太陽光発電事業をしていると、近隣住民との間でトラブルが起こることも少なくありません。
こうしたトラブルは適切な対応と、事前の対策準備を怠ってしまうと裁判沙汰にもなりかねませんから、太陽光発電事業者は近隣トラブルが起こらないよう細心の注意しなければなりません。
そこでこの記事では、太陽光発電事業をしていてよく起こる近隣トラブルの原因と、その対処法について解説していきます。
目次
太陽光発電事業をしていて起こりがちな近隣トラブルは、複数あります。なかでも、よく起こりがちなものや、特に注意すべきなのが以下の4つです。
1 反射光による近隣トラブル
2 雑草による近隣トラブル
3 騒音による近隣トラブル
4 土壌流出による近隣トラブル
では次から、各トラブルの内容について紹介したうえで、それぞれの解決策について説明していきます。
これから太陽光発電投資を始めるという人が特に気をつけたいのが、反射光のトラブルです。反射光とは、太陽光パネルに反射した光を指します。
太陽光発電では、この反射光が近隣住宅に長時間あたることで、トラブルになる可能性があります。
なぜなら、反射光が住宅に当たることによって、その住宅の室内温度が高くなったり、眩しくて窓を開けられなくなったりするからです。
過去には、太陽光発電設備の反射光が原因で、裁判が起きたケースも何度かあります。例えば2015年には、兵庫県姫路市で、太陽光発電所の反射光によって熱中症になったと、近隣住民の男性が訴訟を起こしました。
男性は太陽光パネルの一部撤去と損害賠償を求めましたが、2年後に訴えを取り下げています。とはいえ、太陽光発電所側は訴えがあった後、反射光が近隣住宅に当たらないように背の高い樹木を植えて対処しているため、金銭的なダメージはゼロではありませんでした。
これから太陽光発電設備を設置するのなら、太陽光パネルの位置に気をつけることで、反射光のトラブルをある程度回避できます。
そのためには、発電量だけではなく反射光を予測できるシミュレーションで事前に被害がでそうか把握しておくことが大切です。
最新のシミュレーションであれば、太陽光パネルによる反射光の動きを予測することが可能です。
シミュレーションを元に、反射光が民家の窓に長時間当たる等、迷惑をかけてしまうことが分かれば事前に設計を変更して回避することも可能です。
太陽光発電事業をするうえで多いのが、雑草による近隣トラブルです。太陽光発電施設内には雑草が繁茂しており、放っておくとどんどん伸びていきます。
太陽光発電設備の近くに住む人たちにとって、この雑草は以下の問題を引き起こします。
・ 景観の悪化
・ 雑草が敷地外にはみ出す
・ 獣や虫の発生
・ 火災のリスク
雑草は放っておくと、太陽光パネルより背が高くなります。こうなると景観を損ねたり、施設を囲うフェンスからはみ出したりします。
また、雑草の繁茂する場所にはネズミや蛇などの害獣や、虫なども集まってきてしまうのです。さらに、雑草はよく燃えるので、放火による火災のリスクが高くなることも見逃せません。
このような理由から、雑草を放置しておくと、近隣トラブルに発展する可能性が高いと言えるのです。
太陽光発電事業者にとって、敷地内の雑草対策は欠かせません。近隣トラブルに発展しやすいのもそうですが、雑草を放置しておくことには、それ以外にもデメリットがあるのです。
パネルより雑草の背が高くなれば、パネルに影ができてしまいます。パネルに影ができれば、その部分は発電できなくなるため、発電量が落ちてしまうのです。
さらに、影ができた部分は電気抵抗となって発熱し、パネルの故障や発火にもつながります。そのため、太陽光発電事業をするのなら、雑草対策は必ずするようにしましょう。
雑草対策には、主に以下のものがあります。
・ 草刈り機による草刈り
・ 防草シートを敷く
・ 除草剤を撒く
・ カバープランツで地面を覆う
草刈りは自分でしても良いのですが、業者に依頼すれば手間を省けます。「防草シート」は地面に敷くことで、雑草の成長を防げますし、「除草剤」は、雑草を枯らせる薬剤です。
「カバープランツ」は、地面を覆う背の低い植物です。雑草が生える前にカバープランツで地面を覆うことで、雑草の繁殖や成長を防げます。
このように、雑草対策は複数あるので、手間や費用などを考えて、自分に合ったものを選びましょう。
防草手段 | 内容 |
自身で除草作業 | 手で雑草を抜いたり、草刈機で刈ったりします。手で草を抜くなどは最も簡単に始められますが、体力仕事であり、また草の再発を防ぐことは難しいです。 夏場、雑草が盛んに伸びる時期などは何度も作業を行わなければならず、発電所が近くにないと困難でしょうし、毎日通えたとしても非常に手間がかかる方法です。 |
