再生可能エネルギーのFIT(固定価格買取制度)認定の「認定失効制度」が2022年4月から施行されました。これにより、運転開始期限を過ぎており、かつ運転の見込みもない案件は、認定が失効されます。
本記事では、産業用太陽光発電のFIT認定を過去に取得した方向けに、失効の条件や今後の対策を解説します。
目次
FIT認定失効制度の施行の背景は未稼働案件の増加
FIT認定失効制度が施行された背景には、着工申し込みをせず放置される「未稼働案件」の増加があります。
未稼働案件には以下の3つの問題点があります。
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- 国民負担の増大
- 再エネ電力の買取費用は「再エネ賦課金」として国民の電気代と一緒に徴収されています。FIT単価が高い案件が一気に稼働すれば国民負担が増加します。
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- 再エネコストダウンの停滞
- FIT単価が高い案件が一気に稼働すると、国はその電力を20年間一律の単価で買い取る必要があるため、再エネコストが下がりにくくなります。
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- 系統容量の圧迫
- 未稼働案件が送配電の系統を圧迫するため、新規の案件開発が停滞します。
FIT認定失効制度の施行までの経緯
FIT認定失効制度が施行された経緯を簡潔に記載します。
2012年7月 | FIT制度が開始され、太陽光発電の導入が急速に拡大しました。 |
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2012年から2016年 | この期間に認定を受けた案件は、運転開始期限が設けられていなかったため、着工申込をせずに放置される「未稼働案件」が多く存在しました。 |
2016年4月1日 | FIT制度が改正され、2016年8月1日以降に接続契約した案件には「認定から3年」の運転開始期限が導入されました。 |
2018年4月1日 | FIT制度が改正され、2012年から2016年7月31日以前に接続契約した案件にも運転開始期限が導入されました。 |
2022年4月1日 | 運転開始期限を設けるだけでは未稼働案件が減らなかったこともあり、認定失効制度が施行されました。 |
このように、2016年・2018年と措置をとった後も残る未稼働案件への対策として、認定失効制度が設けられました。
(参照元:認定失効制度について|資源エネルギー庁)
実際に、2023年3月末に多くの案件が失効
経済産業省が公表した資料によると、2023年3月末に、最初の失効期限を迎えた約50,000件・約4GWの未稼働案件が実際に認定失効しています。
経済産業省は今後も認定失効を継続していく予定で、2023年度の予定では約12,000件・約0.8GWの未稼働案件が失効する予定です。
該当する発電事業者は、失効期限までに運転開始するか、発電事業を取りやめにするかを決める必要があります。
(参照元:地域と共生した再生可能エネルギー導入のための事業規律強化とFIT/FIP制度の適正な運用について(PDF)|資源エネルギー庁)
FIT認定が失効となる条件
認定失効制度が適用されるのは、「FITによって認定を受けながらも、運転開始や着工の申し込みを行っていない、10kW以上のプロジェクト」です。
次に、FIT認定が失効することなく運転を開始できるケースと、失効に至るケースについて、図を用いて詳しく解説いたします。
FIT認定失効せず運転開始できるケース
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- 太陽光発電の運転開始期限
- 太陽光発電の運転開始期限は、認定から3年です。この期限までに運転を開始できれば、認定は失効しません。
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- 運転開始期限内に運転を開始できない場合
- 3年間の運転開始期限内に稼働できない場合、期限から1年以内に運転すれば失効しません。
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- 運転開始期限から1年以内に運転を開始できない場合
- 運転開始期限から1年以内に運転を開始できない場合、系統連系工事の着工申込みを行うことで、運転開始期限の3年後まで失効猶予期間が設けられます。
FIT認定が失効するケース
運転開始期限を過ぎても、1年以内に着工申し込みを行えば、3年間の失効猶予期間が設けられますが、その間に運転を開始しなければ失効となります。また、運転期限から1年以内に運転・着工申し込みのどちらも行わなかった場合は失効となります。
上記が基本的な運転開始・失効のイメージです。実際には、いつ運転開始期限を迎えるかどうかで、失効までの流れが異なります。
2022年4月1日より後に運転開始期限を迎える場合
法改正が行われた2022年4月1日より後に運転開始期限を迎える場合は、先述した基本パターンと同様の失効イメージです。
たとえば、2019年6月1日にFIT認定を取得した場合は、以下のような流れになります。
2023年5月31日までに着工申し込みをすれば、2025年5月31日まで猶予期間が設けられます。それまでに運転開始しなければ失効となります。
2023年5月31日までに着工申し込みも運転開始もしなければ失効となります。
2022年4月1日時点で運転開始期限を迎えている場合
法改正が施行された2022年4月1日より前に運転開始期限を迎えているケースには「経過措置」が適用されています。
例えば、2017年4月1日にFIT認定を取得している場合、本来であれば2020年3月31日が運転開始期限、2021年3月31日が失効期限となります。
しかし、認定失効制度の開始日である2022年4月1日から、運転開始期限と失効期限を計算し直すことになりました。
2023年3月31日までに着工申し込みをしていれば、2025年3月31日まで猶予期間となります。それまでに運転開始しなければ失効となります。
法改正が施行される2022年4月1日から1年後の2023年3月31日までに着工申し込みも運転開始もしていなければ失効となります。
2012年から2016年の間に認定された案件の場合
2012年から2016年の間にFIT認定を受けた案件は、運転開始期限が設定されなかったため、放置されているケースが多数存在します。
しかし、2022年4月1日から、運転開始期限がない案件であっても期間内に運転開始を開始できない場合は、認定が失効する制度が導入されました。
そのため、運転開始期限がない案件の事業者は、運転開始に向けて早急に準備を進めることが重要です。
このような場合、失効までの流れは以下のようになります。
2023年3月31日前に運転開始や着工申し込みをしていなければ失効します。
2023年3月31日までに着工申し込みをした場合は、2026年3月31日に運転開始しなければ失効します。
未稼働案件の事業者が取るべき対策
設備認定の失効を避けるためには着工申し込みを行う
事情があってすぐに太陽光発電の運転を開始できない場合は、系統連系工事の申し込みだけでも手続きを進めると、認定が失効するリスクを減らすことができます。
失効制度は、事業の実施が見込めない案件を失効させるための制度です。そのため、系統連系工事の申し込みをしていることが確認できれば、運転開始が見込まれる案件と判断されます。
発電事業を取りやめて権利を売却する
失効期限が来れば、せっかく取得したFIT権利を活用できないまま喪失してしまいます。
資金面や業者との兼ね合いなどの理由で、太陽光発電所の開発が滞り、失効期限が近づいている場合は、事業開始を取りやめて権利IDの売却を検討するのも1つの選択肢です。
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