ISO14001とは|取得のメリットと環境マネジメント事例の紹介

「ISO14001(アイエスオーいちまんよんせん)」に沿った経営を行うことで、企業価値の向上に繋がる効果的な環境への取り組みを実践できます。

昨今、大量のマイクロプラスチックの破棄による海洋汚染や、温室効果ガスの排出量の増加によって「地球温暖化」が深刻化しており過去に例を見ない異常気象や自然災害が頻発しています。

すでに、日本を含めた先進国では、多くの企業が事業での脱炭素化に舵を切っており、企業が背負う環境問題に対する社会責任の重要性が高まっています。 実際に、日本でも「省エネ法」や「温暖法」をはじめとした企業の環境問題の取り組みに関わる法律が厳格化してきています。

「環境問題にその企業がどういった取り組みを行っているのか?」国だけではなく顧客を含めた全ての利害関係者の監視が厳しくなっており、環境に大きな負荷を与えている企業・事業は淘汰されていく時代が現実に迫っています。

一方で、この潮流は企業にとって事業拡大のビジネスチャンスでもあります。

それは、環境問題への取り組みに積極的な企業は、経営面で様々な優遇を享受出来る他、企業に関わる全ての利害関係者から良い評価を得ることが出来るからです。
では実際に、事業を通じて環境問題に取り組むにはどうすれば良いか? また、具体的に何を取り組めば良いか? 企業の環境への取り組み方に頭を抱える経営者は少なくありません。

そこで今回のコラムでは、企業がまず取り組むべき環境マネジメントについて「ISO14001」を紹介していきます。

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ISO14000シリーズとは

ISO14000シリーズとは、国際標準化機構(ISO)が発行した「環境マネジメントシステム」に関する国際規格群の総称です。

「環境マネジメント」発端の背景には、1992年に開催された環境と開発に関する国際会議「地球サミット」があります。この頃から、国際商工会議所やEU連合などの国際組織のなかで持続可能な開発の実現のための具体的策の1つとして、事業者と環境マネジメントの重要性が注目されていました。

この流れを受けて、1993年からISO(国際標準化機構)によって環境マネジメントに関わる様々な規格(ISO14000シリーズ)の検討が始まりました。

この検討の結果、生まれたISO14000シリーズは、企業の環境マネジメントを中心に、環境監査、環境パフォーマンス評価、環境ラベル、製品やサービスに対する、環境影響評価など、環境マネジメントを支援する様々な手法に関する規格から構成されています。

ISO14001とは

ISO14001は、企業が構築する環境マネジメントシステムが「満たすべき必須事項」をまとめた国際規格です。1996年に発行されました。

ISO14001の方針や策定にあたっては、企業の最高責任層の関与が求められており、トップダウン型の管理を想定している規格となっています。

そのため、現場の社員だけで策定するのではなく、経営層が本腰を入れて取り組む必要があります。

また、ISO14001の基本構造として、PDCAサイクルを行うことが盛り込まれています。つまり、企業の環境マネジメントを継続的に改善しながら、効果的な仕組み作りが出来る仕様になっています。

画像引用元:セキュリティ本舗|ISO14001とは

ISO14001による環境マネジメントシステムを構築した場合、自己宣言か、第三者機関から証明してもらうことができます。日本では、財団法人日本適合性認定協会(JAB)が中心となっている審査登録制度が存在します。

財団法人日本適合性認定協会の調査によるISO14001審査登録状況に関しては、JABホームページにて掲載されています。

認定を取得すれば、社会経済で求められるニーズと調和した環境保護、及び変化する環境状況に対応するための組織の枠組みとして認められ、企業にとって様々なメリットをもたらします。

環境マネジメントシステムとISO14001の関係性

ISO14001の関連用語として、環境マネジメントシステム(EMS)があります。 環境マネジメント(環境管理)は、事業者が経営の中で環境保全への取り組みに対して、目標設定を行い手段の策定・改善していく仕組みを意味します。

