査に要する時間が長期化しやすい傾向があります。
そのため、締切日直前に申請するのではなく、十分な余裕をもって申請できるよう入念に準備しておきましょう。
「到達」は消印ではなく開庁時間内の到着
太陽光発電のFIT申請において「到達」とは「消印」ではない点に注意しましょう。50kW以上の太陽光発電の場合、申請書や電子申請の送信が提出先の「開庁時間内に到着」していることが到達の条件です。
50kW未満の太陽光発電の電子申請では、登録者による登録だけでなく、「期限日の23時59分までに設置者(お客様)の承諾が済んでいること」が条件になります。
導入を検討している場合は、期限近くになって慌てないよう早めに準備しておくことが大事です。
各電力会社への申請締め切り日
FIT認定の際は、電力会社から系統接続の同意を得る必要があります。
参考までに、2022年度の低圧(10kW以上50kW未満)太陽光発電の接続契約の申請期限は以下のとおりでした。
電力会社 | 10kW以上50kW未満 | 10kW未満 |
---|---|---|
北海道電力 | 2022年9月16日 | 2022年10月28日 |
東北電力 | 2022年10月7日 | 2022年10月21日 |
北陸電力 | – | – |
東京電力 | 2022年10月14日 | 2022年11月11日 |
中部電力 | 2022年10月21日 | 2022年11月11日 |
関西電力 | 2022年11月1日 | 2022年11月24日 |
中国電力 | 2022年10月14日 | 2022年11月4日 |
四国電力 | 2022年10月14日 | 2022年11月4日 |
九州電力 | 2022年10月14日 | 2022年11月11日 |
接続契約の申請期限は、FIT認定よりも期限が早くなります。繰り返しになりますが、太陽光発電でFITを利用したい場合は、早めの準備が大切です。
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認定取得までの流れ
FIT制度の認定を得るためには、どのような手続きが必要なのでしょうか。
大まかな流れを紹介するとともに、申請から認定までに要する期間の目安もあわせて解説しましょう。
電力会社との接続契約
先述したように、FIT認定では、あらかじめ電力会社から系統接続の同意を得ておかなければなりません。
電力会社は接続検討の申し込み後、原則として3カ月以内に接続可否を回答します。
接続が「可能」という回答を得た場合、その後電力会社と接続契約を締結します。
また、申請から締結の完了までに要する期間は電力会社によっても異なります。
たとえば中国電力の場合、申請から接続契約の締結まで時間がかかるといわれており「6カ月」程度を要すると発表しています。
経済産業省への事業計画認定申請
電力会社との接続契約が締結できたら、経済産業省へ事業計画認定を申請します。
電力会社への申請に比べると比較的期間は短いですが、それでも申請から完了まで「1~2カ月」程度要するとされています。
電力会社との接続契約、および経済産業省への事業計画認定申請が完了したら、太陽光発電に必要な機器類の発注や施工に入る流れとなります。
なお、FIT認定取得までの詳しい流れについては、資源エネルギー庁のホームページでも確認できます。
太陽光発電の電気を「売る」より「使う」メリットが高まっている
太陽光発電のFIT売電価格の下落が続いていることもあり、2019年度あたりから電力会社から購入する電力の価格を下回っているケースが多くなっています。
そのため、太陽光発電によって発電した電気を「売る」より「使う」、自家消費の方が経済メリットが高まっています。
とくに、2022年度の自家消費型の太陽光発電の導入では、高額な補助金を交付する自治体も多く、税制優遇も活用できることからも高い投資対効果が期待できます。
また、売電価格は年々減少傾向であるほか、高額補助金や税制優遇に関しましても来年度以降の実施は未定となっておりますので、自家消費型太陽光発電設備の導入はなるべく早い時期での導入がお得になります。
2022年度に至るまでのFIT制度改正のポイント
自家消費率の導入
FIT改正により、2020年から買取価格の仕組みが大きく変更されています。
ソーラーパネルの設置容量が10kW以上50kW未満(小規模事業用太陽光発電)における「全量売電」が廃止され「余剰売電」のみ適用されています。
また、発電量の30%以上は自ら消費する設計(自家消費比率30%以上)になっていることがFIT認定を受ける条件となります。
地域活用要件の導入
2020年度のFIT改正から、新たに加えられたのが地域活用要件です。
現在は、小規模太陽光発電設備に対してのみ適用される制度であり、地域活用要件を満たしていない設備はFITの対象として認められません。
地域活用要件の具体的な内容としては、以下の点が挙げられます。
1.自家消費の確認(余剰売電を行う設備構造・事業計画)
- 電力の自家消費が可能な配線構造になっている
- 自家消費率30%以上の「自家消費等計画」の策定・提出
自家消費比率をシステム構造的に満たさないと疑われる案件に関して、発電事業の状況を確認した上で認定の取り消しなどの措置が講じられる恐れがあります。
具体的な状況把握のため、電力会社との供給契約に係る電気料金請求書(検針票)などを保存し、発電量を記録しておきましょう。
2.災害時の活用(災害時に活用可能な設備構造・事業計画)
- 停電時に外部電源を使用せず発電を再開できる構造になっている
- 給電用コンセントを設置し、災害時の活用が可能である
