[法人向け]電力会社の選び方|電力自由化をきちんと理解して賢く選ぼう

電力自由化は、2016年に一般家庭向けに改正されてから、情報として取り上げられることが多くなりました。しかし、じつは法人向けの電力自由化は20年以上前にスタートしています。

法人の場合、新電力に切り替えることで大きなコストダウンが見込めますが、電気供給の安定性など懸念があるのも事実でしょう。法人向けの電力自由化についてきちんと理解いただけるように、新電力を賢く選ぶポイントをご説明します。

電力自由化の歴史

電力自由化の歴史

冒頭で述べたように法人向けの電力自由化はすでに20年以上の歴史があります。現行制度を理解するために、これまでの経緯や改正がなされた背景を把握しておきましょう。

1995年:電力卸売り自由化

発端は1990年代に始まった規制緩和で、その目的は日本の産業構造を見直し、競争原理を導入することにより、コストを抑えることでした。1993年に当時の総務庁によりエネルギー分野における規制緩和が提言され、1995年に31年ぶりの電気事業法改正が行われました。

この改正により地域電力会社は自社の発電所だけでなく、新たに参入が可能になった独立系発電事業者(IPS=Independent Power Producers)から電気を購入できるようになりました。つまり、電力の卸売りが自由化されたということです。

しかし、この時点では一般家庭はもちろん、法人への小売りも地域の電力会社が独占していました。

2000年:電力小売り自由化

1997年に「2001年までに国際的に遜色のないコスト水準を目指し、わが国の電気事業のあり方全般について見直しを行う」ことが「経済構造の変革と創造のための行動計画」に盛り込まれました。

その後、1999年に再び電気事業法が改正されました。それにより、自由化の範囲が小売りにまで拡大しています。

ただ、この時点で対象になったのは契約電力が2,000kW以上で、20,000V以上で受電する「特別高圧」と呼ばれる大規模工場やデパート・大学・高層オフィスビルなどでした。

この改正により電力小売り供給元として、地域電力会社に加えて、特定規模電気事業者(PPS=Power Producer and Supplier)の参入が認められるようになりました。

2003年:電力小売り自由化の範囲拡大

2003年の電気事業法改正により、2004年4月から電力小売り自由化の範囲が拡大し、契約電力が500kW以上の「高圧」と呼ばれる中小規模工場・オフィスビル・スーパーなども含まれるようになり、その後2005年4月からはすべての高圧契約(原則50kW以上)へと広まりました。これは日本国内の電力販売量の約6割が自由化されたことを意味しました。

2016年:電力小売り全面自由化

2011年の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけにして、電力供給体制が見直され、電力の小売り・発電の全面自由化が2013年4月に閣議決定されました。

その結果、2016年4月からは「低圧」と呼ばれる、契約電力50kW未満の商店・町工場・一般家庭も電力自由化の対象に含まれ、電力小売りが全面的に自由化されました。

同時に電力供給元として新電力の参入も相次ぎ、その割合も高まっています。特に高圧においてはその傾向は顕著で、2020年10月時点で高圧の契約口数のうち28.97%が新電力によって占められるまでになっています。

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法人が新電力に切り替えるメリット

法人が新電力に切り替えるメリット

段階的に進められてきた電力小売り範囲の拡大も2016年に全面自由化、現在は多くの新電力も参入し、法人の電力調達にはさまざまな選択肢があります。切り替えを検討している担当者の方も少なくないと思いますが、法人の新電力への切り替えにはどんなメリットがあるのでしょうか。

コストを削減できる

法人が新電力への切り替えを検討する最大要因はコスト削減でしょう。各社の価格競争が起こり電気料金が下がったことや、多様なプランの中から自社の業務形態に合うものを選択することなどで、コストの削減が見込めます。

しかし、新電力に切り替えさえすれば、確実にコスト削減が実現できるわけではありません。まずどのくらいのコスト削減が可能なのかをシミュレーションしてみると良いでしょう。

そのためにはまず、法人の中でも占める割合がもっとも高い高圧電力の電気料金の仕組みについて理解しておくことが大切です。

高圧電力の電気料金の仕組み

高圧電力の電気代の計算方法は以下のとおりです。

・高圧電力の電気代=基本料金+電力量料金+再エネ賦課金+燃料調整額

また、このうち基本料金は次のように計算されます。

・基本料金=基本料金単価×契約電力×力率割引

この項目の中で注意すべきなのが「契約電力」です。なぜなら、高圧電力の中にも契約電力が50kWから500kWの「高圧小口」と、契約電力が500kWから2,000kWの「高圧大口」があり、前者は実量制、後者は協議制を採用しているからです。

