【2023年度最新】太陽光発電の固定買取価格(FIT)の内容・変更点を解説

2022年1月に公開された調達価格等算定委員会による「令和4年度以降の調達価格等に関する意見」では、2023年度の固定価格買取制度(通称:FIT)による再生可能エネルギーの買取単価が公開されています。

太陽光発電の買取単価は、年度ごとに改定されており2023年度の買取単価に関しては、kWあたり単価が10円の大台を下回るケースもでてきました。

今回の記事では、太陽光発電事業者やこれから太陽光を検討されている方に向けて、2023年度のFIT改正に関する変更点や最新状況をお伝えし、費用を抑えるポイントについても解説しております。

【追記】2024年度から、屋根設置型太陽光のFIT買取価格が割増

経済産業省は、工場や倉庫など建物の屋根に設置した太陽光パネルで発電した電気を高く買い取る制度を2024年度から開始します。

具体的には、固定価格買い取り制度(FIT)で、平地に設置した太陽光より2割から3割高い買取価格に設定する見込みです。

2023年度の買取価格は10kW以上50kW未満は10円/kWh、50kW以上250kW未満は9.5円と決まっています。これに対し、2024年度のは屋根設置型の事業用太陽光発電は12円になります。

住宅用・事業用太陽光発電(入札対象外)の2024年度の買取価格は以下のとおりです。

電源 10kW未満 2022年度 2023年度上半期 2023年度下半期 2024年度
住宅用 10kW以上50kW未満 17円 16円 16円
事業用(地上設置) 10kW以上50kW未満 11円 16円 10円
50kW以上(入札対象外) 10円 9.5円 9.2円
事業用(屋根設置) 10kW以上50kW未満 11円 10円 12円 12円
50kW以上 10円 9.5円 12円 12円

(参照元:再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制|経済産業省)

太陽光パネルを設置する場所で買取価格に差をつけるのは初の試みです。今回の決定は、工場や倉庫などに設置する場合の、足場などの建設コストが考慮されたとみられます。

当社では倉庫のお客さまからも多数のご相談を承りますが、電気使用量が少ない物流倉庫などでは完全自家消費によるメリットが出しにくく、余剰売電をおすすめするケースがあります。

この変更によって余剰売電を行うメリットが大きくなれば、倉庫・運送業のお客さまにも太陽光発電導入しやすい状況になるのではないかとみています。

(参照元:工場や倉庫の屋根で発電、高値買い取り 経産省|日本経済新聞)

【2023年度】太陽光発電の固定買取価格

2022年までのFIT買取単価の推移
2022年までの固定価格買取制度(FIT)による買取単価の推移

まずは、2022年度と2023年度の買取価格の比較をみていきましょう。

事業用太陽光発電では10円を下回る

事業用太陽光発電(発電区分10kW以上)の太陽光発電では、買取価格が10円を下回る区分が出てきました。2023年度と2022年度の買取価格は下記のとおりです。

区分 2023年度(FIT/FIP買取価格) 2022年度(FIT/FIP買取価格)
10kW以上50kW未満 10円/kWh 11円/kWh
50kW以上250kW未満 9.5円/kWh 10円/kWh
250kW以上500kW未満 FIT・FIPの選択制 ・FIT:入札制度による ・FIP:9.5円/kWh FIT・FIPの選択制 ・FIT:入札制度による ・FIP:9.5円/kWh
500kW以上1MW未満 FIPのみ:入札制度による

