昨今の固定価格買い取り制度(FIT)の買取価格低下と、電気料金の上昇傾向を考慮すると、太陽光発電を導入する際には、発電した電力を売電せず自家消費する方が、経済的に有利になるケースが増えてきました。
本記事では、その理由やメリットについて、分かりやすく解説します。
- 自家消費と売電はどちらが得なのか
- 自家消費型太陽光発電へ切り替えまたは導入するメリット・デメリット
- FIT買取期間終了後に自家消費しない場合の選択肢
現在太陽光発電を運用している方と、これから導入する方のどちらも参考になる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
売電より自家消費がお得になっている
2023年以降に太陽光発電を始めるなら、売電より自家消費のほうが経済的なメリットが出やすいです。それには、近年では、グリッドパリティが起こっていることが関係しています。
自家消費がお得な背景にはグリッドパリティが関係している
グリッドパリティは、再生可能エネルギーによる発電コストが従来の電力供給源と同じか、それよりも安くなる状態のことを指します。
簡単に言うと、太陽光発電で作った電気の方が電力会社から買う電気よりも安くなることです。
具体的な数値を使って家庭用太陽光発電の例を見てみましょう。
家庭用太陽光のFIT売電価格(2022年) | 17円/kWh |
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関西電力(従量電灯A)の電力量料金(120kWh〜300kWh) | 約26円/kWh |
2022年の家庭用太陽光発電のFIT(固定価格買取制度)による売電価格は1kWhあたり17円です。
一方で、関西電力の従量電灯Aプランの電力量料金は約26円です。
この例では、市場価格である26円で購入する代わりに、自家発電した電気を使用することで、1kWhあたり9円の節約になるという計算です。
関西電力(従量電灯A)以外でも、多くの電力プランにおいてグリッドパリティが起こっており、太陽光発電を新しく導入する際は、売電よりも自家消費が推奨されています。
ストレージパリティの達成に向けた取り組みも進んでいる
グリッドパリティの考え方と同様に、「太陽光発電のみよりも、蓄電池をセットで導入したほうが経済的メリットがある状態」であるストレージパリティの達成が求められています。
政府はストレージパリティの達成に向けて、一部補助金は「蓄電池が必須」という要件を設けるなどの取り組みを行っています。蓄電池の価格をみて導入を様子見される方もいますが、補助金制度が設けられているうちに設置を検討するのも1つの手といえます。
太陽光発電を自家消費に切り替えるメリット
(家庭・企業)買取価格の変動に左右されない
FIT終了に合わせて自家消費型太陽光発電に切り替える場合は、電力の買取価格の影響を受けずに稼働できます。
FITの買取期間終了後、電力会社のプランに沿って売電する場合は、以下のようなデメリットが発生します。
- 固定価格での売電が継続できない
- 電力会社のプランの多くはFITの固定買取価格より安い
- 電力市場の状況で価格が変動する
自家消費に切り替えることで、上記の影響を受けずに運用できます。
(家庭・企業)電気代削減効果が大きくなる
自家消費型に切り替えることで電気代削減効果が大きくなるため、電気代を抑えたい方にとってはメリットがあります。
太陽光で発電した電気をすべて家庭・企業で自家消費するため、そのぶん電力会社から電気を買わずに済みます。
2022年は国際情勢の変化や円安などの影響から起きた電気代の高騰が、家計や企業収支に大きな打撃を与えました。
