世界中で技術革新が進むなか、日本の中小企業は設備の老朽化や導入資金の調達などの問題から、労働生産性は伸び悩んでいるのが現状です。
そこで2018年6月6日に生産性向上特別措置法が施行されましたが、いまいち内容がわからないと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、生産性向上特別措置法やそれに基づく先端設備等導入計画、申請方法などについて解説しています。
目次
生産性向上特別措置法の概要
生産性向上特別措置法は2018年6月6日に施行されたもので、おもに中小企業の支援を目的とした法律です。近年ではICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)が目まぐるしいほどの進歩を遂げており、ビッグデータや人工知能といった技術革新が世界規模で起きています。
そこで政府は「生産性革命」を実現させるべく、2020年までを「生産性革命・集中投資期間」として、中小企業の設備投資に対しての支援を行っていました。
しかし、新型コロナウイルスの影響を受け、適用期間を令和5年3月31日まで延長しています。
先端設備等導入計画とは?
生産性向上特別措置法による支援として、「先端設備等導入計画」があります。これは、中小企業等が設備投資を通じて、労働生産性の向上を図るための計画としており、税制支援や金融支援が用意されています。
先端設備等導入計画は、導入設備が所在する市区町村の「導入促進基本計画」に合致していれば認定が下り、支援内容を活用できます。ただし、所在する市区町村が国から「導入促進基本計画」の同意を受けていることが条件です。
また、導入促進基本計画は各市区町村が策定するので、対象となる設備や地域、業種などは市区町村によって異なる場合があります。
認定を受けるために必要なもの
先端設備等導入計画の認定を受けるには、おもに以下のものが必要となります。
- 先端設備等導入計画の申請書
- 認定支援機関(認定経営革新等支援機関)による事前確認書
- その他、市区町村長が必要と認める書類
- 工業会証明書(税制措置の対象となる設備を含む場合)
認定には先端設備等導入計画の申請書だけではなく、認定支援機関の事前確認書が求められます。この事前確認書とは、先端設備導入で労働生産性が年平均3%以上向上するかを、認定支援機関が事前に確認したことを証明するものです。
認定支援機関は、中小企業等が経営相談を行えるよう、専門知識を持つ者に対して国が認定した公的な支援機関で、商工会議所や金融機関などがこれに該当します。
中小企業庁のホームページで、近くの認定支援機関の検索が可能です。
また、税制措置を受けるには工業会証明書が必要です。導入促進基本計画の先端設備要件を満たしていると証明する書類で、設備メーカーに証明書発行を依頼します。設備メーカーを通じて工業会などから発行されますが、申請から2カ月程度かかるケースもあります。
そのため早めの申請が必要となりますが、もし間に合わない場合は「認定後から賦課期日(1月1日)までに、様式第4による誓約書及び工業会証明書を追加提出することで3年間特例を受けることが可能」としています。
対象となる中小事業者
認定を受けられる「中小企業者」の規模は、以下のように定められています。
画像引用:中小企業庁「【生産性向上特別措置法】 先端設備等導入計画について」
税制支援では、対象となる中小企業等は以下になります。
- 資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人
- 資本金もしくは出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
- 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
ただし、資本金1億円以下であっても対象とならないケースがありますので、事前によく確認しましょう。
税制支援:固定資産税等の課税標準の特例
税制支援は生産性向上特別措置法に基づき、新たに導入する設備が導入促進基本計画に合致している場合、固定資産税の課税標準が3年間ゼロから2分の1の間で軽減されるものです。
「固定資産税等の課税標準の特例」または「固定資産税等の特例」と記載されている場合もあります。
適用期間は2020年度末までとされていましたが、令和5年3月31日まで延長しています。
対象となる先端設備等の要件は、以下のように定められています。
画像引用:所得拡大促進税制のガイドライン|中小企業庁
また、2020年4月30日の改正によって、事業用家屋と構築物が対象に追加されました。
- 事業用家屋は取得価額の合計額が300万円以上の先端設備等とともに導入されたもの
- 構築物は、旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上するもの
ただし、軽減される割合および、対象となる設備は導入促進基本計画内容によって異なる恐れがありますので、事前に設備が所在する各市区町村に確認を取りましょう。
設備取得時期の注意点
税制支援(固定資産税等の課税標準の特例)で注意したいのは、先端設備等の導入時期です。先端設備等導入計画による税制支援は、認定後の設備取得が必須と定められており、すでに導入した設備には適用されません。
現段階では特例は認められていないため、注意が必要です。
金融支援:中小企業信用保険法の特例
中小企業信用保険法の特例として、先端設備等導入計画が認定された事業者に対して、金融支援を用意しています。
具体的には、“信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証が受けられる”と明記されています。信用保証はやむを得ぬ事情によって返済ができなくなった場合、信用保証協会が代理で返済する制度です。
普通保険等とは別枠での追加保証となるため幅が広がりますが、融資や保証の審査は先端設備等導入計画の認定審査とは別途行われます。そのため、先端設備等導入計画の認定がされた事業者であっても、融資・保証が受けられない恐れがあります。
先端設備等導入計画の申請方法
先端設備等導入計画の申請には、「認定を受けるために必要なもの」で記載した必要書類を、各市区町村へ提出します。
その際、先端設備等導入計画の申請書は、中小企業庁のホームページでダウンロードが行えます。
各市区町村のホームページで、自治体用にカスタマイズされたフォーマットが用意されている場合もあります。
また、必要書類も各市区町村によって異なるため要注意です。必ず新たに導入する設備が所在する市区町村に確認を取りましょう。
同意を受けている市区町村の確認方法
中小企業庁では、「先端設備等導入に伴う固定資産税ゼロの措置を実現した市区町村」をホームページで公表しています。“固定資産税ゼロの措置を実現”のみのため、詳しくは各自治体まで確認しましょう。
また、中小企業庁のホームページにて、先端設備等導入計画の認定状況が公表されています。2020年12月31日時点では、1,655自治体で49,854件(固定資産税をゼロ以外で措置を講じた自治体を含める)が認定されており、多くの中小企業等が制度を利用していることがわかります。
太陽光発電設備は自治体によって認定判断が異なる
先端設備として対象となるかどうかは、各市区町村(自治体)に判断がゆだねられています。そのため、太陽光発電設備が認定対象となるか、それぞれの自治体に確認しなければいけません。
また、自治体によっては自家消費発電のみといった条件付きの場合がありますので、注意が必要です。
たとえば埼玉県東松山市の場合、「太陽光発電設備に関しては、全量売電を目的とせず、自己所有の建築物の屋根又は屋上に設置する設備のみ許可する」と明記されています。つまり、敷地内であっても野立ての太陽光発電設備および、全量売電目的の場合は適用されないことになります。
そのほか、太陽光発電設備設置に関する独自のガイドラインを設けている、事業所等に常駐する雇用者がいない場合は対象外、環境課との事前協議が必要など、さまざまな条件が定められています。
先述していますが、固定資産税等の課税標準の特例などは、認定後の設備取得が必須条件となりますので、これから太陽光発電設備を導入する場合は、導入促進基本計画の対象となっているか事前に確認を取りましょう。
まとめ
生産性向上特別措置法に基づく先端設備等導入計画の認定が下りることで、固定資産税の軽減措置や金融支援などが受けられます。
しかし、認定前に取得した設備は対象外だったり、太陽光発電設備には条件があったりと、申請にはいろいろと注意が必要です。
また、必要書類の用意や、申請から認定まで時間がかかる恐れがありますので、新しい設備導入を検討している場合は、早めの対策を行いましょう。
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