陸屋根と太陽光発電の相性は?メリット・デメリット・注意点を解説
電気代削減や環境対策の一環として、住宅や事業所の屋根を活用して太陽光発電を設置したいというニーズが高まっています。
屋根にはさまざまな種類がありますが、本記事では「陸屋根」に太陽光発電システムを導入する際の設置のポイントや注意点ついて、詳しく解説します。
自社施設の屋根に太陽光発電システムの導入を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。
目次

陸屋根の形状

陸屋根(平屋根)とは、1面で構成されており、地面に対して水平に設置された屋根のことです。
- メンテナンスコストが低い:滑り落ちるリスクがないため、屋根工事に必要な足場が不要、あるいは小規模で済むことから、メンテナンスコストを抑えられます。
- 内部空間を有効に活用できる:陸屋根は勾配が少ないため、屋上庭園や駐車場としての利用や、機械設備の設置などの活用が容易です。
- 建築コストが低い:陸屋根は、傾斜付き屋根より面積が比較的小さいため、屋根材や骨組みの材料費が抑えられ、全体の建築コストも低くなる傾向があります。
これらの特徴から、オフィスビル、工場、倉庫、マンションなどの建物において陸屋根が採用されるケースが多く、最近では住宅にも取り入れられるようになっています。
陸屋根と太陽光発電の相性
陸屋根はそのフラットな構造から、太陽光発電との相性としては以下の特徴があります。
- 発電効率の向上:陸屋根の平坦性は、太陽のあたる南向きに太陽光パネルを設置しやすくします。これにより、発電効率を最大化するための柔軟な配置や設計が可能です。
- 遮熱効果:太陽光パネルの設置により、建物の屋根は直接の日射から保護されます。この遮熱効果は、建物内部の温度上昇を軽減させ、冷暖房のエネルギー消費を削減する効果をもたらします。
- 機器の配置がしやすい:陸屋根部分の面積が広ければパワーコンディショナやキュービクル(高圧受電版)も屋根上に設置でき、高圧連携も可能です。地上への設置に少し近い感覚で施工できるため、安全性が高まりやすいです。
陸屋根に太陽光発電を設置する方法
陸屋根に太陽光発電システムを導入するおもな工法について解説します。
アンカー工法
従来の一般的な設置方法です。アンカー工法では屋根に穴を開け、その部分に防水処理を行ったのち、架台を固定させます。
(※アンカー:さまざまな構造物を固定するためのボルトなどの器具)
陸屋根は傾斜がなく水はけが悪いため、屋根に穴を開けると雨漏りしやすい状態になる可能性があります。また、屋上部分に雨水が溜まりやすいため、ケーブルの配線も重要です。
陸屋根への太陽光発電システム設置では、設置場所の状況に応じて、防水処理の技術に長けている業者や、アンカー工法以外の工事を行える業者への依頼をおすすめします。
重石工法
重石工法は、屋根に穴を開けない方法の一つです。
設置工事時にコンクリートブロックを屋上に設置し、そのブロックに特殊な架台や専用のレールを取り付け、上に太陽光パネルを固定します。施工期間が短いので工事費が削減しやすいです。
ブロックの重量が100kg以上と重いため、風に強いですが、屋上の床面と太陽光パネルの間に強風が入ると、パネルが外れる恐れがあるので注意が必要です。
耐荷重や耐風圧を考慮した設計が可能な業者への依頼が重要です。
置き基礎工法
置き基礎工法は、コンクリート製の基礎を太陽光パネルの下に置いて固定する工法です。
重石工法と似たようなイメージですが、重石工法より設置が難しいといわれます。一方、重石がずれたり、地震で倒れたりするリスクが少ないメリットがあります。
また、架台が角度を持っているので、日光が太陽光パネルによく当たるように傾斜をつけることができます。
傾斜を低くする場合、パネル間の間隔を空けずに多くのパネルを設置できるので、多くのパネルを取り付けたい場合に向いています。
アンカーレス架台を設置
アンカーレス架台は、近年さまざまなメーカーが開発を進めています。
屋根に穴を開けないという点では重石や置き基礎工法と同じですが、耐風圧性能を損なわずに荷重を大幅に削減できることが特徴です。
- 屋根に穴を開けずに施工するため、追加の防水加工は不要
- アンカーやコンクリートブロックなどが不要なので工期が短い
- アンカーがなくても風で飛ばない設計(メーカーによって異なるが、風速55m/s程度まで耐えられる)
- 従来の方法に比べて荷重を大幅に削減
まだ新しい工法ということもあり、アンカーレス架台の重量や耐風圧、構造などはメーカーごとに異なります。各メーカーの仕様についてよく確認したうえで比較検討しましょう。
陸屋根で太陽光発電を始めるデメリット
陸屋根での太陽光発電には、他の設置場所と比べていくつかのデメリットが考えられます。以下に挙げる点を理解し、事前に検討することが重要です。
1. 屋根への負荷と雨漏りのリスク
陸屋根に太陽光発電を設置する際、穴を開けることで雨漏りのリスクが高まることが考えられます。
穴を開けない「置き基礎工法」もありますが、使用するコンクリートブロックの重量が大きく、その結果、屋根や建物全体に負担をかける可能性があるため注意が必要です。
太陽光発電の設置だけでなく、屋根の構造や工事技術に詳しい業者に相談することをおすすめします。
2. 高温による発電効率の低下
多くのオフィスビル・工場・倉庫の陸屋根は鉄筋コンクリートや金属製で、これらの材料は日光を反射し、太陽光パネルの表面温度を上昇させる可能性があります。
結晶系シリコンの太陽光パネルの場合、気温が25℃が最も効率的であり、それ以上の気温で1℃上昇するごとに0.4%前後の発電効率が低下するとされます。
陸屋根における設置角度が低いため、太陽の照り返しで温度が上昇しやすく、発電効率の低下が懸念されます。
陸屋根で太陽光発電を始めるメリット
陸屋根での太陽光発電は、ほかの設置場所には無いメリットもあります。
1. 短期間での設置が可能
陸屋根は平坦で傾斜が少ない特性を持つため、作業員は傾斜付きの屋根よりも安全に作業を進めることが可能です。(金属屋根の場合は足場が必要なケースもあります)
この特徴から、効率的な計画を立てやすく、多数の作業員での作業が実現できます。その結果、工期を短縮し、施工費を削減することが期待できます。
2. 高い設計の柔軟性
陸屋根に太陽光発電システムを設置する際、設置角度や向きを自由度高く調整することができます。
したがって、最適な発電効率を持つ南向きに多くの太陽光パネルを設置したり、設置場所において発電効率が高まる角度に合わせて設置したりと、発電量を最大化する設計がしやすいメリットがあります。
陸屋根に太陽光発電を設置する際の注意点
以下では、陸屋根への太陽光発電システム導入における主要な注意点を解説します。
防水・排水の状況を慎重に調査する
- 陸屋根は特別な防水処理が施されており、雨水がコンクリートに浸透するのを防いでいます。しかし、時間が経つとその効果は減少することがあるため、特に建物の経年劣化が進んでいる場合には、事前調査が欠かせません。
- 太陽光パネルの設置に伴って、後からの防水修理が難しくなることも考慮すべきです。
- 屋根に穴を空ける工法では既存の防水処理の保証が外れるケースもあるため、幅広い工法に対応できる技術を持った業者への依頼が重要です。
- 排水設備の点検も欠かせません。排水口の詰まりや大雨対応能力をチェックしましょう。雨水がパネルやケーブルに浸入すると、漏電や感電のリスクが上がるため、この点には特に注意が必要です。
太陽光パネル同士で影がかからないかを確認
- 傾斜のある屋根に対しては、太陽光パネルが影を作ることは少ないですが、陸屋根ではパネル同士の配置に注意が必要です。
- 適切な間隔を保ち、影ができないよう設計することで、発電効率を最大限に引き出せます。
屋根工事に詳しい業者の選定
- 一般的な太陽光発電業者は、屋根工事の専門知識を持っていないことが多いです。このため、後に雨漏りなどの問題が生じるリスクが高まります。
- 近年、屋根に穴を開けずに太陽光パネルを設置できる業者も増えていますが、材質によっては穴を開ける必要が生じる場合があります。その際、浸水を防ぐ対策が不可欠です。
- もし屋根が部分的に劣化している場合は、それを修復する必要も考慮に入れるべきです。
太陽光発電の設置を検討する際には、屋根工事にも精通した業者を選定することが非常に重要です。
陸屋根への太陽光発電導入事例
ハウスプロデュースによる陸屋根への太陽光発電導入事例を一部ご紹介します。
マンションへ太陽光発電導入事例

