スーパーマーケットの電気代削減を見直すポイントとして、まずは設備利用率が多い照明や冷凍・冷蔵用の空調設備の省エネ化を図る必要があります。
ここでは、スーパーマーケットで有効とされる設備投資による省エネと費用をかけずにできる省エネについて解説します。
目次
スーパーマーケットにおける電気代削減方法
電力の需要構成を把握
電気代削減の方法を考える前に、まずは自身が運営している店舗で「何にどのくらいの電気が使われているか」を把握することが大切です。
環境省が取りまとめる「民生(業務)分野における温暖化対策技術導入マニュアル」を参考にスーパーマーケット(以下、スーパー)における電力需要の構成を確認してみましょう。
店舗の規模や事業内容によって異なりますが、一般的にスーパーで消費される電気は照明設備と空調設備が大半を占めます。大型店舗では、店舗内外の照明やディスプレイ用照明などが、全体の電力消費のうち6割程度を占めています。
環境省の資料によると、延べ床面積1万平方メートル程度のスーパーでは年間電気料金が7千万円程度(従量料金のみで基本料金は含まない)という事例もあります。
売り上げに占める電気代をコストカットすることで、その分利益を上げることができます。
電力消費の割合が大きい設備への対策を行う
大規模店舗では照明設備・空調設備が電力消費の割合の大半を占めており、小規模店舗では冷凍・冷蔵設備が割合の大半を占めていますので、改善すべきポイントが見えてきます。
店舗ごとに電力消費の割合が大きい設備から対策を行うことで効果的に電気料金を抑えることができます。
費用をかけずに電気代を削減できる設備の使い方
電気代削減には省エネ設備の導入などさまざまな方法がありますが、まずは費用をかけずに電気代を削減する方法から考えていきましょう。
空調設備の使い方を工夫する
空調設備の電力消費を抑える方法として下記のような方法があります。
- 建物内の予冷・予熱時に外気を入れない
- 冷暖房の設定温度の適正化を図る(例:冷房28℃、暖房20℃以下等)
- 冷暖房時間の短縮を図る(例:運転開始は開店時以降に、運転停止は閉店30分前(冷房)60分前(暖房)にする)
- ダクト内の清掃や空気漏れの点検・修理、フィルターの適正保守等をこまめに行う
引用:民生(業務)分野における温暖化対策技術導入マニュアル(PDF)|環境省
空調設備の電力消費を抑えるポイントは、夏季と冬季の温度設定と稼働時間を工夫することです。
まずは、空調設備の設定温度についてです。政府が推奨する室内温度は「冷房時28℃、暖房時20℃」とされています。 お客様や従業員の様子を伺いながら空調設備の温度設定を緩和することで電気代を削減できます。
夏季の温度設定を1℃上げ、冬季の温度設定を1℃下げることで、熱源エネルギーをそれぞれ約10%削減することが見込めます。
次に、空調設備の稼働時間を工夫する方法です。
営業時間中のほとんどで空調設備を稼働しています。冷凍・冷蔵用ショーケースがある店内の場合、閉店時間の30分から1時間ほど前から空調設備の運転を停止することで電力消費を抑えます。たった30分程度と思いがちですが年間にすると相当な電力を削減できます。
照明設備の使い方を工夫する
照明設備の使い方を工夫して電気代を抑える方法を紹介します。
まずは、日光によって店舗内が明るくなる場所がある場合は、安全性を保てる範囲で消灯しておきましょう。店舗内照明やショーウィンドウ、ネオン看板などの照明は、開店前や閉店後は消灯するなどのルールを設けることも効果的です。
ただし、店舗のエリアや企業の方針などにより、防犯やPRのため閉店後にあえて消灯しないケースもあります。電気は普段から従業員も使用するため、バックヤードや常時使用しない部屋の電気は消灯を呼びかけるのもポイントです。
店舗内が必要以上に明るいと感じている場合は、定期的に照度計などで照度を測定して過剰な照明は消灯しておくこともおすすめです。
また、照明設備の清掃も心がけましょう。一般的なオフィスでも照明設備にホコリや汚れなどが付着することで、1年間で約10%から15%減光するといわれています。少なくとも1年間に1度は照明設備を清掃しておきましょう。
ショーケースの使い方を工夫する
店舗閉店後のショーケースにはナイトカバーを取り付けることで、ショーケース内の温度を保ち省エネ効果が高まります。 冷凍機がある場合は、冷水温度を下げることで消費電力を削減できます。また、ショーケースの商品の陳列を工夫することでも電気代削減効果を得ることができます。
冷蔵・冷凍用のショーケースには冷却効果を保ちやすくするためエアカーテンが配備されているものがあります。 ロードライン(積荷限界線)を超えて商品を陳列させてしまうとエアカーテンの効果が低下し、エネルギー消費が上がります。