環境マネジメントを工場・事業所内で、遂行するための体制や手続きなどの「仕組み」を環境マネジメントシステム(EMS)と呼びます。

ISO14001は、前述したように、企業が構築する環境マネジメントシステムが「満たすべき必須事項」をまとめた国際規格です。つまり環境マネジメントシステムを評価する規格の1つがISO14001なのです。

ISO14001以外にも、環境省が策定したエコアクション21や、NPOや中間法人等が提供する環境マネジメントシステムなど、環境マネジメントの規格が存在します。導入する環境マネジメントシステムによってそれぞれ取得難易度や、影響範囲が異なります。

環境マネジメントシステムとISO14001の関係性を理解できた上で、次に必要性についても整理してみましょう。

企業がISO14001を取得する必要性について

そもそも会社存続にとって重要なのは「売上」つまり利益を上げることにあります。そのため、環境保全が経営にとって本当に役に立つのか?

その答えは、イエスです。

企業にとって環境マネジメントによる環境保全への取り組みが必要な理由は、主に以下の3点です。

消費者の環境意識が高まっている
消費者の環境意識の急速な高まりから、企業間の取引においてもグリーン購入の動きが活発化しています。
地球環境に配慮した商品製造・サービス提供によって環境に良い企業が、企業の取引先としても、また消費者ニーズとしても今後ますます求められてきます。
そのため、企業にとって積極的な環境マネジメントへの取り組みは事業拡大のビジネスチャンスでもあります。
環境問題が事業の継続リスクに悪影響を与えている
地球温暖化に起因する自然災害や食糧危機のリスクが顕在化してきており、地球保全に関する規制や法律は、今後さらに影響範囲が拡大、罰則強化等の対応が予測されています。
このようなリスクを回避するには、環境マネジメントによる取り組みが必要になります。
環境マネジメントがコスト削減につながる
環境マネジメントに取り組むことは、資源削減や経費削減に繋がります。
企業体質の改善にも繋がる効果もあるためと企業価値の向上以外にも、環境マネジメントをうまく取り入れることで、経営にとって直接的なメリットも享受できます。

ISOは国際的な規格

ISO(国際標準機関)は、163ヵ国が加入しており国際間取引をスムーズにするために企業や組織が提供する製品・サービス・活動に対して、一定の国際標準規格を制定する団体です。

ISOが定める国際標準規格は身近なところでも存在しています。

たとえば、マンションや公共施設にある非常口案内の「緑のマーク」を思い出してください。ほとんどの国でデザインや色に違いがありません。

他にも、クレジットカード等のカードサイズなどもISOが定める規格に沿われて製造されています。

国内外でカードサイズが統一されているので、決済処理を行う端末機のカードの読み取り口の使用を国や地域によって作り分ける必要性がなくなります。

これが国際規格です。ISOはいわば「世界標準のモノサシ」の的な存在です。

ISOにはこのように「モノ」に関する国際規格もありますが、実はISO14001など様々なマネジメントシステムの規格も策定しています。

ISO14001の認定を企業が取得するということは、環境マネジメントシステムによる環境保全において国際規格を満たしているという証明になり、国内外問わず評価を得られます。

企業のISO14001運用状況

2019年に行われた環境省の環境にやさしい企業行動調査をみてみましょう。

ISO14001、エコアクション21等、第三者認定による環境マネジメントシステムの構築・運用率は、上場企業全体で68.8%、非上場企業全体で42.8%、上場企業と非上場企業を合わせた全体では49.8%でした。また、環境マネジメントシステムを導入している企業の92.1%が「ISO14001」を採用しています。

画像参照元:環境省|令和元年度 環境にやさしい企業行動調査 調査結果P8

また、同調査では、環境マネジメントシステムの構築・運用した企業が、実際にどのような効果を実感しているのかについても、報告されています。

環境マネジメントシステムを構築・運用した企業が実感した効果は、「社内の環境への意識向上」「環境負荷低減」「管理能力向上」や、取引先や顧客などの対外的な評価の向上などが多数を占める結果でした。