除草剤 | 薬剤はホームセンターなどに売っているので入手しやすく、価格も安価です。 散布は機器などを使ったりしながら、手作業になると思いますが、こちらもその手間を長期間に渡って行えるのかを考えなければなりません。 また、薬剤の効果が短いので、ものによっては数週間~数か月おきに散布する必要があります。 田畑をされていたり、薬剤に敏感な方から、使用を嫌がられることもあります。 |
防草シート | 遮光性の高いシートを地面に敷くことで、植物の光合成を防ぎ成長を食い止めます。 遮光カーテンのように製品によって日光を遮る力に差があり、価格も1㎡数千円~1万円程度と異なってきます。 土地にシートを敷き詰めるだけですので、自分で設置することも出来る容易さがポイントです。遮光力が弱かったり、シートの隙間などから草が生えてくることがありますので、定期的にメンテナンスが必要です。 |
砂利敷き | ガーデニング用の砂利を敷き詰める事で地面へ遮光し、防草効果を期待するものですが、砂利単独では時間と共に土とまじりあい効果が薄いようです。 ガーデニングでは化粧砂利といい見栄えを整える目的が強いので、防草シートとの併用が推奨されています。 太陽光発電所の防草なら景観に拘らない限り、最初から防草シートのみを設置する方が早いといえます。 |
コンクリート | コンクリートで地面を固めてしまい、土の露出をなくすことで植物が生えないようにする方法です。効果は高いですが、土木工事となるので業者に頼んだり、材料費もかさむのでコストは高くなります。しかし、効果は最も長持ちする確実な方法です。 |
太陽光発電事業をしていると、近隣住民から「音がうるさい」と苦情が入ることもあります。この音とは、パワーコンディショナの動作音です。
パワーコンディショナの動作音は40デシベル程度で、エアコンの室外機の音と同じ程度と言われています。
あまり大きな音ではありませんが、周りが静かな環境であった場合、気になるという人もいるので注意しなければなりません。
これから太陽光発電設備を設置するのなら、あらかじめ近隣住民にあいさつして、「エアコンの室外機と同じくらいの音がします」と了承をとっておきましょう。
それくらいであれば問題ないと、了承してくれる人も多いはずです。
すでに太陽光発電設備を稼働させていて、騒音の苦情が来ているのなら、パワーコンディショナを防音壁や防音パネルなどで囲うと良いでしょう。
「太陽光 防音壁」や「太陽光 防音パネル」などのキーワードで検索すれば、販売業者が見つかるので、相談してみましょう。
太陽光発電で起こりがちな最後の近隣トラブルが、土壌流出です。
これは強い雨が降った際、太陽光発電施設内の土が削れて流れ、敷地外に流出するトラブルです。
通常なら雨水は草木が吸収してくれますが、先ほども説明したとおり、太陽光発電には雑草対策が欠かせません。
結果、むき出しになった土を雨が侵食し、敷地外に流れ出るというトラブルに発展しているのです。
土壌流出を防ぐのに役立つのが、「土嚢(どのう)」です。
強い雨が降った後は、雨が土を削って溝を作り、そこに雨水が流れて川のようになることもあります。土嚢を敷き詰めることで、溝に流れた土や雨水が敷地外に出ないようにせき止められます。
土嚢は丈夫な袋と土や砂さえあれば簡単に作れるので、ぜひ試してみましょう。
ここまで、太陽光発電事業をしていて起こりがちな近隣トラブルと対処法について説明してきました。
しかし、もしここまで説明してきたようなトラブルが実際に起こって、苦情が多数寄せられた場合はどのように対処すればいいのでしょうか?
この場合は、太陽光発電設備の業者に依頼して、近隣住民を対象にした説明会を開いてもらいましょう。
説明会では、発生したトラブルに対する、事業者の今後の対処について説明します。
例えば、雑草については草刈りや防草シートで対処する、騒音についてはパワーコンディショナを住宅から離れた位置に置くなどです。こうして近隣住民から理解を得た後であれば、トラブルが原因で事業の計画が頓挫してしまうという最悪のケースになることは、非常に少なくなります。
太陽光発電事業をしていると、反射光や雑草、騒音や土壌流出などによって、様々な近隣トラブルが起こり得ます。
しかし、ここまで紹介してきたように、どのトラブルにも対処法があります。
太陽光発電設備を設置する前に近隣トラブルが不安だという方もお気軽にご相談ください。
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