こういった状況では、売電収入で電気代の上昇分をカバーするより、自家消費のほうが効率的なコスト削減に繋がります。
(家庭・企業)非常用電源として活用できる
太陽光発電を自家消費型に切り替えることで、非常用電源として活用ができます。
住宅の場合は、停電時でも照明・冷蔵庫・電子レンジなどを稼働させられます。また、ラジオやスマートフォンの充電ができるため、停電状況や避難状況などを取得できます。
企業の場合は、パソコンを稼働させることで、データ損失リスクの低減や最低限の事業活動に繋がります。また、今は災害時の無料無線Wi-Fiが整備されていますので、スマホの充電に活用することで従業員の安否確認が取りやすくなります。
ただし、太陽光パネルのみの場合は日光が出ていなければ発電できないため、常に非常時の停電に備えるためには蓄電池の導入が必要な点に注意しましょう。
(家庭)好きな時間に電気を使えるようになる
太陽光パネルのみ設置している場合、日光が出ている時しか効果を発揮することができません。
そのためオール電化の家庭では、エコキュートで風呂のお湯を沸かすなど電力使用の大きい機器の稼働は、電気代が安くなる夜間に行うといった節電対策をするケースが珍しくないようです。
太陽光発電を自家消費に切り替えて蓄電池を導入すれば、電気代が高い時間は蓄電池にためておいた電気を使えるため、時間を気にせず電気を使えるというメリットもあります。
(企業)脱炭素経営に繋がる
企業が太陽光発電で自家消費する場合は、自社の脱炭素経営を推進でき、取引先など対外的に環境への取り組みをアピールできます。
また、近年は世界的に脱炭素・カーボンニュートラルに向けた活動が求められています。実際に、Appleが主要な製造パートナーの脱炭素化の取り組みを求めたり、トヨタ自動車が取引先にCO2削減目標を提示したりといった動きも出ています。
2023年以降、このような動きが加速することは間違いないといえます。太陽光発電の自家消費によって、クリーンエネルギーで事業を行っていることを取引先や消費者に伝えることが、取引先の増加や取引の安定化に繋がります。
太陽光発電を自家消費に切り替えるデメリット
先述したように、太陽光発電を自家消費に切り替えるメリットは多数あります。一方で注意点もあるため、ここで挙げていきます。
自家消費に関する工事や設備の費用がかかる
太陽光発電を売電型から自家消費に切り替える場合は、逆潮流を防止するためのシステムや配線の工事などが必要になります。また、家庭用太陽光の場合は新たに蓄電池を導入するケースが多いです。
(※逆潮流:家庭・企業の太陽光パネルで発電した電気が、電力会社側に向かって流れること)
そのため、切り替えのためには費用が発生します。家庭用蓄電池でいえば、容量によって変動しますが100万円から300万円の費用が相場です。
家庭用太陽光発電でFIT終了が迫っている方は、早めに業者と相談し、自家消費による経済的メリットと切り替え費用が釣り合うのか試算しておくことをおすすめします。
家庭用は蓄電池を併設しなければ効率的な稼働が難しい
家庭用太陽光発電で自家消費する場合、効率的に電気代を削減するには蓄電池の導入がカギになります。
日中にたくさんの電気を使用する企業と異なり、家庭では夜に仕事から帰宅し電気を使用するケースが多いでしょう。
しかし太陽光発電システム単体では電気を貯められないため、早朝・夕方・夜間の自家消費ができません。
そんな場合でも蓄電池を併設していれば、電気をあまり使わない時間帯は蓄電池に電気を貯め、電気を多く使う時間に自家消費ができます。
注意点は、先述したように蓄電池の導入費用がかかることです。初期費用とその回収期間について、信用できる販売店や施工会社とよく相談しましょう。
買取期間終了後に、再度FITを利用することは可能?
