[法人向け]電力会社の選び方|電力自由化をきちんと理解して賢く選ぼう

2016年4月に行われた法改正により、さまざまな業種の企業が電力を販売できるようになりました。電気料金を安く抑えたい、少しでもお得に電気を使いたい方は、電力自由化によって何が変わるのか確認しておきましょう。

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電力自由化とは

これまで関西電力や中部電力、東京電力などの旧一般電気事業者が独占していた電気小売が、2016年4月の法改正で電力の販売が全面自由化され、さまざまな業種の企業が電力を販売できるようになりました。

これにより、消費者が電力会社を自由に選べるようになり、電力会社による地域の枠を超えた多彩なサービスの提供を行っています。このことを電力自由化と呼びます。

電力自由化によって、さまざまな業者が電気を販売できるようになっただけでなく、家庭や商店は自由に電力会社を選べるようになりました。競合他社との差別化を図るために、独自サービスの提供や料金の割引などの活発化が予想されます。

実際に、電気とガスを一緒に契約すると割引料金が適用されたり、ポイントを獲得できたりと、業者ごとにさまざまな工夫をしています。

電力自由化の歴史

電力自由化の歴史

冒頭で述べたように法人向けの電力自由化はすでに20年以上の歴史があります。現行制度を理解するために、これまでの経緯や改正がなされた背景を把握しておきましょう。

1995年:電力卸売り自由化

発端は1990年代に始まった規制緩和で、その目的は日本の産業構造を見直し、競争原理を導入することにより、コストを抑えることでした。1993年に当時の総務庁によりエネルギー分野における規制緩和が提言され、1995年に31年ぶりの電気事業法改正が行われました。

この改正により地域電力会社は自社の発電所だけでなく、新たに参入が可能になった独立系発電事業者(IPS=Independent Power Producers)から電気を購入できるようになりました。つまり、電力の卸売りが自由化されたということです。

しかし、この時点では一般家庭はもちろん、法人への小売りも地域の電力会社が独占していました。

2000年:電力小売り自由化

1997年に「2001年までに国際的に遜色のないコスト水準を目指し、わが国の電気事業のあり方全般について見直しを行う」ことが「経済構造の変革と創造のための行動計画」に盛り込まれました。

その後、1999年に再び電気事業法が改正されました。それにより、自由化の範囲が小売りにまで拡大しています。

ただ、この時点で対象になったのは契約電力が2,000kW以上で、20,000V以上で受電する「特別高圧」と呼ばれる大規模工場やデパート・大学・高層オフィスビルなどでした。

この改正により電力小売り供給元として、地域電力会社に加えて、特定規模電気事業者(PPS=Power Producer and Supplier)の参入が認められるようになりました。

2003年:電力小売り自由化の範囲拡大

2003年の電気事業法改正により、2004年4月から電力小売り自由化の範囲が拡大し、契約電力が500kW以上の「高圧」と呼ばれる中小規模工場・オフィスビル・スーパーなども含まれるようになり、その後2005年4月からはすべての高圧契約(原則50kW以上)へと広まりました。これは日本国内の電力販売量の約6割が自由化されたことを意味しました。

2016年:電力小売り全面自由化

2011年の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけにして、電力供給体制が見直され、電力の小売り・発電の全面自由化が2013年4月に閣議決定されました。

その結果、2016年4月からは「低圧」と呼ばれる、契約電力50kW未満の商店・町工場・一般家庭も電力自由化の対象に含まれ、電力小売りが全面的に自由化されました。

同時に電力供給元として新電力の参入も相次ぎ、その割合も高まっています。特に高圧においてはその傾向は顕著で、2020年10月時点で高圧の契約口数のうち28.97%が新電力によって占められるまでになっています。

[法人向け]電力会社の選び方|電力自由化をきちんと理解して賢く選ぼう

法人が新電力に切り替えるメリット

法人が新電力に切り替えるメリット

段階的に進められてきた電力小売り範囲の拡大も2016年に全面自由化、現在は多くの新電力も参入し、法人の電力調達にはさまざまな選択肢があります。切り替えを検討している担当者の方も少なくないと思いますが、法人の新電力への切り替えにはどんなメリットがあるのでしょうか。

ライフスタイルに合わせた料金メニューに変更できる

電力会社によっては、時間帯によって電気料金が異なるメニューを設けています。ライフスタイルに合った料金メニューに変更することで、電気料金を抑えられる可能性があります。

新サービスを利用できる

電気とガスのセット割引やポイントの付与、省エネ診断など、業者ごとにさまざまなサービスを提供しています。ご自身に合ったサービスを受けることで、さまざまなメリットを得られます。

再エネ発電中心のサービスも利用できるようなる

エコに関心がある場合、太陽光・水力・風力・地熱といった再生可能エネルギーを中心に発電する会社を選ぶことも可能です。企業のCSR(社会的責任)の一環として取り組むことで、世間からの信頼度が高まるでしょう。

