売電収入や電気代削減などのメリットや、環境への配慮から、マンションやアパートなどの集合住宅において、太陽光発電システムに対する注目度が高まっています。
マンションやアパートに太陽光発電システムを設置する際、賃貸・分譲・新築などの形態によって、必要な手続きや条件が異なります。
本記事では、マンションの屋根上に太陽光発電を導入するメリット、太陽光発電と相性の良いマンションの特徴、設置するために必要な手順と注意点について解説します。
目次
マンション・アパートに太陽光発電を導入するメリット
マンション・アパートの屋根上を有効活用できる
安全上、マンション・アパートなどの集合住宅の屋根や屋上は、開放できない場合がほとんどです。広いスペースがあるのに、活用方法が少ないことが悩みどころです。
周辺に高い建造物が無い集合住宅の屋根上部分は、日当たりも良く、太陽光発電に適しています。
そのため、このスペースを発電に活用できれば大きなメリットとなります。また、屋根上に太陽光パネルを設置することで、強い日差しが直接当たることによる屋根本体の劣化を抑えることができます。
共有部分の電力をまかなうことができる
マンション・アパートのオーナーが太陽光発電システムを設置することで、電気代を削減できます。
マンションの共用部分では、照明や空調設備などが24時間稼働している場合が多く、常に電気を消費しています。太陽光発電システムを設置することで、共用部分で消費される電力の一部をまかなうことができます。
売電によってマンション・アパートの収益性が高まる
固定価格買取制度(FIT)により、太陽光発電で発電した電気は、電力会社に10年間または20年間、固定価格で買い取ってもらえます。この売電による収入は、家賃収入以外の安定した収入源となります。
マンション・アパートに付加価値が付く
省エネ性能が優れたマンションやアパートに与えられる「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」の認証を受けられれば、環境に配慮したマンションであることをアピールできます。
BELSは、太陽光発電を設置すれば必ず取得できるわけではありませんが、BELSの評価基準の1つに太陽光発電による自家消費の項目があります。太陽光発電はCO2を発生させず電力を作り出すことができるため、環境意識の高い入居希望者へのPRとしても有効です。
緊急時の非常用電源として利用できる
台風や地震などの災害によって電力会社からの電力供給が停止すると、マンション全体が停電します。そのような事態でも、太陽光発電を自立運転モードに切り替えることで、電気を使用することができます。
太陽光発電のみでは、マンション全体の電力をまかなうことは難しいですが、共有部分などの最低限の電力を供給することは可能です。また、太陽光発電は夜間や雨天には発電できないため、より柔軟な停電対策を検討するなら蓄電池やを併用することも選択肢のひとつです。
太陽光発電と相性が良いマンション・アパートの特徴
マンションやアパートで太陽光発電を導入する際、すべての建物で設置が推奨されているわけではありません。ここでは、太陽光発電システムの導入に適したマンションやアパートの特徴を解説します。
低層階のマンションであること
太陽光発電と相性が良いマンション・アパートの特徴の1つは、低層であることです。
高層マンションは地上よりも風が強いため、屋上にパネルを設置する際には、強固な取り付け方法や追加の強化が必要なケースがあります。また、屋上へ機材を運ぶための費用が発生するため、採算が取りにくくなります。
一方、低層マンションやアパートの場合、住宅と同様の設置工事で済むため、導入費用を抑えることができ、採算を取りやすくなります。
目安としては、約20メートル(7~8階建て)未満の高さの建物であれば、これらの問題はに対するハードルは比較的低くなります。
マンション・アパートの屋根に傾斜がついていること
屋根が傾斜していることも、太陽光発電と相性の良いマンション・アパートの特徴の1つです。傾斜のある屋根とは、切妻屋根や片流れ屋根のような、住宅やアパートで一般的に採用されている屋根のことです。
太陽光発電のパネルは、屋根に穴を開けて固定することが多いため、屋根の排水能力が重要です。陸屋根は傾斜がないため、排水が悪く、雨漏りのリスクが高まる可能性があります。
この問題を解決する方法のひとつとして、セメントで固めたブロック架台を使用する方法がありますが、その際の費用増加を考慮する必要があります。
賃貸のマンション・アパートであること
太陽光発電システムが導入しやすいマンション・アパートの特徴の1つは、オーナーが単独で所有していることです。この場合は、オーナーの判断で導入が可能です。
一方、分譲マンションには多数の所有者がいるため、建物の変更には多くの手続きと時間がかかります。
マンション・アパートに太陽光発電を導入する流れ
賃貸マンション・アパートに後付けで設置する場合
賃貸マンションやアパートのオーナーは、建物・敷地の所有者であるため、基本的にはオーナーの判断で太陽光発電システムを設置できます。
ただし、トラブルを避けるためにも、居住者への許諾を得るようにしましょう。また、居住者が設置を希望する場合は、共有部分・専有部分を問わず、オーナーの許可を得る必要があります。