いちどFIT(固定価格買取制度)を利用した場合は、同じ場所で太陽光発電設備を更新しても、再度固定価格での売電はできません。
一般的に太陽光パネルの寿命は20年から30年といわれていますが、FITにおける家庭用太陽光発電は「最初の10年は制度に沿った売電を行い、その後10年から20年は自家消費か自由契約の売電を行う」ことを前提として制度が設計されているためです。
産業用太陽光発電の場合はFIT買取期間が20年間あるため、買取期間が終了する案件が出てくるのはまだ先の話になります。ただし、いずれにしても買取期間が終了する前に20年後以降の運用方法を検討しておく必要があります。
自家消費に切り替えない場合の選択肢
自家消費型太陽光発電に切り替えない場合、どのような選択肢があるのか解説していきます。
継続して電力会社へ売電する
蓄電池の追加導入を前提とした自家消費への切り替えがコスト面で見合わない場合は、継続して余剰電力の売電をするのも選択肢の1つです。
その場合、既存の電力会社への売電を継続する方法と、新電力を含めて新しい売電先を探す方法があります。
売電先を変える
複数の電力会社を比較検討し、以下のような要望に合う電力会社があれば、売電先を変更することが望ましいです。
- 1円でも買取価格が高いところに売電したい
- もともとガスを契約していた事業者が電力事業も始めたなど、馴染みのある会社に依頼したい
- 今の電力会社より自分の家に合った電力プランがある
売電先の変更手続き自体は、書面や電話のやり取りで済む事業者が多く、そこまで難しいものではありません。そのため、蓄電池の価格が落ちるまで売電先の変更で様子をみる方もいます。
売電先はそのまま
買取期間終了時点で以下のような状況である場合は、いったん売電先はそのままで継続するのも1つの手です。
- 今の電力会社から変更する決定的な判断要素がない
- 比較検討や売電先変更の手続きの時間がとれない
- 特定の時間帯の電気が安いプランで契約しており、それに合わせた生活スタイルをしているので崩したくない
条件の良い売電先が見つかってから改めて変更ができるのほか、自家消費への切り替えも後から可能です。情報収集しつつ既存の売電先で様子を見ましょう。
しばらく売電を継続してから自家消費に切り替えも可能
蓄電池は、必ずしもFITの買取期間終了のタイミングで導入しなければならないわけではありません。
そのため、まずは自由契約による売電を継続して、蓄電池の価格の動向やニーズに合った商品の販売情報などをチェックしつつ、タイミングを見計らって自家消費に切り替えるという方法をとることも可能です。
(参照元:どうする?ソーラー 私の選んだ選択肢|資源エネルギー庁)
太陽光発電システムを撤去する
太陽光発電の経済的なメリットより維持管理費用が大きく、どうしても導入している意義が感じられない場合は、撤去という選択肢もあります。
ただし、FITの買取期間終了による売電収入の低下や、設備の劣化を理由として運転を停止させる場合は自己都合となり、費用が発生する点に注意が必要です。
撤去費用は、住宅用太陽光発電の場合の場合は15万円前後、産業用太陽光発電の場合は数十万円から100万円単位の費用を負担するケースもあります。
太陽光発電は20年から30年近く稼働するため、初期費用を回収した後もメリットが出る設備です。そのため運用しながらメリットを高めていく方法を模索するのが基本線になります。
自家消費と売電で迷ったらまずはプロに相談
- 一概に売電・自家消費のどちらが得とは断言できないが、自家消費のほうが経済メリットが出やすい状況である
- 自家消費で運用することで、電力市場に左右されず電気代削減に注力できるほか、非常用電源としての機能が得られる
- 自家消費に切り替えるための費用が発生するほか、家庭用は蓄電池がなければ効率的な運用は難しい
- FIT買取期間終了後は、しばらく売電を継続して様子をみてから自家消費に切り替えるのも1つの方法である
家庭・企業の電力使用状況や設置条件などを考慮しつつ、最適な運用方法で稼働することが、太陽光発電のメリットを高めるために重要です。
経験豊富で対応力のある太陽光事業者とよく相談し、運用の方向性を決めていくことをおすすめします。
当社は太陽光発電導入の際のシミュレーションにこだわりを持っており、お客さまごとに最適なパネル枚数・配置・部材選定などを追求します。
また、電気使用状況を細かくヒアリングし、余剰売電・自家消費含めてどのように運用すればメリットが出るのかお伝えします。
導入を検討されるお客さまには、電気使用量などお伝えいただければ無料で導入効果をシミュレーションいたします。太陽光発電にご興味がある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。