施設 | マンション |
---|---|
工法 | 置き基礎工法 |
パネル搭載面積 | 300㎡ |
ソーラーパネル枚数 | 72枚 |
- 導入の目的
- マンションの屋上を活用して太陽光発電で物件の収益性を高めたい
- 導入の成果
-
・年間の経済メリット:約43万円(電気代削減+売電収益)
・約7.5年で費用を回収し、その後も10年以上、上記の経済メリットが受けられる
オフィスビルへの太陽光発電導入事例

施設 | オフィスビル |
---|---|
工法 | アンカー工法 |
パネル搭載面積 | 160㎡ |
ソーラーパネル枚数 | 84枚 |
- 導入の目的
- 自社のコスト削減に取り組みながら、SDGsや脱炭素化の取り組みを推進したい
- 導入の成果
-
・事務所全体の消費電力を約20%削減
・CO2排出量を年間で約5t相当削減
当社を通じて建物の屋上に太陽光発電を導入されたお客様のインタビュー記事を複数ご用意しています。導入後の実際の感想や経験を共有していただいておりますので、ぜひご参考にしてください。
まとめ
陸屋根への太陽光発電システム導入を考慮する際、そのメリット・デメリットや採算性をしっかりと踏まえて計画を立てることが大切です。
太陽光パネルの向きや角度には柔軟性があり、設計の工夫次第で高効率の発電が期待できます。
ただし、工法によっては屋根に負担がかかる可能性もありますので、適切な防水処理や屋根への負担を考慮してくれる専門業者の選定は、成功のためのキーポイントとなります。
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太陽光設置お任せ隊(運営:株式会社ハウスプロデュース)は、5,000件以上の太陽光発電設備施工と、12,000件以上の屋根修繕の実績があります。
これまでのノウハウを活かし、屋上への太陽光発電導入に関しては、さまざまな条件や状況に応じて最適な設計・施工を提供します。
- 企画提案から設計・施工までワンストップ
- 必要に応じて屋根補強工事や一級建築士による耐震強度の調査も対応可能
- 屋根の強度や構造を考慮したさまざまな工法に対応
- 12,000棟以上の屋根修繕実績を誇る太陽光発電専門業者
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