分譲マンションに後付けで設置する場合
分譲マンションの共用部に太陽光発電システムを接続する場合は、法律により管理組合の集会決議が必要です。そのため、大規模な分譲マンションでは多くのオーナーが関与するため、管理組合の理事会で合意を得ることは非常に困難です。
新築マンション・アパートに設置する場合
近年は、スマートマンションやZEBと呼ばれる太陽光発電システムを導入した環境配慮型のマンションの建築が進んでいます。既存マンションと比べて、新築のマンションは屋根に太陽光発電システムを設置することを前提として設計されるため、より安全に設置できます。
マンション・アパートに太陽光発電を導入する際の注意点
マンションの場合、全世帯に電力を供給することは難しい
当社でも「発電した電気を全世帯に供給は可能ですか?」というご質問をよくいただきます。
結論からいうと、既存マンションに太陽光パネルを後付けする場合、設備・コストの面から全世帯に電力を供給することは難しいです。
もともと太陽光発電の設置が想定されていないマンションでは、屋根のスペースに限りがあるため、多数の太陽光パネルを設置してすべての世帯に十分な電力を供給することは難しいです。
また、全世帯への電気の供給は、配線などの設備投資が追加で必要となるためコスト面でも負担が大きくなります。
発電量に対して共用部分の消費電力が30%以上必要
マンション・アパートのオーナーさまの多くは、屋根の全面を利用して、大量に発電・売電したいと考えています。しかし、2020年度のFIT改正により、10kW以上50kW未満の太陽光発電システムの場合、発電した電気の30%以上を自家消費しなければならなくなりました。
この要件によって、マンション・アパートの共用部の電力消費が少ない場合、10kW以上50kW未満の太陽光発電システムではメリットが出にくいです。
- 過積載:パワーコンディショナの出力より太陽光パネルの出力を大きくするように設計し、発電量をアップする方法。
当社のマンション・アパートへの太陽光発電システム施工実例
ハウスプロデュースでは、マンションやアパートの太陽光発電導入に関するご相談を多数いただいております。ここでは施工実例を一部公開しますので、ぜひ参考にしてください。
スレート屋根アパートへの太陽光発電システム導入事例
導入先 | グランオール 様 |
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都道府県 | 埼玉県 |
設備容量 | 14.96 kW |
設置時期 | 2021年5月 |
年間収益 (売電+電気代削減) |
300,000円/年 |
回収年数 | 7年 |
陸屋根マンションへの太陽光発電システム導入事例
導入先 | ユーミー猪崎 様 |
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都道府県 | 京都府 |
設備容量 | 24.48 kW |
設置時期 | 2021年6月 |
年間収益 (売電+電気代削減) |
460,000円/年間 |
回収年数 | 7.5年 |
マンション・アパートへの太陽光発電で活用できる補助金・助成金
自治体によっては、マンションやアパートへの太陽光発電の導入に補助金や助成金を設けているところがあります。
たとえば、神奈川県の制度では、自家消費型太陽光発電システム・蓄電池に対して、経費の一部が助成されます。
名称 | 神奈川県共同住宅用自家消費型太陽光発電等導入費補助金 |
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対象設備 | 太陽光発電システムおよび蓄電池 |
補助対象者 | ・県内の分譲共同住宅の管理組合 ・県内の賃貸共同住宅を所有する個人又は法人(国及び公共法人を除く。) |
助成対象経費・助成率 | ・自家消費型太陽光発電システム:1kWあたり5万円 ・蓄電システム等:1台あたり12万円 |
(参照元:神奈川県|令和5年度神奈川県共同住宅用自家消費型太陽光発電等導入費補助金)
このように、各自治体で補助金が設けられている場合があります。注意点は、申請期間が過ぎていたり、補助金の予算に到達して予定より早く終了したりといったケースがあることです。
補助金を適用して導入を検討する場合は、早めの準備が必要です。
まとめ
マンションやアパートへの太陽光発電の導入は、共用部の電気代節約や売電収益など高い経済効果が期待できます。
低層マンションやアパートで、1人のオーナーが全ての部屋を所有している場合、太陽光発電の導入に適しているケースが多いです。
一方、高層マンションや複数のオーナーが所有する場合は導入ハードルが高く、慎重な検討が必要です。
また、既存マンションは基本的に太陽光発電の導入を前提として設計・建設されていません。そのため、太陽光発電システムの設置が可能か専門家に調査してもらうことが大切です。
ハウスプロデュースは、それらの調査を含め、マンションやアパートの太陽光発電導入に関する豊富な実績を持っています。
導入を検討しているオーナーさまは、ぜひ当社へ一度お問い合わせください。太陽光発電の設置可否の調査や、収支シミュレーションなどを無料で行わせていただきます。