50kW以上250kW未満の発電区分では、2022年度の10円/kWhから9.5円/kWhとなります。

ただし、250kW以上500kW未満でFIP制度を適用した場合、9.5円/kWhとなり、電力需給によって買取価格が変動します。

2023年度に新しく太陽光発電システムの設置を検討する場合、9.5円から10円の買取価格で採算が合うのか慎重に計画を進めていく必要があります。

関連記事:FIP制度とは?|仕組み・メリット・デメリットを解説

家庭用太陽光発電は2022年度から1円低下

家庭用太陽光発電(発電区分10kW未満)の固定買取価格は、2022年度の1kWhあたり16円(1円低下)に落ち着きました。

区分 2023年度 2022年度 2021年度
10kW未満 16円 / kWh 17円 / kWh 19円 / kWh

家庭用太陽光発電の場合、事業用に比べると設備規模が小さくなるため買取価格が高めに設定されているのが特徴です。

ただし、太陽光発電の設置件数増加や設備にかかるコストの減少に伴い、今後も買取価格は減少される見込みです。

買取価格の下落幅は想定より抑えられている

太陽光発電の買取価格は毎年低下しているものの、2023年度は下落幅を抑える動きがみられました。

たとえば家庭用の買取価格は、毎年度「2円/kWh以上」で低下してきましたが、2023年度は「1円/kWh」の低下に抑えられています。

また、50kW以上250kW未満では買取価格9円/kWhとなるという予想がみられましたが、9.5円/kWhに調整されました。

この背景には、国としても2030年までに120GW規模の太陽光発電導入という野心的な目標を掲げていることや、買取価格の据え置きを求める声があったことが要因として考えられます。

買取価格の減少は初期コストと関係している

固定価格買取制度の買取単価が低下している背景には、太陽光発電の初期コストが安くなっていることが関係しています。

買取価格は太陽光発電システムのコストをもとに決められおり、いつ導入しても初期コスト回収期間が極力変化しないように材料などの価格変動を加味して固定価格買取制度は調整されています。

初期費用が安くなった理由

太陽光発電システムの初期コストが安くなったのは、下記のような要因があります。

製造技術の進歩
半導体の加工技術の蓄積などによって、少ない材料でもよく発電する太陽光パネルの製造が可能になりました。
中国での製造拡大
中国において多数の事業者が参入し価格競争が起きるなかで、技術が発達し製造コストの低下に繫がった。
施工コストの低下
太陽光発電の施工業者の効率が上昇し、施工単価が低下した。

太陽光発電にかかる費用を抑えるポイント

太陽光発電の初期コストが低下していることをお伝えしましたが、そのうえでさらに費用を抑えるためのポイントを紹介します。

発電効率の高いシステムを導入する

発電効率が高い太陽光パネルやパワーコンディショナーを導入することで、初期費用を早く回収し、費用を抑えることに繋がります。たとえば太陽光パネルの素材では以下のような違いがあります。

単結晶シリコンのパネル
素材の純度が高くパフォーマンスが高い。発電効率20%台が見込める。
多結晶シリコン・化合物系のパネル
結晶の密度が低く、単結晶よりは発電ロスが出る。発電効率14%〜20%が見込める。

製品ごとに性能が異なるため、コストと相談しながらできるだけ高効率な製品を選定することが大切です。

設置条件によって最適な設備は異なるため、複数メーカーと提携していて選択肢が豊富な太陽光業者への相談がおすすめです。

補助金を活用して太陽光発電を導入

国や自治体が設けている補助金制度を活用できれば、太陽光発電にかかる初期費用を抑え、投資回収が早まります。

たとえば、環境省の補助事業「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」に採択された場合、1kWあたり4〜7万円が補助されます。

国や自治体のウェブサイトや窓口で、自力で調べるのは手間がかかるため、補助金申請サポートをしてくれる業者へ依頼するのも1つの手です。

関連記事:《最新2023年度》太陽光発電の補助金まとめ(事業用/自家消費)

太陽光発電で売電するための手続き

太陽光発電で売電をするためには、電力会社との契約や、経済産業省への設備認定申請がひつようになります。手続きは短くても2カ月はかかるとみて、余裕を持って計画を進めることが大切です。