コストを削減できる

法人が新電力への切り替えを検討する最大要因はコスト削減でしょう。各社の価格競争が起こり電気料金が下がったことや、多様なプランの中から自社の業務形態に合うものを選択することなどで、コストの削減が見込めます。

しかし、新電力に切り替えさえすれば、確実にコスト削減が実現できるわけではありません。まずどのくらいのコスト削減が可能なのかをシミュレーションしてみると良いでしょう。

そのためにはまず、法人の中でも占める割合がもっとも高い高圧電力の電気料金の仕組みについて理解しておくことが大切です。

事務処理を簡素化できる

新電力の中には、乗り換えにより、支払いを一本化してくれる会社があります。それにより、各事業所・工場、店舗ごとの煩雑な支払いを簡素化することができます。結果的に企業全体でどのくらい電気代を支払っているのか、コストを把握しやすくなるでしょう。

電力を販売できる

自らも新電力として、自社で発電した電気や他社から購入した電気を販売することができます。小売電気事業に参入するには登録手続が必要ですが、法人の場合は資本金の最低額や法人形態の制限はありません。

[法人向け]電力会社の選び方|電力自由化をきちんと理解して賢く選ぼう

法人が新電力に切り替える際の懸念

工場や事業所にとって電力の安定的供給は生命線といえるほど重要です。確かにコスト削減は重要ですが、新電力への切り替えにより事業に支障が出れば、本末転倒です。多くの担当者が懸念する点をいくつか取り上げてみましょう。

電気供給の安定性

これまで契約してきた地域の電力会社から新電力に切り替えると、電力供給が不安定になるのでは、と不安に感じるかもしれませんが、その心配はいりません。

なぜなら、電力自由化でさまざまな供給元が参入しているとはいえ、どの会社も同じ送配電会社の電線を使うからです。

そのため、契約している新電力会社の倒産などによって電気を供給できなくなっても、新たな供給元と契約するまでは各地域の電力会社から供給される電気が使用できます。

新電力が倒産して供給が止まる可能性

契約中の新電力が倒産しても消費者保護のため、電力の供給が止まることはありません。仮に新電力が倒産したら、自動的に地域の電力会社に経過措置として契約が引き継がれることになります。

その際の電気代は新電力と比べると割高になりますが、別の新電力に乗り換えるまでの一時的なもので、事業や工場の操業がストップしてしまうことはありません。

また、2021年2月3日時点で新電力は702者ですが、事業廃止や解散したのはわずか30件(2020年12月時点)です。そのため、過度に心配する必要はないことがおわかりいただけると思います。

新電力を選ぶ際のポイント

新電力を選ぶ際のポイント

新電力への切り替えのメリット、懸念点を把握した上でどうしたら自社にあった新電力を選べるのでしょうか。3つのポイントをご紹介します。

料金プランが自社に合っているか

前述したように新電力はいまや702者あり、厳しい競争の中で各社がさまざまなプランを提供しています。自社の業務形態、業務規模、使用電力などに基づいて最適な料金プランを選択するには前もってシミュレーションをして、比較することが必要です。

違約金を確認

新電力の中には料金そのものは魅力的でも、一定期間契約を継続することが求められ、期間内に解約すると違約金が発生するものもあります。料金が安いことだけに目を奪われることなく、違約金の有無にも目を配りましょう。

電源構成

契約を考えている新電力がどのように発電しているのかにも注目しましょう。どの会社も環境への配慮はいまや投資を呼び込む上でも、企業価値の向上のためにも欠かせません。そのため、可能なら再生可能エネルギーを販売している新電力と契約するのがおすすめです。

新電力への切り替えでトラブルを防ぐための注意点

契約内容をよく確認する

電力会社が勧誘するときは、プランの詳細や料金の算定方法などを消費者に説明する義務があります。事前に契約内容や料金の割引期間などを十分に確認して、メリットとデメリットを把握してから契約を検討しましょう。

また、どの電力会社と契約したのかわからなくなる事態を防ぐために、切り替え先の会社名と連絡先を確認しておくことが大切です。

個人情報の取扱いに注意する

検針票には、氏名や住所、顧客番号、供給地点特定番号などが記載されています。いずれも電力会社が契約するときに必要な情報のため、聞かれても安易に答えないでください。

また、電気の検針システムが変わったため、スマートメーターに交換するだけで「電気料金が安くなる」などと偽る業者もいます。あらゆる手段で個人情報を聞き出そうとするため、十分に注意しましょう。

誤って契約した場合はクーリング・オフ

誤って契約した場合は、すぐにクーリング・オフをしましょう。電話勧誘販売や訪問販売で電力会社の切り替えを承諾した場合、契約書面を受け取った日から8日以内であれば、無条件で解約できます。また、契約書面が交付されていない場合でも、クーリング・オフは行えます。

新電力へ切り替えるタイミングはいつが良い?