従業員への指導などによってロードラインの管理を強化することで高い省エネ効果を発揮します。
冷水温度と冷凍機の消費電力には関係性があり、冷水温度を7℃から9℃に上げるとインバータ入力(消費電力)がおよそ7.5%減少します。 また、CFC・HCFCなどのフロンが用いられている冷凍機などは、フロンが漏洩することでオゾン層破壊や温暖化などを引き起こします。
漏洩防止のため、定期的にメンテナンスをするとともに、廃棄の際には適切に処分しましょう。
省エネ型設備の導入による電気代の削減
省エネ型照明設備
Hf型照明器具のメリット
Hf型照明器具は専用インバータと専用ランプを組み合わせて点灯します。優れたランプ効率(消費電力あたりの光源全体の明るさ)があり、高い省エネ効果を得られます。
HIDランプのメリット
高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、高圧蛍光水銀ランプなどの総称をHIDランプ(高輝度放電ランプ)といいます。白熱電球に比べて、電灯1つあたりの光束(光源全体の明るさ)が大き、く長寿命・高効率であるため経済的にも優れています。
発光効率に優れたHIDランプを採用することで高い省エネ効果を得られますが、点灯には電流を制御するための安定器を併用する必要があります。
店舗の駐車場などの照明に水銀灯が使用されている場合、メタルハライドランプに交換することで約4割程度の消費電力削減に繋がります。(投資回収は約2.1年)
センサー付き照明のメリット
センサーによる自動制御付きの照明器具に切り替えることで、太陽光や人間を感知して点灯・消灯・明るさを調整し不要な消費電力を削減してくれます。
あらかじめ照明設備にセンサーがついているものや、20から30台程度の照明器具を制御できる別置き型センサーもあります。
近年では、日中は明るくなる窓側の照明のみ明るさを抑えるなど微調整ができるものもあり、センサー付き照明の性能が向上しています。
センサー付き照明設備に切り替えることで、蛍光灯を使用している店舗や点灯時間が長い店舗などで高い省エネ効果を発揮します。
タイマーによる自動制御のメリット
センサー付きの照明設備までは不要という場合は、タイマーで自動制御できるものもあります。あらかじめ点灯する時間帯や曜日を設定しておくことで照明の消し忘れなどを防ぐことができます。
冷凍・ 冷蔵設備
省エネ型ショーケースのメリット
従来の冷凍・冷蔵用ショーケースを使用している場合は、省エネ性能に優れたショーケースに変更することで電気代を大きく削減できます。
近年では、店舗の電力消費のタイムスケジュールに合わせて周期的に運転を停止するものや、時間帯に合わせてケース内の温度をコントロールしてくれるものもあります。
ショーケース照明へのインバータ導入のメリット
インバータは、圧縮機の回転数を設備の負荷に合わせてコントロールして省エネを図ることができる装置です。
ショーケース用の照明設備にインバータ装置を取り付けることで、照明による電力消費の削減に加えて、照明からの発熱量が減少することで冷却効率が高まります。
冷凍・冷蔵コンプレッサーのマルチ化、マイコン化のメリット
通常、コンプレッサーは冷媒の圧力が一定以上かかると自動停止と起動を繰り返すことで、規定値の温度を保っています。 しかし、頻繁に電源のオン・オフを切り替えることで電力の消費効率も悪くなります。
このような場合、冷凍・冷蔵用のコンプレッサーをマルチ化またはマイクロコントローラー搭載のものにすることで、電源を停止せずコンプレッサーの回転数を制御して>電力消費の無駄を省けます。
集中型と比べてランニングコストを削減できるメリットがあります。
ただし、マルチ化になることでコンプレッサーの制御・管理が複雑化することやメンテナンスが煩雑となるデメリットもあります。
建物全体の省エネ型のシステムの導入による電気代の削減
空調設備に関する省エネ型のシステム
外気冷房システムのメリット
外気冷房システムは、冬期や春・秋といった中間期に外気の温度と湿度が室内よりも低い場合に積極的に外気を室内に取り込むことで冷房負荷を軽減して室内の温度を下げることができます。
通常の冷房システムと比較して約10%から20%の熱エネルギーを削減できます。外気を直接取り込むため湿度管理や除塵処理などが必要となります。
全熱交換器のメリット
換気扇は屋外から空気を取り入れるための給気用ファンと室内の空気を排出するための排気ファンがあります。換気システムの省エネ化として、換気扇を全熱交換器に変更することで空調設備の負荷の軽減に繋がります。
全熱交換器は、外気から室内に送られる空気熱と室内から屋外に排気される空気熱を全熱交換器内部の「熱交換エレメント」によって交差させることで、室内の温度を保ったまま空気を換気できます。
