ソーラーシェアリングとは?|メリット・作物の影響・補助金を解説

農地をお持ちの方の中には、農業運営についてお悩みの方がいらっしゃると思います。

そんな中、地目は農地のままで太陽光発電事業を行う「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」という仕組みが普及しています。

この記事では、農業と太陽光発電の二つの事業から収入を得る事が可能な「ソーラーシェアリング」について解説します。

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ソーラーシェアリングとは

ソーラーシェアリングのイメージ

ソーラーシェアリングとは、農地で作物を育てながらその上部3メートルほどの位置に架台を設置して太陽光パネルを並べ、太陽光発電事業を行う事で、営農型太陽光発電と呼ぶこともあります。

ソーラーシェアリングは、太陽光発電の新しい仕組みと言われています。

というのも、以前までは地目が「農地」である土地に太陽光発電システムを設置する事が出来なかったのです。
農林水産省は、農地への太陽光発電設備等の設置は支柱の部分が「農地転用」にあたるとして認めてきませんでした。

農地の一時転用について

2013年3月より、農業の適切な運営を前提に、太陽光発電設備の設置を「農地の一時転用」として認めることを公表しました。
この決定により、地目が農地のままで、農業を継続しながら太陽光発電事業を行う事が可能になりました。

一時転用という扱いになるので、農業以外の用途で使用できない「第一種農地」「甲種農地」「農用地区域内農地」でも特別にソーラーシェアリングが出来る可能性があります。

注意点は、農地の一時転用の期間は3年であることです。
太陽光発電では、FIT(固定価格買取制度)の売電期間が20年続くため、ソーラーシェアリングは3年ごとに一時転用の再許可を得る必要があります。

また、2018年より、下記の条件を満たすと農地の一時転用が10年になりました。

  • 所有者が農業を行う
  • 荒廃した農地の活用
  • 第2種・第3種農地の活用

所有している農地がこの条件に当てはまるかどうかは、事前に問い合わせておく事をお勧めします。

ソーラーシェアリングのメリット

ソーラーシェアリングのメリット

農業+売電のダブル収入

ソーラーシェアリングでは、今まで通り農業の収入を確保しながら、太陽光パネルで発電した電力を売る事による「売電収入」を得る事ができます。

収入源が二つになる事は、やはり魅力と言えます。

例えば、1反(10a)の広さに49.5kWの太陽光発電設備を設置し、年間発電量が55,000kWhであった場合、2020年(令和2年)度の売電価格12円/kWhであれば、年間約66万円の売電収入に繋がります。

また、「農地」は「雑種地」や「宅地」よりも固定資産税が大幅に安くなります。
ソーラーシェアリングは、地目が「農地」のまま太陽光発電事業を行えますので、税金の節約という側面もあります。

電気代を削減できる

ソーラーシェアリングは、農業における電気代の削減にも期待できます。発電した電気は、売るだけでなく自ら使用することが可能だからです。

たとえば、揚水ポンプを使用するような農業形態では、電力を多く使用します。農地で発電した電気を売らずに自らの農業に利用することで、電気代の削減が見込めます。

事例として、広島県でネギの水耕栽培を行う「トペコおばら」では、電気を一切売らない「完全自家消費型」のソーラーシェアリングで、電力購入量を25%削減しています。

FIT(固定価格買取制度)を使用せず、「完全自家消費型」を選ぶ場合、補助金が受けられる可能性があります。そのため、FITを利用して売電するか、完全自家消費型にするかよく考えて選びましょう。

参照元:環境ビジネスオンライン|フィット、「完全自家消費型」のソーラーシェアリング設備を受注

休耕地を活用できる

耕作放棄地(休耕地)とは、「以前は作物を作っていたが、過去1年以上耕作をせず、数年先までに再開予定が無い土地」の事をいいます。

ソーラーシェアリングでは、どう扱うか悩んでいる耕作放棄地を収益性のある土地に変えられる可能性があります。日本の国土には耕作放棄地が約40万haあると言われています。こういった土地が収入源として有効活用されていけば、少しずつ耕作放棄地の解消に貢献していく事が可能になります。

跡継ぎ問題

ソーラーシェアリングは、継続的な農家の運営にも繋がるかもしれません。

現在、農業で得られる収入は、一部農家を除き低い水準にとどまっているのが事実です。兼業農家や高齢の方が中心になっており、新しく農業を始めようと考える若い担い手も多くありません。
ソーラーシェアリングは、収入面の安定性向上から、こういった状況を変えていく一手になるかもしれません。

農家の収入が増加する事で、後継者不足や、食料自給率の低下を止める可能性があります。ソーラーシェアリングが長期的に目指す一番の目標だと言えるでしょう。

影による作物への影響は?