また過半数の企業では、コスト改善という直接的なメリットや行政機関や金融機関からの評価の向上の実感があったという結果が出ています。

逆に「効果がなかった」と答えたのは、全体のわずは1.2%という結果が出ています。そのため、この調査結果から、環境マネジメントシステムを構築・運用すれば高い確率で効果を実感できることが予想されます。

画像参照元:環境省|令和元年度 環境にやさしい企業行動調査 調査結果P9

次に、取引先企業の選定にどのように環境マネジメントを考慮しているかについても以下の調査結果が出ています。

取引先(請負業者、納入業者等)の選定に当たり、取引先で考慮している環境マネジメントに関しては、「ISO14001」が29.4%、「エコアクション21」が13.5%でした。

反対に「考慮していない」は49.1%ではありますが、「今後考慮する予定」を含めれば過半数の企業が取引先の選定において環境マネジメントシステムの構築・運用を考慮すると回答しています。

画像参照元:環境省|令和元年度 環境にやさしい企業行動調査 調査結果P10

最後に、取引先に対してその次の取引先(2次納入先以降)を含むサプライチェーンに関わる取引先企業の選定において、環境マネジメントの構築・運用の要請状況についても以下の回答となりました。

「考慮する様に要請している」が7.3%、「要請まではしないが考慮している」が14.7% 全体の約20%企業が環境マネジメントの構築・運用を取引先(2次納入先以降)に要請・依頼している状況です。

画像参照元:環境省|令和元年度 環境にやさしい企業行動調査 調査結果P10

また、「要請及び依頼していない」に関しては平成28年度から30年度にかけて49.5%から69.8%と増加しています。これは、ISO14001を含む環境マネジメントシステムには業種によっての相性の差があるという点が1つの要因として考えられます。

環境マネジメントシステムの主な目的は、温室効果ガスの削減に向けた省エネや省資源での経営を実現することです。そのため、メリットを感じやすい業種は、エネルギー消費量が多い温室効果ガスの排出にも影響を与えやすい、製造業です。

また省エネ家電のメーカーや省エネ住宅を提案する建築業も環境マネジメントシステムとの相性が良いといえます。しかし、業態にもよりますが、サービス業や事務業などは環境マネジメントシステムの導入メリットが感じられにくいため、導入が見送られていると考えられます。

ISO14001を取得する4つのメリット

では、ISO14001を取得することで企業によってどのようなメリットがあるのか、具体的に4つのメリットを解説します。

業務の標準化による環境リスクの低減

環境リスクとは、排出した対象(物質)の有害性の強さと排出量のかけ算で算出されます。ISO14001の規格に合わせて業務を標準化(環境負荷を抑制する)することで、標準化前と比べて事業活動を通して、環境へ悪影響を与える対象(CO2や汚染水など)の有害性の度合いや排出量を抑えられる可能性が高いです。

また、ISO14001の「実践及び運用」のフェーズでは、緊急事態への準備及び対応の項目が設けられています。この取り組みによって、自社工場での事故や自然災害などが原因によって発生しうる環境リスクへの対策も立てられます。その結果、自社が原因となる環境リスクを低減させられます。

業務改善により利益率アップとコスト削減

国際基準に沿うことで業務改善が見込めるため利益率の向上が期待できます。

たとえば、気づけていなかった過剰品質によるコスト増加、無駄になっていた工程の見直し、何度も説明しなければいけない社内コミュニケーションも、環境マネジメントシステムによって道筋とゴールが明確化することで、無駄になっていた時間やコストを省くことができます。設備の省エネ化や、太陽光発電など創エネ設備の導入によって電気料金を削減することも可能です。

企業の信頼やイメージアップ

環境マネジメントシステムの構築・運用によって、環境への取り組みをアピールすることで企業のイメージアップに繋がり取引先や顧客への信頼獲得が見込めます。これは企業にとって新たな市場価値を生むことに繋がります。

たとえば、信頼が高まり環境意識の高い大手企業との取引の機会を得やすくなることや、環境意識の高い消費者の購買意欲に繋がり、顧客・リピーター増加による売り上げも向上することが期待できるからです。

