太陽光発電システムで重要な機器といえば、まず太陽光パネルが思い浮かびますが、パワーコンディショナー(パワコン)も非常に重要な役割を果たします。FIT(固定価格買取制度)の開始から10年が経過し、多くの方がパワコンの交換を検討する時期に入ってきました。
本記事では、パワコンの交換時期、交換するメリット、費用の目安、寿命などについて解説します。パワコンの交換時期が近づいている方は、ぜひご覧ください。
目次
パワコンとは
パワコン(パワーコンディショナー / PCS)とは、太陽光パネルによって発電された直流電力を、家庭、ビル、工場などで使用できる交流電力に変換する機器です。直流電力のままでは使用できない家電や機械があるため、太陽光発電システムにはパワコンが必要となります。
パワコンが直流電力から交流電力に変換する際には、多少のロスが発生します。そのため、太陽光パネルで作られた電気をできるだけ無駄にせずに使用するためには、変換効率が高いパワコンを導入することが重要です。
パワコンの寿命
一般的に、パワコンの寿命は10年から15年といわれています。運用状況によっては、それより長持ちする場合もあれば、早く故障や不具合が発生する可能性もあります。
一方、太陽光パネルは20年から30年は稼働し続けます。そのため、太陽光発電システムの稼働期間中に、一度はパワコンの交換を経験することになるでしょう。
パワコンの交換時期
家庭用・産業用を問わず、パワコンの交換を検討するタイミングは同じです。ここでは、どのような状況でパワコンの交換が推奨されるのかについて解説します。
発電量が低下している
パワコンに不具合が発生すると、通常時と比べて発電量が明らかに低下します。パワコンの寿命に関係なく、晴れた日にもかかわらず発電量が大幅に低下した場合は、点検や交換を検討すべきです。
設置から10年以上経過している
太陽光発電システムが稼働してから10年が経過したタイミングは、パワコンの交換を検討する時期です。しかし、「保証期間が15年であるのに、10年でパワコンを自己負担で交換するべきか?」という疑問が生じるかもしれません。
ここで考慮すべきは、「パワコンは経年劣化する」と「最新のパワコンは従来の製品より高い発電性能を持つ」という2点です。
パワコンを交換しない場合、10年目から20年目までは発電効率が低下した状態で発電を続けることになります。そのため、保証期間中の10年目に最新のパワコンに交換することで、発電効率の高い状態で、残り10年間の買取期間を迎えることができ、最終的な収支が向上する可能性が高いです。
ハウスプロデュースは、産業用太陽光発電向けにパワコンの交換サービスを実施しております。無料でシミュレーションが可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。
パワコン交換による発電量増加の事例
経年劣化がみられる太陽光発電システムを、最新の設備に更新したり、発電量の損失を抑える機器を導入したりすることで、発電量を増加することを「リパワリング」といいます。
当社の事例でも、パワコンを最新機器に交換することで、発電量を15%近く増加した実例があります。
パワコン交換にかかる費用の目安
経済産業省の資料によると、「5kWのシステムを想定した場合、パワコンの交換にかかる費用は22.4万円程度が相場」とされています。
しかし、設置場所の状況や業者によって費用が異なるため、複数業者に相談して比較することをおすすめします。
太陽光発電システムのパワコン交換にかかる費用は、主に以下の3つの要素で決まります。
- パワコン本体の価格
- 工事費
- その他費用
パワコン本体の価格の目安
パワコン本体の価格は、メーカーごとにさまざまですが、目安としては以下のようになります。
- 家庭用(出力5.5kW)
15万円から20万円程度 - 産業用(出力49.9kW)
50万円前後
工事費
既存のパワコンを撤去し、新しいパワコンの取り付けをする必要があるため、工事費が発生します。 家庭用太陽光の場合で、数万円から10万円程度の費用が予想されます。
その他費用
パワコン交換の際は、電力会社や経済産業省への申請が必要になりますので、そのための手数料が1万円程度かかります。
ブレーカーや配線にも問題が見つかった場合の修繕や、新しく設置するパワコンの種類によっては配線工事も入るかもしれません。
パワコンを交換するメリット
パワコンを交換するメリットは以下のとおりです。
太陽光発電システムの発電効率を向上
近年販売されているパワコンは、変換効率が向上しており、従来のパワコンより発電量を増やすことが可能です。
パワコンの交換には費用こそかかりますが、長期的にみれば最新のパワコンに交換した方が経済的なメリットが高まるでしょう。
当社の施工事例では、稼働から約10年の発電所のパワコンのみを最新の製品に交換し、年間発電量が約15%増加したケースがあります。
出力抑制に対応した機能が付与される
近年、投資向けの産業用太陽光発電システムには出力抑制への対応が求められますが、古いパワコンはその機能が備わっていません。
もし発電所を売却したくなった場合、古いパワコンのままでは査定にも影響するでしょう。
新型のパワコンは、変換効率が高いだけでなく、出力抑制に対応しているため、物件の価値の向上にも繋がります。
メーカー保証期間がリセットされる