ソーラーシェアリングでは、作物の上部に太陽光パネルを設置する為、陰による作物への影響が気になります。
しかし、光をたくさん当てれば当てるほど成長するという農作物の種類は、あまり多くありません。

植物や作物には、「光飽和点」といって、「光合成するために必要な光の量の上限」があります。人が無限に食べ続けることは出来ない様に、農作物も一定の光以上は成長に必要ないのです。

トウモロコシなど光飽和点が無い農作物もありますが、ほとんどは光飽和点がありますので、太陽光パネルによってある程度の影が差しても成長には問題ありません。
光飽和点が低い農作物であれば、むしろ影によって快適な観光を作り出せる可能性もあります。

(パネルの設置状況によって影の差し方が変わる為、作物との相性を考えた設計を事前に相談しましょう)

営農型太陽光発電で収穫実績のある作物の例

  • 大豆
  • 大麦
  • 蕎麦
  • 落花生
  • 大根
  • カブ
  • 小松菜
  • キャベツ
  • ほうれん草
  • 長ネギ
  • チンゲン菜
  • ブロッコリー
  • キュウリ
  • かぼちゃ
  • なすび
  • トマト
  • トウモロコシ
  • スイカ
  • ブルーベリー
  • ぶどう
  • いちじく
  • ゆず
  • レモン
  • デコポン
  • サツマイモ
  • ジャガイモ
  • 里芋
  • 生姜
  • ミョウガ
  • 椎茸
  • 榊(さかき)
  • 2020年度のFIT見直し後も全量売電が可能

    ソーラーシェアリングは、新しいFITでも「全量売電」ができる唯一の方法となりました。

    FIT(固定価格買取制度)とは、「太陽光を含む再生可能エネルギーで発電した電力を、10年または20年の間、電力会社が同じ価格で買い取る」という制度です。

    2020年度のFITでは、10kW以上50kW未満の太陽光発電所は、発電した電力を自分で使用して余った電力を売る「余剰売電」であることが条件に追加されました。

    しかし、ソーラーシェアリングにおいては「災害時に活用すること」を条件に、発電した電力を全て売る「全量売電」が可能です。
    「災害時に活用」するためには、パワーコンディショナに自立運転機能が付いている事が必要です。自立機能付きのパワーコンディショナは多種類ありますので、その中から選びましょう。

    FITの売電単価が低下し余剰売電の条件も付いたため、今まで普及してきた屋根や野立ての太陽光設備が収束していくのではないかという見立てもあります。

    そんな中、特例で全量売電が認められ、広い農地を活用できるソーラーシェアリングの開発が進んでいく可能性は大いにあります。

    自家消費型の地域活用要件とは|営農型太陽光発電・ソーラーシェアリングとの関係

    ソーラーシェアリングの問題点

    初期コストが大きくなる

    ソーラーシェアリングは、作物の上部に設置する都合上、架台を高くしたり、パネルの間隔を広くしたりといった設計が必要になります。そのため、一般的な太陽光発電に比べて架台の費用が高くなりますし、メンテナンスを行う場合のコストも割高になります。

    ただ、固定資産税の節税や、売電収入のメリットの方が上回る可能性の方が高いので、大きな問題点にはならないと思われます。

    一時転用の再申請の手間がある

    農地の一時転用許可の条件として、市町村の農業委員会に「ソーラーシェアリングをしている農地で生産した作物の状況報告」を毎年行う必要があります。

    また、ほとんどの地域では、農地の一時転用の期間は3年間であり、3年ごとに改めて申請が必要です。その際に、次のような状況に当てはまると、適切な農業の運営が出来ていないと判断されます。

    • 農業を行っていない
    • 作物の単収(面積あたりの収穫量)が、同じ地域の平均単収に比べて2割以上減少している
    • 作物の品質が劣っている

    適切な農業の運営が出来ていないという判断が下されれば、まずは状況の改善を要求されますが、改善がみられない場合一時転用の再許可がされず、最悪の場合、太陽光発電設備を撤去しなければなりません。
    ソーラーシェアリングは、あくまで農業が主軸ですので、作物の成長に差し支えないように設計してもらう事が大切です。

    災害のリスク

    2019年の台風15号では、南関東を激しい風が襲い、ソーラーシェアリングの発電所でも架台や太陽光パネルの破損といった被害が発生しました。今後、気候の変化による災害の発生が起こらないとは限りません。

    例えば、大きな台風が来た時の為に補強対策の相談をした時など、適切な対応をしてくれる業者やメーカーであるか判断する事も大事になってきます。

    ソーラーシェアリングの補助金・支援事業

    ソーラーシェアリングの補助金・支援事業

    2021年に利用可能なソーラーシェアリング関連の補助金・支援事業をご紹介します。FIT(固定価格買取制度)を利用する場合、補助金・支援が受けられないことがありますので、余った電気を売るのか、完全に自家消費しつつ補助を受けるのかをよく考慮しましょう。

    農林水産省:持続可能な循環資源活用総合対策事業のうち、営農型太陽光発電システムフル活用事業

    • 対象事業
      (ソーラーシェアリングの電気を活用したうえで)電動農業機械を導入する場合・施設栽培において環境制御装置を導入する場合
    • 対象設備
      (ソフト)人件費や旅費等、(ハード)農業機械や、電気の自家利用のための設備等の経費【発電そのものの経費(例:太陽光パネル、架台設備)は対象になりません】
    • 補助額
      定額
    • 補助限度額
      補助対象額の2分の1
    • 期間
      令和5年度まで(継続のため予算を600憶に拡大)
    • URL