社内の環境問題に対する意識の向上

環境マネジメントシステムの構築・運用を導入することで、実際に社内で取り組みを通じて社員全体の環境問題に対する意識の向上に繋がります。経営層、社員を含め会社全体で共通の問題意識が生まれることによって「見えてこなかった課題」が明確化し、その解決に全体で取り組めば企業の成長に繋がりる新しい価値を創出することが期待できます。

ISO14001取得企業による環境マネジメントへの取り組み事例

最後に、ISO140001を取得した企業が環境マネジメントを行う実例を紹介します。

アスクル株式会社

東京都江東区に本社を置き、主にオフィス向け事務用品の通信販売を行う「アスクル株式会社」では、2004年3月にISO14001を取得しています。

アスクルでは、持続可能な社会の実現に向けて、事業基盤である物流プラットフォームを、顧客・社会・地球環境にとって最適かつローコストなエコプラットフォームへ進化させ事業拡大に取り組んでいます。

アスクルでは、エコプラットフォーム実現に向けて2030 年までに、子会社を含めたグループ全体での再生エネルギー利用率を 100%を目標としてRE100、EV100へ加盟しています。

長期目標達成のため、2016年5月期の目標では2020年度をターゲットとして環境中長期目標を策定しています。

目標達成に向けて、物流センターから顧客に配達するまでの配送に伴うCO2排出量削減などの事業の低炭素化や「資源消費」「グリーン購入」「環境に配慮した商品開発・調達」「お客様との環境コミュニケーション」の5つの環境課題を取り組むべき重点分野として継続的な改善活動を進めています。

富士通株式会社

国内のITサービス提供企業を代表する富士通株式会社では、2004年に全事業所でISO14001統合認証を取得しています。この取得は国内で最大規模でした。

富士通では、環境負荷低減を追求し、持続可能な社会の実現を目指すために「ICT技術を活用した独自の環境マネジメントツール」を積極的に活用しています。

世界中に点在する事業所の計画・実績・施策情報などを一元管理できる「環境経営統合データベース」コンプライアンスやリスク管理の状況を一元管理してEMSの運用を支える「環境ISO14001運用支援システム」を活用して各事業所、フロア、人員当たりの温室効果ガス排出量に至るまで、あらゆる指標をリアルタイムで「見える化」することによって改善を繰り返し、高度な環境経営を実現しています。

消費者の環境意識は、ひと昔前より高くなっています。

2016年に発表された国立環境研究所による「日本人の環境意識に関する世論調査結果について」の調査結果では、約79%が「パリ協定」に肯定的な意見結果が出てており、今後ますます企業への環境対策への取り組みが問われてくる時代になるでしょう。

また、ESG投資(社会的責任投資)など投資家の中でも、環境対策を含めた社会的責任を果たす企業を評価する投資戦略が増加しています。各企業は、ISO14001認定を始めとした環境対策に通じる新しい経営戦略を構築して事業拡大させるチャンスは広がっています。

太陽光設置お任せ隊(運営:株式会社ハウスプロデュース)では、企業の環境対策および経営基盤強化を目的とした「自家消費太陽光発電設備(再生可能エネルギー設備)」の導入サポートを行っております。 自家消費太陽光発電には、電気料金の削減、CO2削減など多数メリットがあり社内の環境マネジメントシステムと非常に相性が良いです。

【実例付き】自家消費型太陽光発電とは?仕組み・メリット・デメリットを分り易く解説

ISO14001認定を取得する予定のある経営者様、既に環境マネジメントシステムを運用している企業様に自家消費型太陽光発電を活用した効果的な環境経営の実現をサポートしておりますので、お気軽にハウスプロデュースまでお問い合わせください。

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執筆者:株式会社ハウスプロデュース広報部

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当社は、産業用太陽光発電システムのEPC工事を専門に手がけています。経験豊富な電気工事士やエネルギーマネジメントアドバイザーなどの有資格者が在籍。一次情報や専門家からの取材を基に、EPC事業者としての「現場から得たノウハウ」を活かしたコンテンツ作りに取り組んでいます。

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