パワコンを新しい製品に交換することで、メーカーから新たに保証が受けられます。
従来のパワコンの保証期間は10年間が多かったですが、近年は15年間のケースが増えています。保証期間が長くなるという意味でも、安心感に繋がります。
パワコンを交換するデメリット
パワコン交換に関するデメリットは以下のとおりです。
費用がかかる
メーカー保証が適用されない場合は、パワコンの交換にはある程度費用がかかってしまいます。
先述したように、5kWのシステムを想定した場合のパワコン交換費用の目安は22.4万円です。
周辺機器の交換もおこなうケースがある
既存のパワコンがすでに販売終了していたり、メーカーがなくなっている場合は、新しいメーカーのパワコンを導入するケースがあります。
その場合、周辺機器との互換性がなければ、それらも交換する必要があり、費用がかさんでしまいます。
パワコンが劣化する原因
パワコンが劣化する原因は、以下のようなものがあります。
- 経年劣化
- 外部の環境要因
- 機器そのものの不具合
パワコンは電子機器であるため、使用年数とともに内部の部品が劣化していきます。
これによって、変換効率が低下したり、故障したりする可能性があります。
また、パワコンは屋外に設置されるケースが多いため、高温多湿や塩害などの外部環境から影響を受けることがあります。
機器そのものの不具合豪雨や台風などの自然災害により、配線や機器に損傷が発生することもあり得ます。
機器そのものや周辺設備の不具合は、修理やメーカー保証で対応可能です。
パワコンの劣化や不具合を早期発見する方法
パワコンの劣化や不具合を発見するために、日ごろからできる方法を解説します。
モニターで発電量を確認する
太陽光発電システムの発電量を可視化するモニターを設置している場合、こまめに確認しましょう。
基本的に、不具合が起きている場合は発電量に影響が出るため、日々確認することで不具合に気づきやすくなります。
電力会社から届く売電収入のお知らせを確認する方法もありますが、売電収入額は電気使用量や月ごとの日射量の違いなどによって変化します。
そのため、発電量のチェックがもっとも有効といえます。
定期的な点検
定期的な点検をおこなうことで、パワコンの不具合を発見できるケースもあります。
太陽光発電システムは、4年に1回程度の点検が目安とされています。
点検によって、パワコンの保証期間内に不具合を見つけられれば、メーカーが無償で修理・交換してくれます。
パワコンを交換しないと起こるリスク
パワコンの交換には費用がかかるからといって、交換せずに放置していると、以下のようなリスクが発生します。
売電や電気代削減の効果が減少する
パワコンを交換せずに使用し続けると、変換効率が低下し、太陽光発電システムが生み出す電力量が減ってしまいます。 これにより、売電収入や電気代削減効果が減少してしまいます。
発電停止リスクが発生する
寿命を大幅に過ぎたパワコンを使用し続けると、故障による発電停止が発生する可能性が高くなります。晴れた日でも発電しなくなるため、大きな損失となります。
売却時の査定額の低下
ライフイベントや経済状況によっては、野立ての産業用太陽光発電や、太陽光発電システム付きの住宅を売却するケースもあるでしょう。
その際、パワコンが経年劣化したものであれば、査定額に影響してしまいます。
パワコン交換でよくある質問
パワコンが故障した場合、修理と交換どっちが得?
結論からいえば、新品への交換が最終的にはお得になります。
もし稼働からの時間が短ければ、保証を利用して修理するほうがよいでしょう。
ただし、保証期間中であっても、故障の原因が使用環境など外部にある場合は、保証の対象外となります。
10年保証の期限間近になると、保証ではなく自費での修理になる可能性が高いです。自費での修理は、パーツによっては新品交換と同等の費用がかかることもあります。
であれば、変換効率が高い新品に交換するほうが、経済的なメリットが出やすいでしょう。
パワコンは同じものに交換される?
仮に稼働から1年程度でメーカーや施工店の不備によって故障した場合は、パーツの交換や修理だけで対処します。
それでは不十分と判断されれば、現行モデルの製品や、他の互換性のあるパワコンへの交換となるでしょう。
当初のパワコンと同じ製品ではありませんが、新しいパワコンに交換することで性能が良くなるため、メリットが大きく、リスクもありません。
パワコンの修理・交換はどこに依頼する?
太陽光発電システムを購入した販売業者に依頼することが一般的です。メーカーとの連携や施工の知識を活かして、スムーズな修理・交換が期待できます。 また、メーカー保証以外に、販売業者独自の保証が適用される可能性があります。
当時の販売業者が倒産・事業撤退している場合や、別の業者の話を聞いてみたい場合は、他の販売業者や施工店に相談することも可能です。
まとめ
今回は、パワコン交換のタイミングや費用などについて解説しました。
発電所の状況によっては、パワコンの交換だけで15%から20%、発電量が増加するケースもあります。
パワコンの保証期間は10年から15年と長期ですが、定期的な点検・メンテナンスをしながら、交換時期を見計らっておくことをおすすめします。
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