実量制では、直近12カ月の使用電力量のうちもっとも高い月の数値が契約電力として設定されます。

協議制は年に1回の電力会社との協議で契約電力が決まり、その範囲を越えて電力を使用した場合は違約金を支払うことになります。この違いを確認せずに新電力に切り替えると、かえって電気代が高くなる可能性があります。

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事務処理を簡素化できる

新電力の中には、乗り換えにより、支払いを一本化してくれる会社があります。それにより、各事業所・工場、店舗ごとの煩雑な支払いを簡素化することができます。結果的に企業全体でどのくらい電気代を支払っているのか、コストを把握しやすくなるでしょう。

電力を販売できる

自らも新電力として、自社で発電した電気や他社から購入した電気を販売することができます。小売電気事業に参入するには登録手続が必要ですが、法人の場合は資本金の最低額や法人形態の制限はありません。

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法人が新電力に切り替える際の懸念

工場や事業所にとって電力の安定的供給は生命線といえるほど重要です。確かにコスト削減は重要ですが、新電力への切り替えにより事業に支障が出れば、本末転倒です。多くの担当者が懸念する点をいくつか取り上げてみましょう。

電気供給の安定性

これまで契約してきた地域の電力会社から新電力に切り替えると、電力供給が不安定になるのでは、と不安に感じるかもしれませんが、その心配はいりません。

なぜなら、電力自由化でさまざまな供給元が参入しているとはいえ、どの会社も同じ送配電会社の電線を使うからです。

そのため、契約している新電力会社の倒産などによって電気を供給できなくなっても、新たな供給元と契約するまでは各地域の電力会社から供給される電気が使用できます。

新電力が倒産して供給が止まる可能性

契約中の新電力が倒産しても消費者保護のため、電力の供給が止まることはありません。仮に新電力が倒産したら、自動的に地域の電力会社に経過措置として契約が引き継がれることになります。

その際の電気代は新電力と比べると割高になりますが、別の新電力に乗り換えるまでの一時的なもので、事業や工場の操業がストップしてしまうことはありません。

また、2021年2月3日時点で新電力は702者ですが、事業廃止や解散したのはわずか30件(2020年12月時点)です。そのため、過度に心配する必要はないことがおわかりいただけると思います。

新電力を選ぶ際のポイント

新電力を選ぶ際のポイント

新電力への切り替えのメリット、懸念点を把握した上でどうしたら自社にあった新電力を選べるのでしょうか。3つのポイントをご紹介します。

料金プランが自社に合っているか

前述したように新電力はいまや702者あり、厳しい競争の中で各社がさまざまなプランを提供しています。自社の業務形態、業務規模、使用電力などに基づいて最適な料金プランを選択するには前もってシミュレーションをして、比較することが必要です。

違約金を確認

新電力の中には料金そのものは魅力的でも、一定期間契約を継続することが求められ、期間内に解約すると違約金が発生するものもあります。料金が安いことだけに目を奪われることなく、違約金の有無にも目を配りましょう。

電源構成

契約を考えている新電力がどのように発電しているのかにも注目しましょう。どの会社も環境への配慮はいまや投資を呼び込む上でも、企業価値の向上のためにも欠かせません。そのため、可能なら再生可能エネルギーを販売している新電力と契約するのがおすすめです。

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まとめ

電力の小売り自由化が始まって20年以上が経ちました。当初、コスト削減のために始まった電力自由化でしたが、いまやそれと同時に環境への配慮も必要になっています。

多くの新電力が存在し、選択肢は幅広いですが、多角的な視点から賢く選びたいものです。

太陽光設置お任せ隊(運営:株式会社ハウスプロデュース)では、新電力の切り替えと組み合わせることで電気代削減効果が見込める「自家消費型太陽光発電」をおすすめしております。自家消費型太陽光発電については、以下ページでも解説していますので、こちらもぜひご覧ください。

【徹底解説】自家消費型太陽光発電のメリット・デメリット・注意点・導入方法
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執筆者:株式会社ハウスプロデュース(広報部)
全国累計5,000件以上の産業用太陽光発電システムのEPC工事(提案・設計・施工管理・O&M)を手掛ける当社の広報チーム。現在、第一種電気工事士・一般耐震技術認定者・エネルギーマネジメントアドバイザーなど有資格者が在籍。一次情報や専門家からの取材で得た情報に基づき、EPC事業者として「現場から得たノウハウ」を反映させたコンテンツ作りに注力。
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