系統連系申請
太陽光発電システムと電力会社の送配電網を繋ぐための手続きです。系統連系申請書・系統連携協議依頼票・単線結線図などの書類が必要です。
電力会社によって書類の様式が異なるほか、申請から承認までに数カ月かかるケースもあるため、書類の不備がないよう注意しましょう。
事業計画認定申請
固定価格買取制度を利用する太陽光発電の設備を、経済産業省から認めてもらうための手続きです。接続の同意書・構造図・配線図などが必要になります。

2023年度に太陽光発電を活用するには

2023年度に新しく太陽光発電を始めるには、どのようなタイプの発電所を設置すべきか挙げていきます。

売電型の太陽光発電なら中古発電所がおすすめ

2023年度以降に売電型の太陽光発電をしたい場合は、中古の太陽光発電所がおすすめです。

その理由は、先述したように、固定価格買取制度の買取価格の単価が低下しているほか、2020年度からは「10kW〜50kWでは、発電した電力のうち30%を自ら消費」という条件が付与されているためです。

一般的に中古と聞くと使い古しのイメージがつきますが、太陽光の場合は以下のようなメリットがあります。

  • 過去の高い買取価格が適用される
  • 過去の売電実績が確認でき、収支予測が立てやすい
  • 新規と異なり、設置工事や固定価格買取制度の手続きに手間がかからない
  • 購入後はすぐに売電を始められる

「自家消費型太陽光発電」を導入する

企業が太陽光発電を導入する際、発電した電気のうち余った分を売ることに注目しがちですが、ここ数年は完全に自家消費するほうが経済的にメリットが出やすい状況です。

たとえば関西電力の「法人向け低圧電力」契約の場合、電力量料金は約14円かかります(2022年12月時点)。一方、2023年度は、10kWから50kWの太陽光のFIT買取価格は10円です。

つまり、「10円で電気を売るよりも、14円で購入する電気の量を減らす」ほうが費用対効果を高められます。

固定価格買取制度を利用し、余剰売電を行う太陽光発電事例

太陽光設置お任せ隊(運営:株式会社ハウスプロデュース)は、これまでさまざまな企業のお客さまの太陽光発電導入をサポートして参りました。

当社の事例の中で、固定価格買取制度による余剰売電を活用した自家消費型太陽光発電の導入事例をご紹介します。

FIT適用した自家消費型太陽光の導入事例

木材加工工場での電気代削減事例
(株式会社アザーワンさま 屋根上)

木材加工によるTV・イベントなどのブース作成や、手作り家具の製作を手掛ける「株式会社アザーワン」さまでは、以下の目的に向けて導入を支援させていただきました。

  • 工場の電気代削減
  • 自家消費 + 余剰売電で年間70万円のコスト削減
  • 自社のCO2排出量削減による環境面からの社会貢献
  • 非常用電源としての活用

まとめ

  • 2023年度の事業用太陽光の固定買取価格は、2022年度より1円低下
  • 「完全自家消費」の太陽光の経済的メリットが高まっている
  • 売電単価低下も余剰売電 + 自家消費で十分な経済効果が見込める

株式会社ハウスプロデュースは、創業から29年、太陽光発電の施工において累計6,500件以上の実績を積み、自社でも太陽光発電所を保有することで設計ノウハウを蓄積してきました。

小規模から大規模まで多数のシミュレーションに対応可能なほか、「最短で費用を回収する設計・部材選定」や「20年・30年度のメリット最大化」を追求した提案・設計を行います。

太陽光発電で電気代削減や脱炭素経営に取り組みたい企業の方は、まずはお気軽にハウスプロデュースまでお問い合わせください。

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執筆者:太陽光設置お任せ隊

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EPC事業者として、全国6,500件以上の産業用太陽光発電の企画提案から設備導入まで一貫して手がける株式会社ハウスプロデュースの記事編集チームです。第一種電気工事士・第三種電気主任技術者・一般耐震技術認定者・エネルギーマネジメントアドバイザーなどの有資格者が在籍し、一次情報や専門家からの取材を基に、現場から得たノウハウを活かしたコンテンツ作りに取り組んでいます。

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