【SDGs|環境経営】中小企業が脱炭素化に取り組むメリット|国内の事例や補助金も紹介

「脱炭素」や「SDGs」といった言葉が注目されるようになり、環境問題への取り組みは企業にとっての重要な経営課題のひとつになっています。
持続的な社会を実現するために、大企業はもちろん中小企業においても省エネやCO2削減といった取り組みが求められていますが、企業にとってどのようなメリットがあるのか疑問に感じている方も多いことでしょう。
そこで今回の記事では、中小企業が脱炭素化に取り組む意義やメリットを紹介するとともに、どのような取り組み事例があるのかについても詳しく解説します。
目次
大企業はもちろん、中小企業においても重要な脱炭素やSDGsへの取り組み

CO2削減をはじめとした環境問題への取り組みは、「脱炭素(カーボンニュートラル)」や「SDGs」の一環として取り上げられることも多いです。
そもそも脱炭素とは、CO2をはじめとした温室効果ガスを削減し地球温暖化を防止するための取り組みです。日本においては「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことを目標に掲げており、エネルギー政策の大幅な転換などが検討されています。
また、「SDGs」とは持続可能な開発目標として掲げられている17の項目から成るものです。この中には、「気候変動に具体的な対策を」や「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」といった、環境問題に関連性の高い内容も含まれています。
社会が抱える大きな課題への解決に取り組むのは大企業が中心であると考えられがちですが、環境問題は企業や個人を問わず社会全体で取り組んでいかなければ効果が見込めません。
そのため、大企業だけでなく中小企業においても、脱炭素やSDGsといった問題に対しては共通で取り組んでいく必要があります。
脱炭素やSDGsに企業が取り組むことのメリット

「脱炭素やSDGsが大きな社会課題であることはわかるものの、自社にとって経営上のメリットはないのでは?」と考える経営者の方も少なくありません。しかし、じつは企業にとってもさまざまなメリットがあります。
コストが削減され利益率が向上する
脱炭素やSDGsへの取り組みには多額のコストがかかるイメージがあり、中小企業にとっては現実的ではないと考える経営者も多いでしょう。しかし、長期的には経済面でもメリットがあります。
たとえば、近年多くの企業で導入が進められている自家消費型太陽光発電システムでは、月々の電気代が大幅に削減され、ランニングコストの節約に繋がります。
短期的に見れば導入コストは増大しますが、長期的に考えるとトータルでのコストが削減され、利益率の向上が期待できるでしょう。
企業のイメージアップに繋がる
脱炭素やSDGsへの取り組みを対外的に発信することによって、顧客や取引先に対してポジティブな印象を与えることができます。
自社の利益だけでなく、環境問題をはじめとしたさまざまな社会課題に積極的に取り組んでいる企業は、社会的な信用を得やすいものです。その結果、自社の製品やサービスを選ぶユーザーが増え、売り上げや収益の増加も期待できるでしょう。
また、求職者のなかには、就職先企業を選ぶ際のポイントとしてSDGsへの取り組み状況を重視しているケースも少なくありません。人手不足が深刻化するなか、中小企業だからこそSDGsに取り組むことによって、他社との差別化に繋がり、採用活動を有利に進められるメリットもあるでしょう。
大手企業との取引がしやすくなりビジネスチャンスに繋がる
製品を開発・製造し、顧客の手元までに届けるためには、製造を手掛けたメーカーだけで完結できるものではありません。たとえば、製品を組み立てる際にはさまざまなパーツを下請業者などに発注しなければならないほか、モノを輸送するためには物流業者との連携も不可欠です。
そして、このようなサプライチェーンを構築する企業のなかでも、SDGsに取り組むような大手企業には、「RE100」に加入している企業も存在します。RE100とは、事業で使用するエネルギーをすべて再生可能エネルギーでまかなうことを目指す国際的な取り組みです。
RE100に加入するような企業には、取引先にも脱炭素を意識した経営を求める動きがあります。そのため、サプライチェーンを構築するにあたって、大手メーカーがSDGsや脱炭素を謳っているにもかかわらず、取引先の業者が環境に良くない行動をとっていた場合、サプライチェーン全体がネガティブな目で見られてしまいます。
逆にいえば、脱炭素経営を意識した中小企業は、大手企業との取引チャンスを掴みやすい状況にあるということになります。
RE100とは?加盟する企業のメリット
金融機関からの融資の優遇がある
SDGsに積極的に取り組んでいる企業に対し、金利を優遇する「ESG金融」が徐々に拡大しています。
ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3つを指します。ESG金融では、SDGsに対する企業の取り組み内容を金融機関が審査し、通常よりも一定利率の金利を引き下げて提供されます。
脱炭素やSDGsに取り組む際に使える補助金