停電時の発電再開には、少なくとも10kW相当分の自立運転機能が付いているパワーコンディショナーを設置し、1.5kWの自立運転出力の確保が必要になります。 また、農地転用許可が10年間になり得るソーラーシェアリングについては例外的に②を満たすことでFIT認定の対象になります。
地域活用要件の確認では、経済産業省でもあらゆる議論が進んでおり、今後はより厳格化されていくことが予測されます。
太陽光発電の課題と今後の展望
増加する再エネ賦課金
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画像引用:再エネのコストを考える|経済産業省
再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)は、再生エネルギー由来の電気に対して国民が支払っている料金です。使用電力量に応じて、電気使用料金と一緒に請求されています。
再エネ賦課金によって集まった資金の一部は、FITでの電力買取を通じて発電事業者に支払われます。 これによって、発電事業者は発電設備建設コストの回収の見通しが立ち、再生可能エネルギーの普及が進むことになります。
しかし、近年になりFIT対象の発電事業者が急増したことで買取費用総額が増加し、再エネ賦課金の負担は年々増大しております。2030年のピーク時で3.5円から4.1円/kWh程度まで上昇する見込みです。
FITに依存しない再生可能エネルギーの拡大
FITでの再生可能エネルギーの買取によって、日本の再エネ導入容量は2012年度(FIT施行開始時)の309億kWhと比べ、2018年時点で963億kWhまで増加しています。
つまり、日本の再エネ導入容量は、たった6年間で約3倍に増加しています。
この急激な増加によって再エネ導入容量は世界第6位、とりわけ太陽光発電においては世界第3位(2018年時点)まで押し上げる結果となりました。
経済産業省は2050年時点で発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合を50%から60%(2020年時点の再エネ比率21.7%)とすることを示しています。
しかし、FITによる再エネ導入が増えるということは国民負担の増加を伴います。
2020年度のFIT改正では小規模太陽光発電事業者の全量売電が撤廃されたことからも、FITに依存しない再生可能エネルギーの拡大に移行していることが推察できます。
【2022年度】太陽光発電の市場は本格的に「自家消費」へ
太陽光発電システムによる「自家消費」とは

自家消費型太陽光発電とは、店舗・施設の屋根・私有地などに太陽光発電システムを設置して、発電した電気を売電ではなく事業電力として自ら使用する仕組みです。
特に電気消費が多い企業や家庭である場合、余剰電力を売電するよりも発電した電気を積極的に使用することで、電力会社から購入している電力をより多く削減できます。
近年では「SDGs」「ESG」などの認識が広まり、企業の社会的責任の重要性が高まっています。
事業運営にともなう環境負荷への影響を考慮した事業継続が広まっていることからも、二酸化炭素排出量の削減に向けて再生可能エネルギーに資する企業が増えています。
売るより使う方がメリットが大きくなる
近年では、「電気は売るより作って使う時代」というフレーズが広まっています。
FITの電力買取は、2020年以降は太陽光発電の小規模発電設備において「売電単価が現状よりも低下」してしまうという事実は変わりません。
また、FITによって国内に再エネ設備が普及したことで、次に起こるのは再エネ賦課金上昇による電気料金の高騰です。
これらの要因により起こる現象が「グリッドパリティ」です。
グリッドパリティとは、太陽光発電による売電収益よりも電気料金の負担が上回る現象を指します。
固定価格買取制度の買取単価の低下と電気料金の値上がりによって、2018年以降の太陽光発電は自身で電気を使用(自家消費)して電気料金を下げた方が売電をするよりも経済的メリットも高くなってきました。
2022年度FIT制度を最大限に活用する方法
前述したとおり、2021年度からFITでは全量売電が廃止され「自家消費率30%」が適用条件に加えられました。
そのため、以前まで主流とされていた10kW以上50kW未満の太陽光発電については、自家消費型を前提とした太陽光発電でなければなりません。
そこで、近年拡大しているのがマンションやアパートへの太陽光発電の導入です。
マンションの屋根は工場など平家の建物と比べて、ソーラーパネルの設置面積が限られるため、大抵のケースでは太陽光発電の自家消費だけで全戸に電気をバックアップすることはできません。
しかし、太陽光発電をマンション共用部のみに接続することで、限られた設置面積だけでも「自家消費率30%」のFIT適用条件をクリアできる場合があります。
マンション共用部の電気代削減をしながら、余剰電力を電力会社に売電することで、物件の収益向上につなげられます。
余剰売電、自家消費どっちがいい?
FITによる買取価格の低下と再エネ賦課金の上昇などによる電気代の高騰によって、太陽光発電の電気は売電よりも自家消費する方が経済的メリットが得やすい状況にあります。
とはいえ、マンションなど設備の設置面積が限られる場合や、年間を通して使用電力が少ないなど条件によっては、FITを活用することで、100%電力を自家消費よりも経済メリットを高められる可能性があります。
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