200平方メートル規模の小規模店舗や飲食店に全熱交換器を1台導入した場合、年間で数万円ずつ節電効果があり、投資回収期間は約3年と見込まれています。
高効率ヒートポンプのメリット
ヒートポンプの入れ替え時期が迫っている場合、高効率なヒートポンプに交換することも省エネ対策として有効です。
ヒートポンプの省エネ性能を表す値としてCOP(Coefficient of Performance)という成績係数があります。 COPは、1kWhの電力消費に対してどのくらいの性能を引き出せるかを数値化したものです。
COPの値も参考にして高効率なヒートポンプに変更することで、電力消費を抑えられ、契約電力の低減に繋がりますので、施設規模に関わらずランニングコストを削減できます。
ガス吸収式空調システムのメリット
ガス吸収式空調システム(ナチュラルチラー)は、冷媒として水の気化熱を利用して冷房を行います。フロンをまったく使用しないため環境に優しい空調システムといわれています。
また、ガス吸収式空調システムの特徴として、都市ガスや再生可能エネルギーなどをエネルギー源として稼働させることができます。
デシカント空調システムのメリット
デシカント空調は、除湿ローターによって空気中の水分を除去することで温度をコントロールするシステムです。従来の空調システムと比べてエネルギー効率が高いです。 また、柔軟に室内空気をコントロールできますので、湿度管理や除菌などが求められる施設で高い効果を発揮します。
冷凍・ 冷蔵設備に関する省エネ型のシステム
空調・ショーケース一体型機器のメリット
冷凍用ショーケースには冷凍機内蔵型と別置き型があります。冷凍機を別置き型にすることで複数のショーケースを1台の冷凍機でまとめて制御でき、内蔵型と比べてランニングコストを安価にできます。
また、連続感のある商品の陳列を演出できることや、内蔵型と比べて店内への排熱を抑えられるため室内の温度上昇を軽減する効果もあります。
その他の省エネ型のシステム
ガスコージェネレーションのメリット
ビルや集合住宅など熱需要が高い施設では、原動機にガスを燃料として利用するガスコージェネレーションを採用することで、電力供給と空調管理・給湯などを同時に行うことができ、総合的にエネルギー効率を高めることができます。
バイオマス資源を活用したメタン発酵のメリット
施設で排出された生ゴミや畜糞などの廃棄物を利用して熱電供給を行うメタン発酵システムもあります。現在では実証実験の事例もあり、さらなる技術発展が期待されています。
再生可能エネルギーのメリット
施設で使用される電力を太陽光発電で作った電気によって賄います。 電力会社から購入する電力が減らせるので電気料金に含まれる再エネ賦課金・消費税・燃料調整費など将来の電気料金の変動に要因に対するリスクを軽減できます。
高島屋グループにおける電気代削減事例
高島屋グループでは以下の設備投資と取り組みによって年間 3.9 億円の省コストと省エネルギーを達成しています。
電気代削減に対する基準の策定
高島屋グループでは、電気代削減に対して評価基準を4つの部類に分けて策定しています。
- 省エネ管理、環境基準、各店におけるエネルギー使用量の削減目標設定と使用分析
- 照明送電時間、空調運転時間、空調温度などについての管理値の設定
- 用度品管理、環境基準設定
- 環境適合商品の設定
引用:民生(業務)分野における温暖化対策技術導入マニュアル|環境省
実施した設備投資
- 空調用インバーター風量制御
- 雑用水槽保有熱回収(給水系統の1/2を温め給水)
- 誘導灯夜間消灯の実施(非常時は点灯することを条件)
- 照明高効率ランプ器具の採用
- 照明回路の段階的点・消灯構成
- 節水フラッシュバルブの採用
- 節水コマ採用(水頭圧比例タイプ)
- 昼光センサ設置による外光利用
- 空調機ドレン水の利用(中水道原水利用)
- 自販機の深夜停止及び省エネタイプへの切替え
- 電力自由化に伴い、新規電力供給者、IPPの選択による省コストの推進
引用:民生(業務)分野における温暖化対策技術導入マニュアル|環境省
まとめ
スーパーマーケットは、主に利用率の高い照明・空調から省エネ化を測ることで大きく電気代を削減できる可能性があります。
設備の使用方法を見直したり、設備の交換時期が近い場合は省エネ効率の高いものに変更してみることも検討しましょう。
太陽光設置お任せ隊(運営:株式会社ハウスプロデュース)では、スーパーマーケットの電気代削減方法の1つである「自家消費型太陽光発電」をおすすめしております。スーパーマーケットのように、使用電力量が多い業種では大きな削減効果が出る可能性があります。
自家消費型太陽光発電については、以下の記事でも詳しく解説していますので、こちらもぜひご覧ください。