    環境省:廃熱・未利用熱・営農地等の効率的活用による脱炭素化推進事業(一部農林水産省連携事業)

    • 対象事業
      営農型等再生可能エネルギー発電自家利用モデル構築事業
    • 対象設備
      農地等周辺に存在する農林漁業関連施設・地方公共団体の設備(動力設備、冷蔵冷凍設備)等
    • 補助額
      補助対象額の2分の1
    • 補助限度額
    • 期間
      ~令和3年度
    • URL
      https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/attach/pdf/yosan-57.pdf

    ※2021年2月時点の内容であり、各省庁の方針により変更される可能性があります
    ※こちらでご紹介する内容は、支援制度が受けられることを保証するものではございません

    自治体のソーラーシェアリング支援事業

    自治体名 支援メニュー
    宮城県 再生可能エネルギー等設備導入支援事業
    クリーンエネルギーみやぎ創造チャレンジ事業
    神奈川県 かながわソーラーシェアリングバンク
    新潟県 ・農林水産業総合振興事業(再生可能エネルギー利活用促進)
    フロンティア企業支援資金(グリーンニューディール枠)
    兵庫県 地域創生!再エネ発掘プロジェクト

    ご紹介した自治体以外にも、ソーラーシェアリングの支援事業を開始する自治体が出てくる可能性がありますので、導入の際は該当する自治体に確認ととってみましょう。

    ※2021年2月時点の内容であり、各自治体の方針により変更される可能性があります
    ※こちらでご紹介する内容は、支援制度が受けられることを保証するものではございません

    金融機関のソーラーシェアリング支援事業

    期間名 支援メニュー
    北海道信用金庫 環境対策応援ローン
    東北銀行 とうぎんエコ・ローン
    営農型太陽光発電にかかる融資組成
    北都銀行 原木椎茸ほだ場でのソーラーシェアリング事業
    秋田信用金庫 ソーラーシェアリングローン「SORA」
    筑波銀行 あゆみ「ECOローン」
    房総信用組合 太陽光発電事業支援資金
    城南信用金庫 ソーラーシェアリング事業に必要な資金を支援します
    山梨県民信用組合 けんみん信組「アグリソーラーローン」
    玉島信用金庫 営農型太陽光発電支援資金
    書類作成サポート
    日本政策金融公庫又は沖縄振興開発金融公庫 環境・エネルギー対策資金
    農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)
    農林中央金庫 再生可能エネルギー発電設備の施工・販売会社4社との提携
    茨城県信用農業 協同組合連合会 農業経営拡大資金
    農林中央金庫 宇都宮支店 アグリパワー資金
    農林中央金庫 富山支店 アグリマイティ―資金(アグリパワー資金)
    福井県JAバンク 地域農業応援資金
    岐阜県信用農業 協同組合連合会 アグリサポート資金
    静岡県信用農業 協同組合連合会 JAアグリマイティ―資金
    愛知県信用農業 協同組合連合会 アグリマイティ―資金
    滋賀県信用農業 協同組合連合会 アグリマイティ―資金
    大阪府信用農業 協同組合連合会 農業振興資金
    JA農機ハウスローン
    JAバンク和歌山 農業振興資金(再生可能エネルギー対応資金)
    広島県信用農業 協同組合連合会 太陽光発電事業資金
    山口県 農業協同組合 再生可能エネルギー支援資金
    徳島県信用農業 協同組合連合会 アグリマイティ―資金
    佐賀県信用農業 協同組合連合会 アグリマイティ―資金(アグリパワー資金)
    JAバンク鹿児島 アグリメイク資金

    ご紹介した機関以外にも、ソーラーシェアリングの支援事業を開始する機関が出てくる可能性がありますので、導入の際は該当する機関に確認ととってみましょう。

    ※2021年2月時点の内容であり、各機関の方針により変更される可能性があります
    ※こちらでご紹介する内容は、支援制度が受けられることを保証するものではございません

    ソーラーシェアリングのサポートはお任せ隊へ

    太陽光設置お任せ隊(運営:株式会社ハウスプロデュース)は、ソーラーシェアリング初期から施工をしております。

    農地に強いスタッフが在籍しており、ノウハウが蓄積しているので、安心してお任せいただけます。

    また、一般的なソーラーシェアリングと違い、野立ての太陽光発電所に用いる”高品質パネル”を採用するなど、独自のソーラーシェアリング設備のご提案も行っております。

    多くの知識・経験がありますので、定期的に発生する手続きに関してもできる限りのサポートをさせていただきます。
    農地の活用についてお悩みの方、ソーラーシェアリングについて分からないことがある方は、ハウスプロデュースへお気軽にご相談ください。

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    執筆者:株式会社ハウスプロデュース広報部

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    当社は、産業用太陽光発電システムのEPC工事を専門に手がけています。経験豊富な電気工事士やエネルギーマネジメントアドバイザーなどの有資格者が在籍。一次情報や専門家からの取材を基に、EPC事業者としての「現場から得たノウハウ」を活かしたコンテンツ作りに取り組んでいます。

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