中小企業におけるSDGsへの取り組みにでは、コスト負担が大きな課題となります。そこで、有効に活用したいのが、国や自治体などが運用している補助金や助成金の制度です。
今回は、SDGsのなかでも脱炭素や環境問題に対応した補助金・助成金制度を3つ紹介します。
1.工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業
環境省が主導する補助金事業で、工場や事業場の脱炭素化に向けた計画策定、および設備更新、CO2排出量の管理などに対する取り組みを支援するものです。
【実施期間】
2021年度から2025年度
【補助金額】
1.脱炭素化促進計画の策定支援(補助率:1/2、補助上限:100万円)
2.設備更新に対する補助(補助率:1/3、補助上限:1億円または5億円)
参考:工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業|環境省
2.革新的な省CO2実現のための部材や素材の社会実装・普及展開加速化事業
こちらも環境省が主導する補助金事業であり、製造過程においてCO2排出量を削減できる製品の導入を行う企業を支援し、CO2排出削減と経済効果を創出することを目的としています。
【実施期間】
2020年度から2024年度
【補助金額】
補助率:1/2
参考:革新的な省CO2実現のための部材や素材の社会実装・普及展開加速化事業|環境省
3.環境配慮型先進トラック・バス導入加速事業
環境省および国土交通省、経済産業省が連携して進めている補助金事業です。EV(電気自動車)やハイブリッドのトラック・バスの導入、および急速充電設備といった必要なインフラ構築を支援し、交通機関や物流におけるCO2排出量の低減を目的としています。
【実施期間】
2019年度から2023年度
【補助金額】
補助率:1/2または2/3
参考:環境配慮型先進トラック・バス導入加速事業(国土交通省・経済産業省連携事業)|環境省
そのほかにも、脱炭素への取り組みに適用できる補助金が設けられています。詳しくは以下の記事からご覧ください。
国内外における脱炭素やSDGsへの取り組み事例
脱炭素やSDGsへの取り組みは企業によってもさまざまで、それぞれの事業戦略にも直結しているものが少なくありません。そこで、ここからは、海外企業における脱炭素やSDGsへの取り組みと、国内企業における取り組みの事例をいくつか紹介します。
特に国内企業の事例については、中小企業でも参考にできる事例をピックアップしているため、自社の取り組みにおけるヒントがないか照らし合わせてみましょう。
関連記事:企業のCO2削減に向けた取り組みの具体例|再エネの活用方法も紹介
海外事例1. EV(電気自動車)戦略への転換

画像引用:The EQC|メルセデス・ベンツ
ドイツの自動車メーカーであるメルセデス・ベンツは、2030年までにガソリンエンジン車のラインアップを刷新し、すべての新車販売についてEV(電気自動車)への転換を検討していると発表しました。
EV普及のカギを握る急速充電設備は、現在のガソリンスタンドのようなものです。そこでメルセデス・ベンツは、石油大手メーカーと協業し、ヨーロッパを含めた世界3万カ所以上に充電設備を整備する予定です。
参考:メルセデス・ベンツ、EV時代に向けた新計画を発表|JETRO
海外事例2. Apple

画像引用:Apple、2030年までにサプライチェーンの100% カーボンニュートラル達成を約束|Apple
スマートフォンやタブレット端末、PCをはじめとしたデバイスの世界的メーカーであるAppleは、製品の製造過程で生じる温室効果ガスの排出量と吸収量の差分がゼロである「カーボンニュートラル」を達成しています。今後は、2030年までにサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを達成する方針を示しています。
太陽光や風力といった再生可能エネルギーを活用しエネルギー消費量を削減したほか、製品に使用する素材の徹底した研究により、低炭素の素材開発にも成功。製品のデザイン性や性能を損なうことなく、リサイクル効率の向上にも貢献しています。
参考:Apple、2030年までにサプライチェーンの100% カーボンニュートラル達成を約束|Apple
国内事例1. 宮城衛生環境公社
一般廃棄物および産業廃棄物の収集などを手掛けている宮城衛生環境公社では、新社屋の建設にあたって自家消費型太陽光発電設備の導入を並行して進めました。
廃棄物収集に使用する車両については、中長期的にハイブリッドやEV化を検討しており、今後自社における電力需要は増加すると見込まれます。
本格的なEV化が完了するまでには時間を要するため、まずは新社屋建設のタイミングでは社屋内の電力量を賄うことを優先しました。今後、中長期的にEV向けの再生可能エネルギーについては調達手段を検討していくとしています。
参考:中小規模事業者のための 脱炭素経営ハンドブック モデル事例⑤ 宮城衛生環境公社|環境省
国内事例2. マックエンジニアリング株式会社

画像引用:主要設備|マックエンジニアリング株式会社
工作機械を用いた部材の精密加工を手掛けるマックエンジニアリングは、最先端の環境経営を経営目標として掲げている企業です。事業における経費の多くを占める電気代を削減することが大きな課題となっていたこともあり、脱炭素への取り組みを開始。
工場内での空調効率を改善するため、屋根に遮熱塗料を塗布したほか、照明設備をLED化。加えて、工場の屋根上へ自家消費型太陽光発電設備も導入し、CO2排出量の削減とランニングコストの削減を実現しています。
参考:中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック モデル事例④ マックエンジニアリング|環境省
自家消費型太陽光発電は低リスクで経費削減と脱炭素/SDGsを両立できる
上記で紹介した国内事例を見てもわかるとおり、中小企業においては自家消費型太陽光発電を導入するケースが少なくありません。
大企業が取り組んでいる事例のように大規模なコストのかかる研究や開発は、社会に与えるインパクトが大きい反面、確実に成功し成果が出るとも限らず、リスクのある選択といえるでしょう。
しかし、自家消費型太陽光発電は、自社で消費する電力を自前で調達することを目的としているため、比較的低リスクで経費削減とCO2削減が見込める方法といえます。
なお、自家消費型太陽光発電の導入は、国や自治体が実施している補助金や助成金制度の対象にも含まれます。そのため、これらをうまく活用することで、導入コストの負担割合を低減できるはずです。
まとめ
大企業のみならず、中小企業においても脱炭素やSDGsへ取り組む企業が増えています。しかし、その一方で、コストの増大や人手不足といったさまざまな問題があり、なかなか最初の一歩が踏み出せない企業が多いことも事実です。
脱炭素とSDGsは一見大きな課題に見えますが、まずは自社でできることから着実に始めていくことが重要です。そのための具体例として、今回紹介した自家消費型太陽光発電の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
カテゴリー
- 太陽光設置お任せ隊TOP
- CO2削減・脱炭素
- 【法人向け】自家消費型太陽光発電コラム一覧
- 【SDGs|環境経営】中小企業が脱炭素化に取り組むメリット|国内の事例や補助金も紹介