新電力へ切り替えるタイミング

省エネ法と合わせた経費削減を目指す

省エネ法によって、企業は省エネ化が求められています。新電力切り替えでスマートメーターに変更されるため、電力の「見える化」も可能。見える化によって、無駄な電力の削減を目指せます。

また、スマートメーターを設置することで、電力会社によってはwebや専用アプリ上で使用電力を確認できる場合もあります。使用量の多い時間帯や月日の把握などに役立ちます。

最大デマンド値で基本料金が変わる

電気の契約料金は、最大デマンド値で変わります。特別高圧・高圧(500kW以上)の場合、電力会社と協議で契約金額を決めますが、一般的に最大デマンド値をもとに協議します。

(※デマンド値とは、30分間の電力消費平均値を指す。1カ月間のデマンド値でもっとも高い値を「最大デマンド値」と呼ぶ。)

そのため最大デマンド値を抑えることで、省エネと経費削減を目指せます。 この最大デマンド値をコントロールするには、電力の“見える化”が必要です。スマートメーターのほかに、デマンド監視システムやEMS(エネルギー管理システム)など、企業の規模によって導入を検討しましょう。

環境や社会を視野に入れた経営戦略を実行する

環境や社会へ配慮した取り組みは、企業の価値を高めるのに大切な課題です。 CSR・ESG投資・RE100・SBTなど、環境や社会に対してさまざまな取り組みがありますが、経営内容に組み込むのは難しい企業も少なくありません。

しかし、先述のとおり電力会社の切り替えは初期投資が基本的に不要です。新電力に関する知識を学んだ上で、再生可能エネルギーやCO2排出量を抑えたエネルギーを利用している電力会社と契約すれば、環境や社会を視野に入れた経営戦略の一環としてアピールできます。

電力会社の切り替えでよくあるご質問

電力自由化でよくある質問

賃貸住宅でも電力会社を切り替えられる?

マンションやアパートなど賃貸住宅に住んでいても、電力会社を切り替えられます。ただし、マンションやアパート全体で同じ電力会社と契約している場合は、自由に切り替えられない可能性があります。トラブルを避けるためにも、事前に管理組合や大家などに確認しましょう。

電力会社が倒産すると電気が止まる?

電力会社が倒産しても、電気の供給が止まる心配はありません。自動で旧一般電気事業者に切り替わり、電気の供給を受けられます。旧一般電気事業者とは、東京電力や中部電力、関西電力など、電力自由化の前に電力小売を独占していた会社です。

電力会社の切り替えには電線を引く必要がある?

電力会社を切り替えるときに、電線を新たに引く必要はありません。これは、送電に使う電線が共通のためです。また、契約した電力会社が電気を供給できなくても、発電所で作られた電気を運ぶ「送配電網」を管理する会社が補給してくれるため、すぐに電気が止まる心配もありません。

電力会社を切り替える方法・流れ

電力会社を切り替える方法・流れ

2016年1月から電力会社の切り替え受付が始まりました。電力会社を切り替える方法と流れについて詳しくみていきましょう。

切り替え先の電力会社に申し込む

切り替え先の電力会社のサービス窓口やメール、電話などから申し込めます。現在、契約している電力会社への解約手続きは切り替え先の電力会社が行います。

切り替えの申し込み時には、電気料金や契約期間、契約解除などの説明を受けるとともに、契約書などの書類を受け取りましょう。

スマートメーターに交換する

スマートメーターは30分単位で電気の使用量を測定したり、遠隔で検針したりできる電気メーターです。現時点でスマートメーターを設置していない場合は、切り替え先の電力会社への申し込み後に、現在契約している電力会社からスマートメーターの設置作業の連絡が入ります。

スマートメーターの設置にかかる時間は約15分です。スマートメーターそのものは無料ですが、工事費がかかります。注意点として、設置の間は停電を伴う場合があるため、それを踏まえて工事の日時を検討しましょう。

切り替え先の電力会社との契約が開始する

切り替え先の電力会社との契約が開始します。電力会社への切り替え日は契約書で確認できます。

[法人向け]電力会社の選び方|電力自由化をきちんと理解して賢く選ぼう

まとめ

電力の小売り自由化が始まって20年以上が経ちました。当初、コスト削減のために始まった電力自由化でしたが、いまやそれと同時に環境への配慮も必要になっています。

多くの新電力が存在し、選択肢は幅広いですが、多角的な視点から賢く選びたいものです。

太陽光設置お任せ隊(運営:株式会社ハウスプロデュース)では、新電力の切り替えと組み合わせることで電気代削減効果が見込める「自家消費型太陽光発電」をおすすめしております。自家消費型太陽光発電については、以下ページでも解説していますので、こちらもぜひご覧ください。

【企業向け】自家消費型太陽光発電とは?仕組み・メリット・デメリット・注意点を解説
法人向け太陽光発電のことなら
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執筆者:株式会社ハウスプロデュース(広報部)
全国累計5,000件以上の産業用太陽光発電システムのEPC工事(提案・設計・施工管理・O&M)を手掛ける当社の広報チーム。現在、第一種電気工事士・一般耐震技術認定者・エネルギーマネジメントアドバイザーなど有資格者が在籍。一次情報や専門家からの取材で得た情報に基づき、EPC事業者として「現場から得たノウハウ」を反映させたコンテンツ作りに注力。
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